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風衝都市の暮らし  作者: りょうこ
3/6

リョクチャ篇1

2017-07-25-5:06 パフェを1.5倍食べていた所を訂正しました。

3人の少女たちが一列で歩いている。

先頭にはカエデがいる。

中間にはリョクチャが、ロングのストレートは地毛の深緑色をしている。

制服代わりの服装は明色のブレザーと、

スリットがついた暗色のスカートでまとめられている。

最後尾にはレモンがいる。


「エビラ、最寄り駅の時刻表をみせて」

カエデが手に持っている電子端末「エビラ」に語りかけた。

すると、エビラの画面には列車のダイヤが表示された。

彼女はそれをしげしげと眺め、リョクチャとレモンにも画面に注目するよう促し言った。


「ライプナッツで食事してから駅に着くと、ちょうどこの快速に乗れるね。」


カエデの言葉に反応したレモンが庇うようにリョクチャに確認した。


「リョクチャちゃんはライプナッツ初めてだっけ?」


「ライプナッツは初めて行くけれど。どんなメニューがあるの?」


彼女がライプナッツについて何も知らないということを把握したレモンは

カエデに耳打ちした。


「別のお店行こう。彼女がかわいそうだから。」


カエデはそれを承諾すると、申し訳なさそうに皆に向かって言った。


「ごめん!やっぱり今のなし。他のお店探すね。」


一瞬間を置いてから、リョクチャがニヤニヤとした表情で

彼女の持つエビラの画面を二人に向かって掲げた。


「ライプナッツって変わったお店なのね。面白そうだから行きましょう。」


店名の由来にもなっているライプナッツが放屁を誘発することについての

注意書きがなされたWebベージが映し出されている。


「2人とも行ったことあるみたいだけれど、……誰としたの?」


彼女が問い詰めるように尋ねると、その少し幼気な目元と、

整った顔つきが合わさり、2人は彼女に魅せられてしまった。


まず初めにカエデが反応した。


「ごめん。来店経験も含めて秘密……。」


次に、レモンが話した。


「ヒソクから一緒にタコスを食べようって言われたのが最初で、

食べたあとは私だけじゃなくて彼女も……」


レモンも顔を紅潮させながら答えてはいたが、

それはヒソクへの感情も混ざった表情だった。


リョクチャは自分がどことなく婀娜な雰囲気を作り出してしまったことに

罪悪感と戸惑いを感じ、ぼんやりとしたままになっていた2人の

先頭に立って道を進み始めた。


やがて橋が見えてくると、先程までの空気はすっかり散り消えていた。


街道を背に橋の欄干から川を横目に見ていると、

ふとレモンは護岸の色合いが気になった。


「ねぇ、あれって衝上断層じゃない?」


護岸を眺めていると、きゅるきゅる・・・と音がした。


リョクチャが顔を耳まで赤く染めているのをみて、レモンは彼女のためにも

にパーラーへ行く決意を新たにした。


「こんな所に、こんなに貴重なものがあるなんて気づかなかった。

SNSにアップロードしなくちゃ。」


気まずい空気を払うために、カエデが高欄の方へと歩いてゆく。


彼女がエビラの画面に目をやると、SNSのタイムライン上では、

宇宙が超越者によって支配されていると主張する小学校の先生について

議論が行われていた。


彼女はそれを見て、撮影した画像をアップロードする操作を止めて二人の所へ戻ってきた。リョクチャとレモンはカエデに対して他愛ないことを話す。


「良いの撮れた?」


「きっとたくさん反応もらえるよ」


2人に軽くうなずいて返事をしたかと思うとカエデはすぐに、

クルッと体の向きを変えて

目的地であるパーラーを目指して再び進み始めた。


彼女の後を2人がついていく。


ふとつぶやいた。

「超越者の存在を信じる人と信じない人が分かり合う手立てはあるのかな?」


カエデは先程の議論が頭に残っていた。


「多分無理だと思う。」


そう切り出すと、レモンは淡々と説明を始めた。


「仮に超越者が何か未知の力で宇宙を支配しているとして、

それを観測出来ないなら嘘とはいわない。


だけど、他と比べて妥当性の低い仮説扱いで済ます人達と、

そうではなく事実として扱う人達だから。」


カエデが指摘した。


「因果関係は証明しなくてもいいの?」


「宇宙に関することで因果関係を証明するのはとても大変だから、

ひとまずは仮説でいいの。」


レモンの説明に、二人はただ肯いていた。


(説明してる間にお腹鳴っちゃったけど、皆気づいてなかったみたい。)

彼女はつかの間の安堵感を味わっていた。


グルルゥ・・


レモンの顔が真赤に染まる。

そこから6秒ほどの静寂をおいた後には


グルゥルル


カエデの顔も真赤に染まった。

3人は鳴り止まない腹鳴に恥じらい、笑い、そしてやはり

恥じらったりとしているうちに、パーラー「ライプナッツ」へたどり着いた。


パーラーの常設ステージではバンドが演奏をしている。

受付を済ませると、客席に案内された。


ビセキ県の名産品であるライプナッツを使ったパフェとトルティーヤを

カエデが注文すると、リョクチャはポテトフライとハンバーガーを、

レモンは牛カツとタコスを注文することにに決めた。


呼び出しボタンを押すと、ウェイターがやってきて

お手拭きと防臭シートをそれぞれ人数分渡された。


「この防臭シートってどこにつけるの?」


リョクチャが防臭シートの使い方を知っている2人に聞くと、

カエデは座布団の様に使えば良いと教えた。

レモンはお尻の周りに巻くように使えば良いと教えた。


2人の使い方を見比べていると、彼女はレモンのお尻が

自分やカエデのものと比べて大きいということに気づいた。


--4分後--


リョクチャが頼んだポテトフライとハンバーガーが最初に届いた。

トレイにはライプナッツソースが添えられている。


「あんまりソースつけすぎないほうが良いよ」


レモンの忠告に対してリョクチャはその理由を聞いた。


「どうして?」


「えーと……ほら、このソースは甘味が強いから。」


「私甘いの好きだから大丈夫よ、でもありがとう。」


リョクチャはフライドポテトにでっぷりとソースにつけて食べ始めた。


次にレモンの頼んだ牛カツとタコスが到着した。


会話もせずにバクバクとタコスを食べるレモンに対して、

彼女の普段すました様な振る舞いとの差異そして吐息に混ざる

仄かなニンニクの臭いが、カエデはどこか性的に感じた。


彼女はついレモンをみつめながら鼻ですんすんと臭いを嗅いでてまった。


カエデの行動に気づいたレモンは顔を紅潮させた。

タコスを食べる手を止めた。

そして彼女は手で口元を覆いながら恥ずかしげに呟いた。


「ニンニク臭かったでしょ……。」


カエデは慌てて切り返す。


「ニンニク食べた後のレモンちゃんの吐息とかむしろご褒美だよ。」


リョクチャもそれに続く

「むしろこっちからクンクン嗅ぎたいよ。」


レモンは2人の発言に引いてしまったが、ヒソクからも同じ様なことを

言われた時には少しだけ興奮してしまった自分を思い出してしまい、

若干落ち込んだ。


最後にカエデが頼んだパフェが到着した。


--15分後--


リョクチャはバーガーを食べ終わり、

残り少なくなったポテトフライを食べている。


レモンはタコスを完食して牛カツに手を出しおり、

それもあと少しで食べ終わる状況だった。


カエデはパフェを2/3まで食べ進めた後は何かを我慢している様子で、

そわそわと腰を動かしていた。その直後。


プウゥ・・・


「ごめん……オナラしちゃった。」


カエデは照れ笑いをしながら謝った。

その姿をみた2人は、それがやがて自分たちにも降りかかる事態であることを

想像して緊張が高まった。


「反応してもらった方が恥ずかしさ薄れるから、何か言って。」


恥ずかしそうにオロオロとする彼女の発した言葉に2人は応えた。


「青臭いし硫黄臭い」


「晩御飯にお肉食べた?」


カエデは顔をさらに赤く染めた。


--さらに1分後--


ギュルギュル・・・


腹鳴の主であるレモンは少し苦しそうな表情で、前屈みになっていた。


「ごめん……口呼吸して」


レモンがそう言うと、リョクチャとカエデは鼻呼吸を始めた。


「いくら防臭シートあるっていっても臭いから……あっ」


ブウウゥ・・・


彼女の忠告も虚しく、放出したガスについて

カエデとリョクチャは感想を言い始めた。


「なんかお肉臭い匂いはするけれど、流石にまだニンニクの臭いはしないね。」


「低音が太くて好きな音。少し硫黄っぽい……。」


レモンは涙目になって俯いてしまった。


プゥウウー・・・


リョクチャの顔が真っ赤に染まる。


「リョクチャちゃんはこんなオナラするんだ。お肉っぽい匂いだね。」


カエデは初めて彼女のオナラを体感できたことに嬉しそうだった。

恥ずかしさのあまり、リョクチャは両手で鼻と口元を覆った。

レモンは俯いたまま黙っている。


--2分後--


プゥッ

ブゥー

ブススッ


会計を待つ3人は、鳴り止まない放屁に大きな羞恥を感じていた。


待機列にはガス吸引用の装置が等間隔で設置されているので、

臭いはほとんど漏れないのだが音は隠せない上に、

装置の吸引口にお尻を突き出す形になるので、周りからの視線が気になった。


実際、レモンが吸引口へと放屁する度に、

2,3人の客が彼女や彼女の臀部の方へと視線を集中させていた。


またカエデとリョクチャも、彼女ほどではないが時々視線を感じていた。


--6分30秒後--


下りの普通列車を待つホームのベンチにて


「今日は大分恥ずかしかったけれど、みんなとお食事が出来て良かった。」


カエデはうっとりとした表情で皆に向かってそう言った。


「本当に恥ずかしかったんだから。牛カツ美味しかったけどさ。」


「ポテトとハンバーガーも中々だったよ。

ところで今日のことみんなはファンクラブに書く?」


彼女たちは、それぞれ自分のFC(ファンクラブ)を持っている。

一挙一動を知りたいという熱烈なファンが集い非公式FCを設立した所、

それが本人達の目に留まり、晴れて公式FCとして活動することになった。


ファンクラブはWeb上でも活動しており、

彼女ら自身がそれぞれ管理者としてWebサイトを運営している。


また、サイトを管理するサーバの設定では、家族が使用するデバイスに

割り当てられたMACアドレスをブラックリストに登録する様になっている。


そのため、家族はネットカフェ等に出向かない限り、

自分の家族のファンクラブについての情報を知ることは出来ない。


「書いちゃいましょう。」


カエデが2人の方をそれぞれ見回して誘った。

3人は、恥ずかしさと背徳感が入れ混じった笑みを浮かべて見つめ合った。


遠くに列車が見える。

彼女たちの耳に届く走行音はドップラー効果によって、段々と変化していく

扉が開くと、3人は帰路へ向かう普通列車へと乗り込んだ。

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