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この世界には7人の主人公がいるらしい  作者: 藤峰男
2人目の主人公はポニーテールらしい
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 いつもどおり目を覚ますと、いつもどおり顔を洗い、歯を磨き、朝食を食べ、歯を磨き(二度磨き)、登校の支度をする。支度が終わると玄関へと向かい、『右手』で扉を開けた。甲に描かれた×印を見ていないわけではない。昨日の晩から、ずっと考えていたのだ。


 『四次元半』を登校に使ってみてはどうだろうか、と。


 『四次元半』に人はいない。動物もいない。電気も通っておらず、当然水も出ない。全てが現実世界での役割を忘れた張りぼてのようだが、しかし1つだけ有効活用できるものがある。電気も使わず、水も使わない、人間が開発した中で、今の俺にとっては最も力になる3Cの内の1つ。

 それは車だ。

 車は他の製品と異なり、完全に独立している。ガソリン車であれば、長いコードを使用しコンセントから電力を供給し続ける必要もない。現実世界で十分にガソリンを入れておけば、『四次元半』で給油する必要もない。


 実は昨日の朝、魔族アルヴァディーンを撃退した後で一度自宅へと戻っているのだが、その際、その時間には既に職場へと向かっているはずの両親の車が、2台とも自宅のガレージに置かれているのを確認したのだ。

 すぐに現実世界へと戻り、ガレージを覗いてみたが、両親の車はなかった。当然、自宅に両親はいなかった。 

 そして今日、現実世界のガレージには母親の車1台しか置かれていなかった。父親は仕事の都合上、昨日車で家を出てからまだ家に帰ってきていない。つまり、現実世界のガレージに母親の車1台しか置かれていないのは当然なのだ。


 では『四次元半』ではどうだろうか。俺はガレージを覗き、思わず息を飲んだ。ガレージには母親の車1台だけが置かれていた。


 ここで疑問が発生する。なぜ昨日は両親両方の車が置かれていたのか。そのカラクリこそ、『四次元半』を登校に使うミソとなるのだ。


 さて、核心に迫る前にこの『四次元半』でいろいろ試したいことがある。時間の心配も、もはや必要ないだろう。


 まず始めに、車の扉を使って現実世界と『四次元半』の行き来が出来るか、を試したが、これは問題なかった。どうやら扉の判定はだいぶ大雑把らしい。ひとまず胸を下ろした。ここでつまずいては『四次元半』を利用しての通学は諦めることになる。


 次に車のエンジンをかけてみた。問題なく、セルの回転する音が耳に響いた。これもまだほんの確認程度だ。俺は運転席に乗り込むと、車を数メートル前進させ、ガレージから出した。もちろん俺は車の免許なんて持っていない。これは無免許運転だ。だが慌てることなかれ、ここは異世界だ。現実世界の法律が通用しない世界なのだ。通報するならまず、銃刀法違反を犯した赤坂と津川にしてほしい。それにこの『四次元半』が俺の見立て通りなら、初心者の俺が運転しても被害が出ないはずだ。


 俺は扉を『右手』で開けた。するとどうだろう。『四次元半』で車をガレージから出したはずなのに、現実世界ではガレージの内壁が目の前にある。現実世界での車は少しも動いてなどいなかった。一度車外に出て、また『右手』で車に乗り込む。『四次元半』側の車は確かにガレージの外に移動していた。


 そのまま車から降り、適当な空き缶をボンネットの上に乗せた。玄関のドアを利用して現実世界へ戻ると、ボンネットの上に空き缶は乗っていなかった。現実世界でも『四次元半』と同じ場所にあった空き缶を拾ってきて、今度は車の前に置いた。『四次元半』へと移動し確認したが、空き缶はボンネットの上に乗ったままだった。


 空き缶を握り潰すと、現実世界へと戻った。空き缶に握りつぶされたような痕はない。現実世界で空き缶を踏み潰して『四次元半』へと移動した。空き缶には俺が握り潰した痕しか残っていなかった。


 最後に、『四次元半』の自宅に掛けられた丸時計に目を向けた。時計の針は深夜0時で止まっていた。しかし『四次元半』側の空は明るく、現実世界の空と変わらなかった。


 以上の点を踏まえて、俺はある仮説を立てた。それはリエルが説明しなかった、『四次元半』の正式なルールだ。



①現実世界と『四次元半』の扉の位置がずれている場合、移動先の扉の位置が優先される。

②現実世界と『四次元半』の間で、受けたダメージは共有されない。

③現実世界と『四次元半』の間で、物の移動は共有されない。

④現実世界と『四次元半』の空の状態は共有される。

⑤『四次元半』は深夜0時のタイミングで、現実世界をそっくりそのままコピーした形に再創造される。



 ⑤に関しては本当に机上論でしかない。真相は魔王ゼダンしか知らないだろう。だが午前0時に再創造が行われているなら、父親がいた昨日は車が2台、父親が帰ってきていない今日は車が1台しかないことが、これで説明できる。


 この仮定がすべて正しければ、『四次元半』を利用した車通学が可能になる。例えばこの空間で車をぶつけたとしても、現実世界にはなんら影響はない。『四次元半』で車を運転しても、現実世界で両親の車がひとりでに動き出すわけではないのだ。


 心配なのは、俺自身がダメージを受けること。津川の腹部の傷が現実世界に持ち込まれたように、俺が『四次元半』で受けたダメージが、現実世界に戻るとなかったことになる、とはならない。更に持ち歩いているスマートフォンの時間は正常に作動していることからまとめると、



⑥再創造されていないものには、上記5つのルールは適用されない



 が追加される。




 学校に着くとスマートフォンの時間を確認した。まだ8時前だ。電車を使っての登校と比べても30分以上の短縮となった。予想よりも早く着いてしまったな。


 『四次元半』の街に人の気はもちろんなかったが、ところどころ停止した車が見受けられたため、ややてこずった。しかしこれは想定内だ。深夜0時の状態をコピーして再創造を行ったのなら、当然夜間の道を走る車だってある。むしろ俺の立てた仮説を立証する裏づけとなった。


 『左手』で扉を開け、車を降りる。校門前に堂々と停めておこう。どうせ誰にも見えないし、下校時にも乗って帰るのだ。とてつもなく便利な登校方法を発見してしまい、俺は胸を躍らせながら校舎の扉を『左手』で開け進んで行く。しかしこの学校、校長室の扉以外は引戸なもんで(通路の扉なんか立て付けが悪い)、5つ開けるともう腕がパンパンだった。そしてやはり0時で再創造説は正しいようだ。すべての扉がきちんと閉められている。


 旧校舎は部室棟になっているが、奥に使っていない教室があったはずだ。トイレなんかでもよかったが、流石に念には念を入れるべきと考えた。目的の教室へ入ると、その隅に設置された掃除用具要れの中に体を押し込んだ。そのまま『右手』で扉を開けると、現実世界の環境音が俺を出迎えた。


 悲鳴を伴って。


 目の前には4人の女子生徒がいた。

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