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【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第3章  精霊石 〈 Ⅰ -邂逅編〉
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ありえない・・・


 リューイは、形見の石を小さな巾着袋に入れると、ズボンのベルト通しにくくりつけてから、ポケットにしまった。アクロバティックな動きばかりするので、落とさないようにと、ロブが作ってやったものである。


 レッドが下を通り過ぎたところで、リューイは声をかけた。

「ミーアは寝たのか。」


 驚いて立ち止まったレッドは、反射的に見上げた。

 さも慣れた様子で、リューイが大木の太い枝に腰掛けている。


「ああ、やっとな。カイルが頼まれてくれてる。」


 レッドがそう答えている間に、リューイは何の躊躇ちゅうちょもなく、そこからパッと飛び降りてみせた。無事に着地するには驚くほどの高さがあったが、ものの見事に。レッドはぎょっとしたが、リューイの方では日常茶飯事なのだろう。まるで猿だ。


「あんな所で何してたんだ。」


「ああ・・・いろいろ考えてた。カイルが言ってたこととか。お前、どう思う。」


「まるで実感が無いな。この大陸が近いうちに滅びるなんて。」


「だよな・・・。」

 リューイは少し笑った。


「あの二人のことも・・・俺は、エミリオとギルのことを、カイルの言うアルタクティスとしての仲間ではなく、単純に気に入ったから旅仲間として受け入れた。今の俺にそれ以上の意識は無い。」


 歩きだしながらそう答えたレッドは、すぐに肩を並べたリューイにこう問うた。


「なあ・・・そのギルのたかがしていた首輪だが、妙だと思わないか。」


「どういうことだ?」


「宝石のような高価そうなものを鳥の首輪にしちまうヤツなんて、庶民にいるか? 貴族・・・いや、あの二人・・・案外、本当に皇子だったりして・・・。」


 自分でも馬鹿げている・・・と感じながら、レッドはそう答えた。


「ええっと・・・どこのだっけ?」


「アルバドルとエルファラムのさ。」


「そのへんよく分からないんだけど、そんなにすごいことなのか?」


 レッドがぴたりと足を止めると、リューイも立ち止まった。


「いいか、アルバドルとエルファラムと言えば、大陸屈指の強国。その二つの国には、それぞれ英雄と呼ばれている皇子がいる。あの二人が酷似こくじのな。彼らはそうと呼ばれるだけあって、驚異的な剣の使い手だ。そして、あの二人も凄腕すごうでだった。それも恐ろしく。顔も名前も腕前も同じ別人なんて・・・いるか?」


「じゃあ、本人かも。」


「バカ、ありえねえよ。」


「お前がそう言ったんだろ。」

 なんなんだ、と、リューイはあきれた。


「まだ続きがあるんだ。数年前、その二つの国は大戦争を起こしている。それがヘルクトロイの戦い (※2)だ。その合戦に二人の皇子も参戦したんだが、そこで彼らは母国の平和をかけて対決したらしい。多くの兵士が入り乱れる大合戦の最中でありながら、そこだけ違う戦いが起こっていたようだった、と聞いたことがある。」


 ひと呼吸おいてから、レッドは強調してこう続けた。


「本気で殺し合いをした仲なんだよ。」と。


「じゃあ・・・二人が友達なんて。」


「ありえないよな。」


 レッドとリューイは目を見合ったまま、しばらくそこにたたずんだ。






(※2)『アルタクティスzero』 ― 「外伝4 運命のヘルクトロイ」






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