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【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
第16章 大陸の終焉 〈 ⅩⅢ 〉
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全てを賭けた決戦場



 ギルもうなずき返して、視線をレッドやほかの者に転じた。

「傭兵部隊だけではとても足りない。たとえ化け物だろうが、相手は立派な軍隊だ。これは・・・戦争だ。」


「だが・・・それら全てが間に合うかどうか。準備が整うまでに何か月もかかるだろう。」

 エミリオが言下に言った。


 これをきっかけに、話が具体的に進められた。


「奴らが目指す場所は分かったんだ。ジェラール殿は、それらと戦ったあと充分な休みも取らずに、急いでここへきたことがうかがわれる。一日に走らせることができる馬の走行距離の限界を考えると・・・およそ二か月前ってところか。そのあと近隣国をも破壊して、そこからモルドドゥーロを目指すとすると・・・。」


「軍が完全徒歩で移動するだけでも、通常、軽く五か月はかかると思うぞ。それに破壊と殺戮を繰り返しながらやってくるというなら、さらに時間はかかるだろう。」

 旅慣れているレッドが言った。


 ギルは少し黙って考えた。

「半年・・・正気の者たちが耐えてくれれば、この計画が順調に上手くいくとしてギリギリだな。軍を乗っ取られそうな国が俺にもいくつか思い当たるが、正気の者もいて内戦を起こしているなら、奴らだって増えるばかりじゃない。だがそれでも・・・ざっとだが、十万は越えてくるだろう。アルバドルが動かせる限界は、恐らく五万だ。」


「エルファラムもそれ以上は・・・。」

 エミリオが苦い表情で口を挟んだ。


「ああ。あとはダルアバスの防衛軍と、期待はできないがモルドドゥーロ。そして傭兵部隊だが、これは未知数だ。東側のみの募集となるだろうが、ここでどれだけ集められるかにかかってくるだろう。だが期待はできる。ジェラール殿から、バルデロスの魔の軍勢のことを詳しく聞けばもっと数の予想もつけられるだろうが、戦える数をそろえられると思う。やってみる価値はある。いや、恐らく可能性は・・・それしか無い。」


 みなが注目する中、ギルはメイリンの一枚目の絵を手に取った。高い城壁で囲まれた城の絵である。


「これは、アラン殿が言っていた城塞じょうさいヴェルロードスだろう。海岸近くにあると言っていた。覚えているか?アルザスの剣伝説の舞台となった場所だ。」


 ギルはそれから、今度は地図からその場所を探しあてて指を置いた。アランやメイリンの話からだいたいの場所の見当はついていたので、すぐに見つけることができた。思った通り、それは大河カデシアをそばに控えた荒野の中にあった。


「今は廃墟の城塞都市と化しているようだが、ここを砦にやつらを待ち構えるってのはどうだろう。」


「避けられて、別の方向から回られたら?」

 カイルが言った。


「避けるわけないだろう、こっちの姿が目に入りさえすればな。流血を好むヤツらとの戦いは、必然となるはずだ。だから、わざと派手に待ち構えてやるのさ。この城塞の上からも準備万端整えてな。それに、表面だけでも活気づかせておけば機能している町があると思い込ませ、奴らを誘い込むこともできる。そうすれば、モルドドゥーロは守られる。ここで食い止めることができればの話だが。」


「俺・・・森に帰るよ。」


 唐突にリューイが言いだした。


 けっこう長い沈黙が続いた・・・。


「はあっ !? 」シャナイアとカイルがすっとんきょうな声を上げ、「なんて薄情者だ、お前はっ。」と、レッドも呆れ返っている。


 リューイは目をぱちくりさせた。

「は?違う、バカッ!仲間を連れて来るんだよ。人手がいるんだろ。」


「人じゃねえだろ、お前の仲間は。」と、レッド。


「化け物に戦えんなら、獣にだって戦えんだろ。」


「敵、味方関係なく食いあさるんじゃないだろうな。」

 ギルが口を挟んだ。


「俺の仲間はみんな分かってる。そんな化け物なら、俺たちとの区別だってつくはずだ。だから、俺が言えばあいつらはちゃんと理解できる。ただ・・・ギリギリまでは連れて来られない。あいつら腹が減っちまったら、俺がダメだって言っても・・・たぶん食っちまう。」


「・・・俺たちをか?」レッドは顔をしかめた。「やっぱり、お前のお友達の応援は遠慮する。」


「でも、そのギリギリの時を、あいつらならきっと知ることができる。そんな化け物が大勢でやってくれば、あいつらはそれに気付くことができるはずだ。」


「野性の勘か。」

 ギルは、しばらく黙って考えた。


 本来なら話にならないと叱りつけたくもなる発言だが、キースを知る限り決して使えないことはない・・・。それに、その勢力がどれほど膨れ上がってやってくるか分からないだけに、味方にできうるものならこの際何でもいいと思えてしまった。


「分かった。じゃあ、お前はその日が来るまでにお友達をよく言い聞かせて、しっかりしつけておいてくれ。」








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