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この世界には7人の主人公がいるらしい  作者: 藤峰男
1人目の主人公は戦闘狂らしい
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 前回までのあらすじ風に、今朝から現在二時限目授業中までの経緯を説明してみよう。


 まず朝。いつものように電車に乗り学校へと向かう途中で、自称天使の男に出会い、ピンク色の髪をした女子生徒を目撃する。

 学校では真面目な委員長が髪をピンクに染め上げ(件のピンク髪の学生はなんと委員長だった)、銀髪ミステリアスキャラがクラスに転入してきた。何を言っているか分からないと思うが、俺も何が起こったか分からないのだ。


 なんと俺は、主人公の1人に選ばれたらしい。神様もずいぶんと性格が悪いものだ。よりにもよって、平凡かつ平均的な俺をそういう面倒くさい役回りに選んでしまうのだから。

 正確に言えば、俺はそれなりに非凡で、そこそこ平均よりも上回ってたり下回ってたりしている。つまり言うほどに平凡平均平坦な人生を送ってはいないのだ。

 俺から見て平凡といえば、そうだな。委員長に好意を寄せていて、毎日それとなく視線を送っているお調子者の山本なんかどうだ? 今からでも遅くはない。山本なら『観測者』として神様とやらをおおいに楽しませてくれるだろう。


 と、そんな悲痛な叫びも虚しく、時間は淡々と過ぎていく。

 当然そう簡単に受け入れられるような現状じゃないが、混乱している今だからこそ案外冷静に物事を分析できている……、気がする。


 はい、あらすじ風説明終わり。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 じゃあ次の問題を、と前置きした英語の教師は、クラスをなめるように見回すと、


「赤坂、答えてくれ」


 1人の女子生徒を指名した。


 赤坂緋月。転校生の名前らしい。

 らしい、と曖昧なのは、彼女が行ったという自己紹介をちゃんと聞いていないせいだ。不真面目な印象を持たないでほしい。何分、忙しすぎたのだ。

 激動のホームルーム終了後、すぐさま俺の元に駆け寄った四宮が、高ぶった感情を隠そうともせずに転校生について語っていたが、聞くにあまり好印象ではなかったようだ。

 まず、声音の冷たさ。次に自己紹介の簡潔さ。


「赤坂緋月です。よろしく」


 とだけ言うと、原崎に視線で自分の席はどこかを尋ねていたという。そのときの原崎の戸惑いっぷりは一見の価値があったそうな。まあ俺も、自己紹介しろと言われて名前プラス挨拶という鉄板に付け足して、他愛もない世間話が出来るかと聞かれたらもげそうな位に首を横に振る。無理無理、余計なこと言って余計な印象を付けたくないし。


 そしてクラスメイトに対する態度。

 いるだろ? 初対面でも馴れ馴れしく絡んでくるお調子者の山本とか。おおかた、赤坂をからかうような質問をしようとしたのだろうが、「赤坂さ」のあたりで驚くほど冷たい睨みをくらい、押し黙ってしまったという。以後、彼女に勝負を挑む勇者は現れないのであった。そして世界は滅びた……。


 確かに、転校生が来たときの恒例行事、席の周りに陣取っての質問合戦をしている姿も見られないが、大丈夫だろうか? いじめられ、たりはしないだろうけど。むしろ1人で他全員をなぶっている最中だ。


 指名を受けた赤坂はスッと立ち上がると、英語の教師が出した問いにすらすらと答え、つまらなそうに座る。なんと頭もいいらしい。容姿もいい頭もいいお金持ちってもうチートキャラじゃないですか……。それに加えて性格までよかったらと思うと、案外バランスが取れているんだなと感心した。


 左斜め後ろという絶好のポジションからしばらく彼女を観察してみたが、これといって不審な行動をとるわけでもない。休み時間のたびに話しかけてくるピンクの人を軽くあしらい、昼休みになるといつの間にかいなくなり、午後の授業は肘をついた状態で固定。


 寝ていらっしゃるのだろうか……。


 1人寝ているのなら2人寝ていても同じだろうと睡眠の導入動作に入った瞬間、教師の怒りが俺のところだけに飛んできて、ああ世界はいつだって理不尽だみつをなんて思っていたらあっという間に一日が終わってしまった。

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