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風衝都市の暮らし  作者: りょうこ
6/6

ノカン篇1

「線形代数講座」が終わり。参加者が皆帰った後

パーラーに併設されたテラスの床をデッキブラシで拭く彼女はノカン。

その10代の身体の溌剌さはTシャツとハーフパンツの陰から

這い出るように顕現している。

デッキブラシを持ち帰る度に彼女の肩までかかる深茶色のおさげ髪は揺れて、

Tシャツの衿幅に印字されたロゴが顕になる。

そして、腰を屈める度にハーフパンツは穏やかに食い込む。


その様子をパーラーの座席越しにビト郎はまじまじと観察している。

アーモンド大学生物学部の2年生である彼は、彼女の顔について考える。

幼さと色香を併せ持つ目、ほんの微かな幼さを残す整った鼻、

色香のある小さなおとがい、横髪がかかりそうな耳介結節、発育の良い身体。


いつか彼女と2人でこのソファに座りたいという思いが、燻った灯に再び火を点けた。


床の清掃を終えた彼女は、デッキブラシを指定された場所に立てかけ

テラスに備え付けられた洗面台を使っていると、ガスの溜まりを感じた。

早くガス抜きをしたいという気持ちが焦りとなり、

普段より力を入れてダストボックスから袋を持ち上げて回収している時だった。


ブグゥ


大きな音と共に彼女の周囲に臭気が漂い始めた。

その音、臭いで彼女はたまらなく恥ずかしくなった。

あたりを見回して誰もいないことを確認しても、動揺は抑えられない。

袋を束ねると、20m程先にある集積所へ運び出した。


ブゥ ブスッ プッ……。


歩調に合わせてガスが幾度となく漏れ出る。


夕日に照らされた川面には音の消えた光景が映る。彼女は消え去りたい気持ちになった。


帰宅してからも、ノカンは自分がしてしまった放屁について考え込んでいた。

彼女は自分がガスを催しやすい体質であることについて既知だった。

それはこれまで幾度も犯してきた失敗から学ばされた。

しかし、これといった改善方法もないため、彼女を悩ませ続けている。


「みんなの前で出ちゃったらどうしよう……。」



地域内にある学生サークルが共催する「第17回自由研究会」が2日後開催される。

この行事では、身近なものを対象として観察や実験を行う。


彼女はその中で数値計算に関する支援を行うC班に配属されている。

この班は屋内での作業時には、トイレに往還することもしやすいが

野外授業を行う際には屋外に移動する必要がある。

その最中に公衆の面前で自分が放屁してしまうことを心配していた。


--2日後の7時25分--


自由研究会にはキセノ達も参加する。

Q&Qの部室には、カーテンで目隠しされた2畳ほどのスペースが存在する。

何か秘密を共有する際は、そこで耳打ちをして会話したり体を動かしたりする。

当日の朝も、変わらずそれは行われた。


「くつしたを嗅がせてください。」


キセノはテツからの頼み事に、顔をまっ赤にして拒否した。


「いやっ、いやよぉ。いくらなんでも無理。」


「本当に嗅ぐだけなんで。」


「それが本当に恥ずかしいの。おねがい、勘弁して。」


キセノがカーテンを開いて出てきた。

元気はなくなっていた。


--8時40分--


第17回自由研究会が開かれるシロツメ市学習センターでは

開催の準備が行われていた。102講義室ではC班が各自持参したノートPCを

ACアダプタを通して電源タップに接続すると、無事起動したことを確認して

一息ついた。

「そういえば、私はアーモンド大学工学部福祉工学科所属なんですが、

皆さんは学科どこなんですか。」


ツヅレがふと尋ねた。


群青色の髪色に、上品なツインテール、可憐な顔つきの彼女は

10代の福祉工学科一年生である。


「ボクはストロベリー大学理学部数学科。イタヤさんの番組いつもみているよ。」

キスイが答えた。


「私もストロベリー大学理学部なんだけど、天文学科。」

ノカンも答えた。


「私は東コンソメ大学理学部物理学科。」


キセノは少し恥ずかしそうに答えた。


その後、しばらく会話が続いた。


ノカンは会話を切り上げて講義室から出るとお手洗いの場所を確認するために

そこまで歩き出した。すると、キセノもついてきた。


「キセノちゃんどうしたの。」


「お手洗いならついていこうと思って。」


「ちよっと歩くよ。」


屋外に設置された公衆トイレにたどり着いた。


「野外授業の時はこっちの方が近いからね。」


--9時10分--


ユニフォームに着替えようと、C班全員が更衣室の入り口まで移動した。


キスイが男子更衣室に入ろうとした時、ツヅレが慌てて止めた。


「女子更衣室はあっちにあるよ。」


ノカンとキセノが彼は男だと、過去のエピソードを交えて説明した。

その中にはいくつかには、キスイにとって不名誉な他の三人にとっては

性的な魅力を持つものも含まれていたので、彼は顔を両手で覆って耐えた。


--10時05分--


ビト郎が開会の挨拶を終えると、C班は再び102講義室に移動した。


102講義室では、C班が数値計算についての授業をしている。


「それでは皆さん、データに対して仮説を立てて、それを検証してみましょう。」



授業が終了する5分前になると、ノカンはガスの溜まりを感じていた。


彼女が生徒の質問に答えている最中


クルルゥ


ノカンは自分の腹鳴に思わず頬を染める。


回答を終えて、再び巡回に戻ろうと彼女が腰を上げた時


プゥ


男子生徒の顔先には彼女の臀部を強く意識させる臭いが広がった。

彼女は顔が真っ赤になった。自分自身に対する軽蔑した感情から

振り向くことは出来なかった。ただ横目で覗き見ることが精一杯だった。


彼の脳はノカンの顔、体、そして音と臭いを強く結びつけてマッピングしてしまった。

彼はノカンの様に可憐な女性を見ればそのオナラ

そして恥らう仕草を想起するようになってしまった。


授業が終わり、休憩時間になった。


ノカンがお手洗いへ駆け込むと、キセノと鉢合わせた。


二人は少し恥ずかしそうに顔を見合わせると、それぞれ対面の個室に入った。


ノカンが用事を済ませて扉を開くと、通路脇のシートに座ってキセノが待っていた。

隣に腰掛けると、彼女は耳元にささやきかけてきた。


「ガスは抜けたの。」


ノカンも耳打ちで返事をした。


「あんまり。」


「私も。ところで、次の野外授業だけど、ノカンちゃんも一緒に来ない。」


「私はもう少しねばるから先に行ってて。C班のテントに集合だよね。」


「そだよ。じゃあ行くね。」


キセノは授業を行う野外教室へと移動していった。


2分ほどノカンはねばったが、いまいちだった。


ノカンが野外教室へ移動する途中、ビト郎が声をかけてきた。


「やぁやぁ、どうしたの。体調悪かったら無理しなくていいんだよ。」


「ありがとうございます。今は快調なんで大丈夫です。」


グルルロロ・・・。


彼女は自分の腹鳴を素知らぬ振りして切り抜けようとしたが、恥ずかしさから

顔を赤くしてうつむく仕草が、ビト郎を興奮させてしまった。


「お腹痛いのかい。」


少しオドオドとした声色で尋ねる彼に対して

ノカンは消え入りそうな声で頷いた。

彼は会話を続けようとした。


「我慢しなくていいんだよ。」


彼女は恐る恐ると聞き返した。


「なにをですか……。」


「ガス。」


彼女の顔はさらに羞恥に満ちた表情になった。

二人は約16秒程会話を交わさぬまま歩き続けた。


ノカンはもじもじと腰を動かしている。


すると突然、ビト郎が手を握ってきた。


驚いた彼女は腹部に力が入ってしまった。

臀部からは力が抜けてゆく。

我慢した分だけ強くなったガスの勢いには逆らえず、

ガスの抜ける重低音や高音が幾度も繰り返された。


メタンと硫黄そしてアンモニアの臭いが拡散してゆく。


「あぁ……。」


彼女は羞恥のあまり呆然としている。


「すっきりしたかい。」


ノカンはただ、とぼとぼと歩き出した。


C班のテントに着くと、キセノが迎えてくれた。

ノカンは彼女にそっと抱きついた。


それから10分後、野外授業が学習センター併設の自然公園で始まった。



ツヅレはタマモと彼のお母さんであるナギと一緒に、自然公園を散策していた。

彼は、公園中に点在する洞を見つけてはじっと観察していた。

すると、彼女はザリガニ釣りをしているイタヤを見つけた。


「タマモくんはザリガニ好きかな。」


ツヅレはそう言ってエビラの画面にザリガニの画像を表示した。


それを見て彼は嬉しそうにした。すると彼女はイタヤの方へ駆けていき

二人で何かを話し始めた。10秒ほどすると、イタヤとツヅレが親子の方へ駆けてきた。


この世界は、皆十代で老化が止まっている。

そのため彼女はナギをみても、見た目では母親だとは分からなかった。


イタヤはバケツに入ったザリガニとエビを見せてきた。


ツヅレはバケツの中を覗こうとして力が入った。


ブウゥ・・・。


「あっ……。」


彼女は放屁してしまった。羞恥は表情に露わになってゆく。


プッ プスーッ・・・。


イタヤは彼女を庇おうと放屁した。


二人の顔は赤く染まる。



「昨日ライプナッツ食べちゃったから……。」



ザリガニ臭とメタン臭が混ざり合う空気の中、ツヅレはもじもじと恥じらった。



「そんな、別に我慢しなくていいのに。今のでタマモも喜んでいるんだから。」



タマモの笑顔をみて二人はほっとした。



「じゃあね。タマモくん。」


イタヤは親子とツヅレに笑顔で手を振った。



「今日はありがとうございました。」


「いえいえ、こちらこそ楽しい時間を過ごせました……んっ。」


プピィ・・・ブゥ


「……これからは、こんな風に恥ずかしい所を何度もお見せすることに

なるかもしれませんが、またよろしくお願いしますね。」


教室への帰り道すがら、臭気が漂っていても変わらず笑顔のままで

いてくれた親子を思い出してツヅレは恥ずかしさと幸福感に浸っていた。


--野外教室にて--


巡回中、生徒に呼ばれたノカンの後ろをキスイがついていく。


「ボク、自分でロジスティック関数の実装したのですが、遅くて……。」


「どれどれ、ソースコードはあるの。」


「これがソースコードなんですけど。」


キドウが座席を後ろに下げると、ノカンは腰を屈めた。


臀部が彼の頭の辺りにくるので、キドウは思わず興奮してしまった。


「ふーむ……。」


思考に集中する彼女に腹痛が襲った。


激しくガスの抜ける音が響いた。

彼は顔に彼女のガスを浴びた。

ノカンは泣き出してしまうのをこらえている。


「ごめんなさい。我慢できなくてつい……。」


キスイは彼女を庇って自分が放屁した振りをした。


キドウは自分が今深く鼻から息を吸って堪能しているものが

否応なしにノカンの体内で合成された気体だと知っていたが、

ノカンの放屁に興奮している彼の身体を凝視することで

ようやく性別が分かるような外見のキスイが放屁してしまった状況を想像すると

興奮してきたことを自覚して、彼の臀部をちらちらと見つつ妄想を始めた。



キスイは彼女にささやいた。


「ぼくと、ガス抜きに行こう。」


ノカンは困惑と同時に胸が高鳴った。

ビト郎よりも大胆なことを言われているのに、弄られる様な気持ちがしない。

キスイから感じる男らしさや女らしさ、そして気遣いすらも

彼を美しいとまた性的に感じる感性と繋がっていたので、

ただ任せてみたいという思いが強くあった。


彼がビト郎に、彼女のメンタルを少し休ませる旨の話をすると、

ビト郎は自分が行った方がいいのではないかと返事をしたが

ノカンは生徒のためにも、ビト郎自身のためにも教室に残るべきだと伝えた。

人気のない通りのベンチに彼女を座らせると、キスイは道中の自販機で買った

ライプナッツソーダを彼女に手渡した。


「えっ、これ飲むとさらに……でちゃうんじゃ。」


ノカンは一瞬驚いた後、恥ずかしそうにぼそぼそと話した。


「ガスで押し出す……そう、押し出すためにはゴクゴクと飲んで欲しくて。

ボクは見張りをしているから、君から目をそらしているよ。」


キスイもやや恥ずかしそうに話した。


「飲み終わったらスクワットとか、ただしゃがんだりでもいいしお腹に

適度に力が入るようにしていてね。何かあったらボクの肩を叩いて。」


彼は続けて先程より明るい顔で話した。


「おと……におい。」


ノカンは先程よりもさらに恥ずかしそうに言った。


キスイの顔もまっ赤になり、慌てた様子で話し始めた。


「これはフォローになるか分からないけれど、ボクはそういうの

心地よいって思うから、気にしないで……いてくれたらいいな。」


彼女は缶のフタを開けると、一気飲みをした。


20秒ほどすると、腹痛が起こり、彼女が座ったままの状態で

ガスとそうでないものにより押し出されたガスが

若干水分の混ざった大きな音を伴って漏れた。


立ち昇るメルカプタンや硫黄等が混ざりあった臭気と

湿り気のある音によって生じた強烈な恥ずかしさで、頭が真っ白になった彼女は

よろよろと立ち上がった。そして、自分のハーフパンツの谷間を軽く触れて

乾いているべき所が乾いているのかを確認した。


腹痛が少し和らぐと、彼に言われた様にしゃがみ込んだ。


先程よりも強い臭いでくぐもった大きな音のガスが吹き出た。


それから湿り気のある音が何度も続いたあと、彼女はすっと立ち上がって

キスイの肩を叩いた。


「お手洗い行きたい……。」


彼はもじもじと歩く彼女を連れて公衆トイレまで歩き出した。


道中何度か破裂音と共に臭いがしたが、キスイは知らないふりをした。


ノカンはトイレの入口までたどり着くと、早歩きで個室へと入っていった。


用事を済ませた後、トイレットペーパーを引き出しながらため息を付いた。


個室の扉を開けると、丁度キセノと鉢合わせた。



「後をつけてる訳じゃないよ。」



彼女は慌てた様子でそう言うとすぐに、空いたばかりの個室へ駆け込んだ。


キスイの元に戻ると、彼は自分がしたことをひどく後悔する様な顔をしていた。



「あの……ありがと。」



ノカンが恥じらった様子で感謝と後悔の入り混じった気持ちを伝えると、

キスイはギョッとした表情をした。


「スッキリしたしもう大丈夫、みんなの所に帰らなきゃ。」


頬を染めたまま彼女は微笑んだ。


教室に戻ると、生徒が持ち込んだ様々な機器が机上や机下に置かれており、

生徒同士で議論をしているものまでいた。そのお陰で自由研究は

相当順調に進んでいるように思えた。


ツヅレが上機嫌に声をかけてきた。


「すごいでしょ。みんなこんなに力があるんだよ。」


「一体なにがあったの。」


「あの……オナラが好きって子がいたから、臭いがしないように

みんなから少し離れた所でその子の前でしたらね、それを

話したみたいで、他の子からもオナラを要望されちゃって。」


それを聞いた時、ノカンはツヅレの献身性の源が何なのか想像出来なかった。


「あんまり頻繁だとお手洗い行きたくなってしまうから、

私がみんなの進捗を直接目で確認して、順調だと思ったらご褒美、

不調だと思ったら励ましにと条件付きでやってあげて、

気づいたらこんな風になってた。」


ノカンはキスイと顔を見合わせた。


キセノはお手洗いから帰ってくると、そそくさと巡回に戻った。


「不調な子の存在を私は見落としがちだったんだけれど、

生徒たちはそれに気づいて、教室の中央に近い席に彼らを移動させたの。」


教室の方を見ると、この授業中には到底達成出来ないであろう研究課題を

掲げた生徒数人と、キドウやイタヤ達はSNSで連絡先を交換した様子で

今日限りでない関係を彼らは築こうとしていた。


「それなら、端にいるよりはオナラが流れてくるでしょ。」


「それはオナラだけじゃなくて、コミュニケーションの円滑化にも繋がったの。

席を移動しなくて済むから、高度な知識を持った生徒が

彼らを支援することもやりやすくなって、一石二鳥。」


生徒の一人が声を上げた。


「オナラ駆動開発バンザイ。」


「やだぁ、その言い方やめてよぉ。」


ツヅレは頬を赤くして反論したが、どこか嬉しそうだった。


ノカンは尋ねた。


「それって、恥ずかしくないんですか。」


「恥ずかしい……けど、それで彼ら一人ひとりが力をつけていくことの

助けになるなら私は出来る限りのことをしようって。」


そこにビト郎が混ざってきた。


「キスイくん。ちょっとこっちへ……。」


彼は突然の呼び出しにぞっとした。「ガス抜き」がバレた事態を想像出来た。


まず、ビト郎に耳元でささやかれた。


「あなた、さっきノカンさんにオナラさせていたでしょ。」


キスイは動揺している。


「別にバラしたりしないから安心して欲しいんだけど、僕から頼みがあるんだ。」


「このスカートを履いて、ノカンさんみたいにオナラして欲しいんだ。」


ビト郎の頼みに、彼は赤面して言葉を失った。


「ぼくはあなたみたいに、顔がきれいじゃないんだ。この機会を逃したら

もうあなたの様なかわいい人にオナラをさせることなんて叶わないだろう。」


キスイはただ哀しそうに彼を見つめた。


彼はノカンのことを思い出しながら、木陰の中でハーフパンツを下ろした。

ユニフォームのスカートを手に取ると、慣れた手つきで着替えを終えた。


彼が連れて行かれたのは、人気のない通り。

暗い表情でライプナッツソーダに口をつけるキスイに、ビト郎は魅力を感じた。

彼がそれを飲み干すと、それから約25秒後に彼の腰の谷間から静かに響く

低音が聞こえた。そしてそれはすぐに大きな破裂音に変わった。


メタンと硫黄の臭いが段々と強まっていく。


キスイはこの時間が早く終わって欲しいという思いと、むごいまでの羞恥、

彼女の考えていたことを自分が理解できるようになるのではないかという期待

それらがただひたすらに彼の思考を支配していた。


彼が帰ってくるまでの間、残りのC班は静かに見守るだけの状態が続いている。

ツヅレのオナラを求める者すら数が少なくなっていた。

自由研究の段階が進み、その生徒自身にしか解決出来ない様な課題が増えてきた。

そのため、C班として力を貸せることがあまりないので、

時間を見つけては3人で他愛もない話をささやきあっていた。


「部員からくつしたの臭い嗅がせてって頼まれちゃって。」


恥ずかしそうに切り出したキセノにツヅレとノカンが返した。


「その子が元気になるなら嗅がせて……あげる。」


「きれいで信頼出来る人だったら、多分……嗅がせちゃう。」


キセノは呆気にとられた様子で返事をした。


「えっ、みんなそうなの……じゃあ帰ったら嗅がせてあげようかな。」


次の話題をノカンがもじもじと切り出した。


「あの……例えばオナラとかは……。」


キセノとツヅレが返した。


「私はちょっと……。」


「元気になるなら……いいかな。」


ノカンは先程キスイと経験したことで、自分が変化したことを自覚していた。


「私は好きな人にならいいかなって……前はとてもそう思えなかったけれど。」


彼が帰ってきたら、次に会う予定を決めよう決心した彼女には

心の支えを持たず学問の道へ進もうとする者と、そうではない者が

はっきりと理解出来た。

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