序章
「おかあさま!おかあさま!」
小さな少女が一人の女性の元へ駆け寄る。
その女性は腹が大きく膨らんでおり、静かに木陰で本を読んでいた。少女に気付くと本を閉じて、優しく微笑む。
「あら、どうしたの?」
息を切らしながら駆け寄ってきた少女の手には白い花で作られた冠が握られていた。
「あのね、はなのかんむりをつくったの!これ、おかあさまにあげる!」
「まあ、綺麗にできたのね。嬉しいわ、似合うかしら?」
少女に冠を乗せてもらい、母親は微笑む。
「うん!おかあさま、まるで、おとぎばなしのおひめさまみたい!」
「ふふっ!私はもうお父様の結婚しているから、いうならお妃さまね。そして……」
小さな少女の頭を撫でる。
「あなたがお姫様ね。」
「へへっ!でもね、わたしはおひめさまよりもなりたいものがあるの!」
「あら、そうなの?」
少女は強く頷き、嬉しそうに微笑み、母親の膨らんだ腹を撫でる。
「わたしはおひめさまよりも、このこのおねえさまになりたいの!」
「あらあら。」
「そうしたらたくさんかわいがって、たくさんあそんであげて、たくさんおべんきょうも教えてあげるの!すてきでしょ、おかあさま?」
母親も自分の腹と少女をやさしく撫でた。
「ええ、すてきね。貴女はきっといいお姉様になるわ。」
「えへへ、はやくうまれないかな?」
そういいながら少女は母親の腹に耳を当てて、赤子が動かないか嬉しそうに聞いていた。その様子を母親は寂しそうな顔をして言った。
「そうね……お姉さまになる貴女に、約束があるの。」
「やくそく……?」
少女は顔を上げて、首を傾げた。
「ええ、とっても大事な約束よ……」
母親はそう言って、そっと少女に耳打ちをする。
「そんなことでいいの?」
「ええ、約束してくれるかしら?」
少女は大きく頷く。
「ええ、いいわ!やくそくね、おかあさま!」
「ええ、約束ね……」




