表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
第12章  アルザスの宝剣  〈 Ⅸ〉  
412/587

大公の使い


 先ほどの廃屋はいおくからじゅうぶんに離れた所で、後ろを振り返ったレッドは、大きなため息をついてカイルを見た。

「おい、さっきの約束、果たせると思って口走ったことか?」

「もちろん。さあ、皆でお城へ行こう。」

「誰かこいつを注意してくれ。」


「カイル、気持ちは分かるし、私だってそうしたい。だが、敷地しきち内へ入るだけでも容易よういなことではない。一般の者は普通、通してもらえないんだ。」

「門前払いだ。ダルアバスやステラティスの王宮に簡単に入れたから麻痺まひしてるんだろうが。」

 まずエミリオが丁寧ていねいに教えてやり、それに続いてギルが言った。


「この二人が言うと、さすがに説得力あるわね・・・。」と、シャナイア。


「それにしても、これまでの町の様子からも、そもそも全体的に何か問題があるように見えるが・・・。」


 難しい顔でそう言いだしたエミリオの視線だけが、不意に背後へ向けられた。

 同じく気づいた者たちが振り返ってみると、制服を着た三人の男性が近づいてくる。何か用があるようだ。


 やはりその三人組は、そのまま真っ直ぐに一行のもとへとやってきた。そして横一列に並んで丁寧に挨拶をしたあと、こう話しかけてきたのである。

「君たちは先ほど、あのギジルの人々に何やらいろいろと対応してくれたようだが・・・えっと・・・君かな、医者というのは。」


 カイルに向けられたその目には、どうにも拭いきれない疑念ぎねんの色がうかがえる。 


「はい。こう見えても。」


 確認しておきながら、男たちはやはり一瞬絶句したようだった。


 そしてその言葉から、彼らが例の大公城の者たちであること、さらに彼らが、恐らく子供たちから話を聞いて追いかけてきたことを、一行は理解した。それには納得できるものもあったのだろう。驚きながらも、彼らはすみやかに話を続けたのである。


「そうか。で、代金は。」

「患者からはいただかない主義なんです。薬は基本的に自分で調達、調合するから、そのほとんどはもともとただだし。」


 この返事に、男たちは顔を見合った。

 そして一人が、「ちょっと失礼・・・。」と言ったあと、そろって背中を向けたかと思うと、一行の見ている前で何やら相談を始めたのである。

 その密やかな声は聞き取れないし、ただ待たされているだけの彼らだったので、そのうちリューイの口からは大あくびが一つ出た。


 やがて話し合いが済んだ男たちは、また横に並んで一行に向き直った。

 代表して話をするのは、ずっと真ん中の男である。

「待たせて申し訳ない。なるほど・・・では、ギジルの人々のために、ぜひとも君たちの協力を得たいが、まずは大公閣下の代理人に会ってはいただけないだろうか。」


 これは好都合こうつごうとばかりに、シャナイアが両手を打ち合わせた。

「あら、苦労せずに済んだわね。」






 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ