帰還 —— 光のもとへ
火山が活動を始める前兆なのか、また何か別の力が働いていたのか、先ほどまでの継続的な地震は治まったが、そのあいだ、時折どこかで上がる大きな物音が聞こえていた。その度に、崩れた岩の塊が通路を塞いだだろう。急いで逆戻りしている彼らの行く手にも、そんな場所はいくつもあった。そこで彼らは、悩むよりも先に通れる道を見つけだしてはそちらへ折れ、成り行きに身を任せていた。
すると突然、先頭にいたリューイが立ち止った。
胸の高さほどの岩壁に、ぽっかりと大きな穴が開いているのである。それは山崩れでできた穴などではなく、人工的に造られたもののようだった。リューイがそれをすぐに発見できたのも、その穴を隠すのに使われていたと思われる岩が、長く続いていた揺れのせいでか落下していたからだ。
アランでもよじ登れる高さにあるそこに、リューイはひょいと飛び上がって頭を突っ込んだ。というのは、トンネルのようになっているその入口は、立っては通れない幅と高さだからである。
リューイは手足を付いてそこをくぐり抜けた。中に入ってみると、ギリギリだが立つことができる。リューイは振り向いて、あの混乱の中でも灯りを忘れなかったエミリオからランタンを受け取り、先の様子を確かめるため奥へ入って行った。
それからずいぶん待って、無事なのかと心配になった頃、ようやくリューイが戻ってきた。
そして、「外と繋がってた。」との報告。
なるほど、隠し通路というわけか。
彼らは順番にその穴をくぐった。そうして、徐々《じょじょ》にまた狭くなっていくそこを抜けて、行き着いた場所は・・・。
なんと、この火山への入口がある岩山の麓だ。
そばには、リューイが蹴り飛ばしたと思われる、この穴を塞いでいたらしい岩が二つ三つ転がっていた。きちんと閉じて外から見れば、少し奥まっているそこは、ただの火山の一部にしか見えないようになっている。それに、上へ続く高い階段や、神殿 仕立てになっている入口前の様相にまず目がいくので、それを計算に入れてのことか この抜け道に、誰も気づかなかったのも無理はない。
これについても絶対に説明があったはずだと、レッドにはますます思われてならなかった。
何はともあれ、誰一人欠けることなく明るい光のもとへ帰還を果たした。
当初は財宝を探し当てることが目的でいたアランも、それらがもう火山に埋もれてしまったとしても、諦めることができた。それ以上に価値のある、思わぬ宝に出会えたのだから。
終わった・・・とばかりに、一行は笑顔を交し合う。
火山に突入した時の真っ青な空や白い雲が、今は綺麗な夕焼け色に変わっている。船を下りたのは朝。当然、誰もが空腹を感じていたが、ここでリューイの胃袋は堂々と悲鳴を上げだした。
子供のように「腹が減った。」と連発しているリューイのそばで、カイルは自分のことのように恥ずかしいと顔を赤くし、レッドやギルはいつものように呆れ顔を向け、エミリオとアランは思わず笑い声を漏らした。
そうして、すぐにディオマルク王子との待ち合わせ場所へ向かうことにした一行。今度は、エミリオとギルの誘導で海岸の方へと足を向けた。
ところが、急にエミリオが立ち止った。ほぼ同時にギルも足を止めた。それに、レッドとリューイ。この四人は、殺伐とした気配というものに、特に敏感だ。さらには、火山神殿の前でも見せた警戒態勢に、サッと切り替わっていた。にわかに動きを止めたかと思うと、また険しくなった顔をそろえている。




