上陸、タナイス島
どこかで流れ落ちている滝の轟音が、自然のままに、自由 気儘に生い茂っている樹海に響き渡っていた。
タナイス島に上陸した一行は、すぐに島の中心部にあるイドラキア火山へ向かった。ただし、調子よく・・・というわけにはいかない。そんな鬱蒼たる、伸び放題に育ちに育った草木に奮闘しながら、どうにか掻き分けて突き進むのである。
ギルやレッドは、そのうっとうしさにすっかり参っていたが、彼らを煩わせている理由はそれだけではなかった。
先頭と、最後を歩く二人の子供だ。
その一人リューイはというと、懐かしさのあまりか、放っておいたらどんどん遠くへ行ってしまいそうな足取りで、後ろを気にする様子も無く楽しそうにさきさき進む。逆にカイルは、しょっちゅう突然しゃがみ込んでは、ほかの者には雑草にしか見えない草花(薬草)を嬉しそうに眺める始末。
そのため、ギルとレッドは、リューイには止まるように、カイルにはさっさと歩くよう、交互に言わなければならなかった。
「カイル、もうそのくらいにして早く来い。本来の目的が違ってるだろ。」
レッドが振り返って言った。やれやれと言わんばかりに。
一方、やや先の方では、ギルに呼び止められたリューイが、物欲しそうな顔をのけ反らせていた。その視線の先には、よく熟れてたわわに実った果実がぶら下がっている。
「果物の恵みも凄いな。誰も手をつけてないから、生り放題だ。」
「これらを上手くすれば、宝が無くとも経済効果は得られるだろうがな。」
ギルが言った。
「しかし、呪われていると言われる真相を究明して解決しなければ、この恵みには近づけないしね。」
エミリオが悲哀めいた口調で続けた。
「そういうことなんだよな・・・。」と、ギルもため息。
次の瞬間、その表情がサッと変わった。
ギルが横目に左手を睨みつけた時には、エミリオやレッドもすでに気づいている。
リューイは背をそらすようにして一歩下がっていたが、それは身についた超人的な感覚によるもので、ほとんど無意識だ。
何かが、すぐ胸の上をかすめ過ぎた。
カッ・・・!
リューイが驚いて見ると、そばのヤシの木に細い矢が突き刺さっている・・・!
「何なんだっ。」
「伏せろ!」
レッドが怒鳴った。




