表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
第12章  アルザスの宝剣  〈 Ⅸ〉  
432/587

巨石回避


「おいレッド、見ろ!」


 階段を駆け上がっている途中とちゅう、リューイが地響じひびきに気づいて上を指差した。


 レッドは、追いかけてくる敵の方へ体を向けたばかりだったが、その声に振り向いたとたん、ぎょっとなった。


「なんだっ⁉」


 巨大な岩石が、今にも上から転がり落ちてくる・・・!それも、一つや二つではない。だが、すでに階段の中腹より上にいるため、巨石のスピードに負けずに下まで戻れそうには到底とうていなかった。かといって、もうずいぶんふもとからは高い所に来ていたので、横から飛び降りようものなら、どちらにしろ生きてはいられないだろう。


 レッドがいる踊り場まで戻ったリューイは、足場の奥にひとまず槍を押し込むと、横の手摺てすりに飛び乗った。


 追ってきた敵の方は血相を変え、一目散いちもくさんに逆戻りしていく。


「レッド、つかまれ!」と、リューイは片手を伸ばした。


 逃げ場はない。だがとにかく、レッドは言われた通りにした。


 するとリューイは、レッドの体をぐいっと外へ引っ張り出すや、自身もそこから身を投げたのである。なんと、互いにつかみ合った手首を命綱いのちづなにして。リューイはためらいもなく、階段の外側にぶら下がったのだ。


 驚く間もなく振り落とされたレッドは、おかげでその瞬間、胃袋が浮き上がるような感覚と胸の悪さを覚えた。


 巨大な岩石は、みるみる勢いを増しながら階段を転がり落ちてきて、二人の目の前をいくつも通過していった。


「リューイ、大丈夫か。」


 レッドは不安そうな声をかけた。なにしろリューイは、男二人分の体重を片手ひとつで支えているのだから。


「ああ、今引き上げるからな。」


 化け物じみた力をふるい起こして、リューイは、レッドの手が手摺りの上に届くところまで持ち上げてやった。そこに両手をかけられさえすれば、レッドも、あとはなんなくい上がることができる。


 二人は、再び踊り場に立った。見ると、下はあわれな惨状さんじょうとなっていた。逃げ遅れた敵が、苦しそうにうめき声を上げている。立ち上がることすらかなわない重傷者ばかりのようだ。


 気の毒に・・・と首を振りながらも、長槍を拾い上げたリューイは、さっさと背中を向けた。レッドもそれに続く。さあ早く、今のうちに仲間のもとへ行かなければ。




 その恐ろしい物音は消えたが、誰もが動きだす気力も無く、青ざめた顔でその場にたたずんでいた。エミリオとアランは、入口をふさいでいる石のドアにもたれたままでいる。


 すると突然、二人は背中に振動しんどうを感じた。


 驚いた二人はあわてて横へずれた。


 どういう仕組みか、固く閉ざされていたはずのそれが、徐々《じょじょ》に開かれていくのである。


 ギルもその様子に目を向けた。


 油断ゆだんさせておいて狡猾こうかつな罠を仕掛け、それを分からせたうえで入口を解放。これは挑発されてるのか。さすがにひるみもするし、ゾッとなる・・・が、今はそれどころではない心境だった。


 先に行ってくれ・・・と言われ、ギルは、どうにか追いついてこいと返した。だが・・・あの巨石をまともに受けていたら・・・。二人の安否を確認しに行くには、かなり勇気がいる。もし無事でない姿を見たら、そのあと財宝を探しに行く気になど、とてもなれないだろう。それでは、モルドドゥーロ大公国は救われない。二人が必ず追いついてくると信じて、冷静を保ち前へ進み続けるべきか。


 そう葛藤かっとうしていると、アランの歓声かんせいが上がった。


「みなさん、あれを!」と。


 すると、五体満足で颯爽さっそうと階段を駆け上がってきたレッドとリューイの姿が見えた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ