表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第1章   失踪  〈 Ⅰ -邂逅編〉
6/587

敵の部隊


 驚いて、エミリオは彼の目を見た。 


「そなたと・・・私が?」


「そうだ。」


「だが、そなたとは・・・。」


「俺のことは、ギルって呼んでくれたらいい。この顔の時は、そのあだ名で通ってたんだ。あんたのことは・・・エミリオでいいか。もしバレそうな塩梅あんばいになったら、笑い飛ばせば済むことだしな。思い切り別人らしく。俺はそうしてやってきた。」


 エミリオがまだ何とも答えられないままにも、ギルは勝手に先走って言葉を連ね始めた。


「いや、しかし・・。」


 エミリオは、ただただ戸惑うばかりだ。


 ギルが急に顔色を変えた。


 エミリオが返事に困っているその間のことだった。


 ギルは、遠くを見透かすように目を凝らしている。


「あれは・・・。」


 今まで見ていた風景の中に、別のものが加わっていることに気付いたのである。それは、ずいぶん起伏の激しい大きな岩のようにも見えた。だが、次第に大きくなっているようだ。


 ギルは立ち上がった。


「いかがなされた。」


 エミリオも怪訝そうに声をかけ、そして同じ方角をじっと見つめた。

 

 ようやくそれが色彩を帯びだすと、ギルはいきなり切羽詰った声を上げた。


「フルザだ!」


 赤地に二本の剣をあしらった抽象ちゅうしょう的な鳥の図柄、それが王国フルザの紋章だ。その軍旗を目にして言ったのである。


「まずいな。フルザといえば野心家の大王が君臨する好戦的な国家だ。エルファラムも、虎視眈々《こしたんたん》と狙われてると思うぞ。」


「確かなのか。」


「俺の視力はピカ一なんだ。くそ・・・ついてないな。とにかく隠れよう。」


 ギルは、悠長ゆうちょうにもまだ座ったままのエミリオ皇子を急かしながら、辺りを見渡して適当な場所を探した。そして共に、ちょうど体が収まりきれるくらいの岩陰いわかげに身を潜めた。


「幸か不幸か、軍隊にしてはやけに少人数だな。ただの偵察ていさつ部隊か?それでもやらかす羽目になったら、二人じゃ多勢に無勢だけどな。」


 ギルは、次第に近づいてくるそれらを、岩陰いわかげから肩越しに見て言った。総勢ざっと五十というところである。


「やらかす?」


 話の流れから意味は推測すいそくできるが・・・と、エミリオは面食めんくらった顔をした。


「あんたもだろうが捕虜ほりょになんてなってる場合じゃないから、その時は頼りにしてるぞ。」


 ギルが軽口かるくちを叩いているその間にも、馬のひづめの音と、足並みをそろえてやってくる物音はどんどん大きくなっていた。


 二人は息を殺して待った・・・。


 ところが・・・である。やがてその気配と足音がすぐ背後にさしかかったかと思うと、それらは通り過ぎることなくピタリと止んでしまった。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ