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朗報 2 一一 アースリーヴェにて



 メイリンは、かつての旅仲間や故郷の知り合いからの連絡が何かないかと、町へ出掛けた時には決まって郵便局に寄るようにしていた。船着場で馬車を借りて、今では一人で町まで出ることもある。


 そのメイリンもまた、エミリオが霊能力を落としたように、もう予知夢を見ることもなくなった。


 そしてこの日は、キースの息子、その名もキールを護衛に、一人でモント・リアンの都市へ出かけていたメイリンが戻ってきた。


 そうして帰ってくるなり、メイリンは滝のある川で訓練をしているに違いないリューイのもとへと急ぎ足で駆けていく。


 落差30メートルほどの滝の轟音ごうおんとどろき渡る中、常緑の大葉をもつ高木やつる植物、着生ちゃくせい植物などが青々と繁茂はんもしている原生林を、軽快に・・・とまではいかないものの、慣れた足取りで通り抜けて行くメイリン。


 三つの封筒を、落とさないよう大切に抱き締めて。


 やがて、メイリンがその川辺へとたどり着くと、はじめリューイの姿はなかった。


 だがすぐに水面から顔を突き出して現れたのは、伸びた金髪を一括ひとくくりにしている筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》の青年。そのリューイはもう訓練を終えていて、今はもりを片手に漁の最中だったらしい。


「リューイ、ねえ来て!すごいのよ!」


 メイリンが何やらそうわめいているが、その声は滝のしぶく音に掻き消されて、リューイの耳には届かない。


「あ、メイリン、おかえり!え?なに?聞こえないよ。」


 メイリンは落ち着きなく手招きながら、「いいから、こっちに来て!早く!」


「なんだ?」

 リューイはたくみな泳ぎっぷりで間もなく岸に上がった。


「手紙が三通来てたわ。一つはメルクローゼ公国の村から私に。一つはウェスト伯爵から、あなたへ。」


「父さんからか!」


「そうよ、良かったわね。でもゴメンなさい、その喜びに浸るのはあとにしてくれる?だって、ほら・・・!」


 濡れた手で触られては困ると思い、メイリンは先にもう三つ目の手紙を開いている。そして、すっかり興奮しながらこう伝えた。


「エミリオとセシリアが結婚するわ!国が認めた身分差婚よ!素敵!でもエミリオは今、王室騎士団長ですって!まあでも、もともと帝国の皇子様だったわけだし、エミリオなら当然それくらい・・・って、セシリアと結婚するなら王族になるのね!」


「え・・・それって、どういうことだ。」


 毎度のことながら・・・と思いつつも、こんな時、メイリンはいつも姉のような口調で説明してやるのだった。


「エミリオは大帝国の皇子様である素性を隠してて、実際、その過去はもうなんの意味もない身分だから、王女様であるセシリアとは釣り合わなくて結婚なんてできないのが普通なの。それを乗り越えてみせたのよ!」


 リューイの視線は斜め上に。王侯貴族の結婚にまつわる諸事情が想像できないので何が問題なのか腑に落ちない様子・・・。


「えっと・・・とにかく、ギルとシャナイアが、大勢の人の前で〝誓います。〟って言ってたでしょ。どんな時もお互い助け合って、生涯ずっと一緒に生きていくって約束したの。あれが結婚式で、今度は、エミリオとセシリアがその結婚式を挙げることになったから、私たちはそれに来てくださいって招待されたの。そのためにそこへ行くのに、この手紙がいるから汚さないでね。だから、これが招待状。きっと、皆のところにも同じ招待状が届いてるわよ。」


 ここでリューイは満面の笑顔。


「皆に会えるってことか?懐かしいな!」


「うん・・・そうね。」









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