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【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第3章  精霊石 〈 Ⅰ -邂逅編〉
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超自然の戦い

 

 「う・・・。」

 カイルは、砂地にがくりと手を付いた。


 「大丈夫か。」と、リューイがかたわらにきて、ひどく疲れている少年の肩に手を置いた。


 すると伝わって来たのはかすかな振動。ドクドクと震える体からは、傍目はためにも激しい動悸どうきまで感じられる。まるでひと晩中 重荷をかついで歩き続けたかのような、疲労感。今無理に立ち上がれば、ふらふらと倒れてしまうだろう。


 それでリューイは、少しでも楽にさせてやりたくて、正面から肩を支えてやった。そして、腰に下げている自分の水を与えた。しかしその時、顔をのぞいて嫌な予感を覚えた。


 カイルの目は、依然いぜんとして少しも気を抜いてなどいない。


 「やったのか?」


 息の上がったカイルは、のどからませながら答えた。


 「まだ・・・。」と。


 おぼつかない動きで背中を起こしたカイルは、リューイを見て、引きった笑みを浮かべた。


 「ごめん、前じゃなくて、後ろから僕を支えててくれる?」


 「ああけど・・・。」


 リューイの頭の中には、ききたいことがいくつもあった。相手はどこにいるとか、誰と戦っているのかとか、どうなったらこの勝負はつくのかとか・・・。だが、ひと言 喋らせるだけでも無駄に体力を使わせることになる・・・そう思い、何を問うこともなく言葉を飲み込んだのだった。


 カイルはまた、スッと右手を上げた。そして再び呪術の体勢に入ると、間もなく周りの砂がザッと動いて円陣を組んだ。砂は竜巻のように横に流れてぐるぐると四人を取り巻いていたが、綺麗な一定の円を描くと、それ以上迫ってくることはなかった。それでレッドもリューイも、それが、カイルが再び張った結界であることを理解した。


 たちまち、超自然の戦いが再開された。


 レッドとリューイは、敵が次に寄越してきたそれらを見て、ぎょっとした。何の精霊かと問うまでもない。紅蓮ぐれんの炎に囲まれているのだから! 砂が目の前でうず巻いているために視界は悪かったが、それは確かに見てとれた。むしろ気のせいだと思いたかった。 


 体力や意識をじわじわ奪っていく、陰湿いんしつな戦法がしかけられた。味方の砂の精霊たちも負けじと抵抗している。敵の炎は思うように追い詰められずに、燃えさかってはおとろえを繰り返す。


 今度のこの防壁は、ただやられるばかりではなかった。懸命に押し返しながら少しずつ輪を広げ、踏み消そうとしている。相手の威力に押されながらも、出たり引いたり、少しずつ。でなければ、防ぐだけでは、反撃しなければ、この窮地きゅうちは切り抜けられない。


 そうして、特に大きなことは何も起こらないまま、やや時間がたった。


 ただそのうち、レッドもリューイも、異様に熱さを肌身に感じるようになってきた。レッドはミーアのことが気になり、リューイはカイルが・・・。それで、二人共に最初の炎を見てからそうなるまでは、竜巻の向こうに目を向けることもなく、それぞれが気になるものをただひたすら見つめていたのである。しかし、次第に増していくこの熱気・・・さすがに状況を確かめずにはいられなくなった。二人は、顔を上げた。熱さを感じるということは、防御がもろくなったに違いない。


 すると案の定、いつの間にか遠くまで見渡せるようになっていた。この状況が、結界が弱くなっている証拠であることは、おのずと理解できる。


 そして、とたんに愕然がくぜんとなる。


 辺り一面、煌々《こうこう》と燃え盛る火の海だ!


 その理由に、二人は一目瞭然で気付いた。またしても空に鳥の形をした化け物がいて、しきりに羽をばたつかせては炎に拍車をかけている。


 その助力を受けてメラメラと躍動やくどうし、派手に火のを散らす敵の精霊群。一方、防御の精霊たちは、容赦ようしゃなく火の粉が降りかかるその度に喰いつぶされていき、迎え撃っていたものたちも、もはや反撃 かなわず弱り果てていた。








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