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【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
第12章  アルザスの宝剣  〈 Ⅸ〉  
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密偵からの報告


 メサロバキアの王城では、国王ジェイコフが、まんまと情報を入手することに成功していた。


 ジェイコフは、一度は腹も立つ報告を聞かされた同じ部屋で、同じ椅子に座りながら、今回は初めから不気味な愉悦ゆえつの笑みを浮かべている。


「なるほど、財宝のありかを示す壺とな。」

「その中には、恐らく例の剣も・・・。」

 側近そっきんが、王のやや斜め後ろからささやきかけた。

「あの島にそんな財宝が・・・。」と、ジェイコフは何やら陰謀いんぼうめいた声。


 王の前にうやうやしく片膝を付いている、見た目だけはおとなしそうな顔のその男が、しばらくこの国を離れてしていたことといえば、モルドドゥーロ大公国の城に上手く忍び込んで、誠実な家来を気取ることだった。男は、そのための知識や、小道具も使いこなせる技術にもけた、かなり腕のいい密偵みっていである。


「はい、しかし帆船はんせんを持っていないらしく悩んでおりました。それを手に入れるのに時間がかかるかと・・・。」


 男は、わざと微妙びみょうに事実とは異なる報告をした。その時、彼らはそれについて当てがあるような話をしていたが、男には全く奇妙で信じられず、確信が持てなかったからだ。あやまった情報を伝えて無駄に混乱させてしまうと、責任を問われ罰を受けることになってしまう。


 一方これを聞くと、ジェイコフは盛大な笑い声を上げた。

「無理もない。形だけでも国を残したいなら、家宝まで全て差し出せと命じてやったからな。よし、それでは海賊かいぞくよそおって、そのお宝とやらを頂戴ちょうだいしに参るとしようぞ。あざむいた慰謝料いしゃりょうだわい。」


 思わず立ち上がったジェイコフは、欲望に駆られて、もういろいろと愉快ゆかいな想像をふくらませていた。だが、そんな楽しそうな王に、密偵の男は続いて不吉な報告をしなければならなかった。


「王陛下、ただ気になることが・・・そこを彼らは、呪われた島・・・と。」 


 すっかり良い気分でいたところに水を差されて、ジェイコフは顔をしかめる。

「なに・・・うーむ・・・未知なる神々《こうごう》しい火山島タナイスだ・・・。ないがしろにはできぬ話だな。では、我らとしても対策を打たねばなるまい。」

 ジェイコフは、側近を横目に見て言った。

「適当な術使いを探して参れ。」


 側近はうやうやしく頭を垂れ、密偵の男も下がれと命じられて、二人はすみやかに退出した。


 ジェイコフは再び椅子に落ち着くと、ほかに誰もいなくなったその部屋で、ひとり怪しく微笑んだ。









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