表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第10章  恋敵誘拐事件 〈Ⅶ〉  
383/587

咄嗟に・・・


「マズい・・・。」


 そうつぶやいたレッドは、ランプをライカに押し付けた。持ってろと言わんばかりに。


 次の瞬間、一人がすっとんきょうな声を上げた。


「王・・・⁉」


 レッドはこぶしを突き出した。リューイの豪腕ごうわんも、もう別の男のはらに叩き込まれている。


「アリ・・・⁉」

 グッ!

「お・・・⁉」

 ガッ!

「ア・・・⁉」

 ドスッ!


 一人、二人、三人・・・気を失うように次々とパンチを食らわせていく。相手が驚き困惑しているそのすきに。


 そのあいだ、アリエルは自分のせいと分かって苦い顔をしながら肩をすくめ、ビアンカは両手で顔を覆いながらも指の隙間すきまからチラ見し、ライカは口を開けっ放しで見物していた。


「なんか・・・さっきから必要以上にケガにんを出してるような・・・。」と、リューイ。


「俺たちだけの方が、ずっと平和的だったかもな。」


 二人は肩を並べ、足元に向かって申し訳なさそうに両手を合わせた。すまん・・・恨むならアリエル様を。


 と、その時。


「ア・・・アリエル様ですの?」


 背後からかすかな声が。


「しまった、ビアンカ・・・。」

 レッドはあわてて視線を向ける。


 困惑している様子のビアンカが、アリエルのことをしげしげと見つめている。


「え、あの、わたくし・・・。」


 一方のアリエルは、その目を見つめ返してあせるばかりだ。


 そしてもう一人、ライカはというと、かたわらで不可解そうに首をかしげている。


「アリエル・・・様?」


 このどうしようもない展開に、レッドもリューイも、もはや誤魔化ごまかすことを考えるのも面倒めんどうになってしまった。


 ところが。


「まあ!」


 ビアンカ王女が両手を口に当てて歓声をあげたのだ。


「ライカ様、こちらビザルワーレ王国の王女様ですわ!ビアンカのあこがれの姫様ですのよ。アリエル様が助けてくださるなんて、ビアンカ感激ですわ。」


 レッドとリューイは声もなく一緒に口を開けた。いや、これは・・・まだ・・・完全にはバレていない・・・!


 急遽、シナリオ変更だ。さあ、どうする?と思い、アリエル王女に視線を送れば、王女はドギマギしながら目を泳がせている。


「あの、ビアンカ王女・・・様。・・・無事で何より・・・ですわ。」


 ライカはというと、そんなアリエル王女にうやうやしくお辞儀じぎ


「これはビザルワーレ王国王女殿下、お目にかかれて光栄でございます。でも・・・なぜこのような場所に・・・? それに、レッドとリューイはいったい・・・。」


「こ、この方々は・・・!」


 アリエルが何かひらめいた様子。


「よ、用心棒でございますのっ。」


 レッドもリューイもそのおだやかな爆弾(むすめ)に注目した。え・・・いや、まあ・・・さっきまでな・・・!


「実はわたくしの用心棒をしてましたのよ。お二人共とてもたよりになるので、お二人の話を聞いて、わたくし密かに捜索そうさくさせてましたの。ほんとに・・・よかったですわ。」


 なんか、いろいろギリギリだよ・・・。


「俺でもヘンだと思うぞ、こんなの。」と、リューイはひじでレッドをこついた。


「もともとの設定を無理やりつらぬいたな・・・こうなったらもう合わせるしかないだろ。」


 何はともあれ、修正完了。いろいろ不自然だが、とにかく狂わせてはならないことが一つ、これさえ守れれば何とかなる!


 レッドは急に態度を改め、アリエル王女のそばにひざまずいた。


「王女殿下、お二人に一言ひとことお願い申し上げておいた方が。このことは・・・。」


 レッドにそううながされて、アリエルも気付いた。一番大事なことだった。これをよくよく言い聞かせておかなければ、密かに助け出す意味が無くなってしまう。


 アリエルは、あわてて言葉を続けた。

「そうでした。このことはわたくしの独断によるものですので、陛下へいかには内緒にしてくださいましね。」


「なんと恐れ多い。分かりました。王女様、ありがとうございます。」

 そう答えて、ライカはビアンカと目を見合い、うなずき合った。


 独断で・・・か。結局は素直に伝えたな。冷や汗をぬぐってレッドは再び歩きだした。


「さあ、参りましょう。」

 







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ