表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第10章  恋敵誘拐事件 〈Ⅶ〉  
367/587

事件の裏


 ステラティス王国に戻ったレッドは、早速さっそくあったことを仲間たちに話した。そして、身代金の受け渡しについては、ミハイルに聞いたところ〝次の連絡を待て〟ということだった。


「確かににおうな。」

 ギルは腕を組んだ。


「怪しいわね。」と、シャナイア。


「だいたい、盗賊とかその手の悪党なんて、普通そんなに待たないよ。」

 カイルが言った。


「向こうも、いろいろと時間が必要なんだろう。三つの国がからんでるから、その移動や連絡を取り合う時間もいるだろうし、すぐに居所いどころが分かったりなんかしても疑わしいからな。いかにも苦労して、命賭けましたってふりをするんだろうよ。」

 レッドも呆れ顔でそう続けた。


「もし私たちの憶測おくそく通りなら、数々の疑問も納得できるが・・・。」

 信じられないというように、エミリオもまゆをひそめている。


「ああ。二人共かっさらうつもりで、ずっと機会をうかがってたんだな。王女が一人でステラティス王国をおとずれるのを知るなんて、顔見知りなら容易たやすいものだったんだろう」


「二人で出掛けることがあれば、それを襲うつもりで、門の近くで張り込んでいた。だが、護衛をも襲撃する覚悟で・・・だろうか。」と、ギルのあとにエミリオ。


「その役には、一時的に傭兵ようへいを使ったかもな。そういうバカな話に乗るはみ出し者も、中にはいるからな。」

 もしそうなら傭兵の恥だ、と言わんばかりにレッドが言った。卑怯ひきょうを嫌い、正々堂々を重んじると信じられているその品格まで下がる。


「奴らにとっちゃあ、あんなふうに二人が登場するなんて、予想外の展開だったんだろう。カイルとビアンカ王女が無断外出したことは、知らなかったようだからな。」と、ギル。


「俺たちといた時、そんな気配なかったからなあ。」と、リューイ。


「そういえば、カイルあなた、どこからどうやって抜け出したの?」

 

「庭園の奥の小さな門が開いてた。すぐ外とつながってたよ。」


「ライカが開けっ放しにしたのを、そのままにしてたんだな・・・無用心な。」

 ギルが言った。


「リューイやカイルが関わって、おかしなことになっていったせいで、ライカの逃走経路のことなんてすっかり忘れてたんだろうな。」

 レッドもそう付け加えた。


「ねえ、それで、これからどうするの? 助けに行くんでしょ? 王子と王女は、ビザルワーレのお城にでも監禁されてるのかしら。」


「バカ。ライカたちには、本当にその手の悪党にさらわれたって意識を持たせないと、すぐにバレちまうだろうが。だからたぶん、本当にそれらしく、いろいろとったことしてるんじゃないか。傭兵を誘拐犯に変装させたり、人気ひとけのない場所にある古小屋に閉じ込めたり。」

 レッドが答えた。


「確かめてみるかい。」と、エミリオ。


「もしそうなら、ビザルワーレの王宮に忍び込んで、情報収集をしないと探しようがないな。王宮とは関係のない所で動いているにせよ、それについての秘密会議はそこで行われるだろう。外に漏れるとマズイ話だろうからな。その会議の部屋なら、家来にまぎれてさぐれば見当がつくだろう。怪しい人物の出入りも期待できる。どちらにせよ、今、手っ取り早くできることといえば、それくらいだ。」


「私、引き受けてもいいわよ。」

 ギルの提案に、シャナイアが名乗り出た。


「悪いな・・・。実は、君が一番適任だと思った。」


「一番紛れやすくて行動しやすいといえば、召使いですものね。演技は得意よ。」


「無茶するな。」と、ギル。

「ヘマするな。」と、レッド。


 シャナイアは眉間みけん縦皺たてじわを刻んでいる。

「・・・殺されたいの?」


 それをかわすように、もう窓辺まどべへ移動していたレッドは、きょろきょろと外を見下ろしていた。


「なあ、ミーアを知らないか。あいつ、まさか主宮殿の方へ勝手に行ってやしないだろうな。」


「この宿舎の裏庭で、友達と遊んでいるよ。」

 エミリオが答えた。


「友達?」


「ああ同い年の。ほら、貝殻かいがらの女の子だよ。」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ