表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第8章  初恋 〈 Ⅴ〉
293/587

リューイとメイリン


今日もまたリューイの様子を見守るため、ゆるやかな清流のほとりへとやってきたレッドは、それを見た時、ハッと息を呑みこんだ。


「おい・・・おいっ、おいおいおいっ!」


 あわててきびすを返したレッドは、あとから悠長ゆうちょうに付いて来ていたギルの腕を引っつかむなり、乱暴に引っ張りまくる。


「いてて、何をそんなにあせってるんだ。」

「焦りもするぜっ、見てみろ。」


 言われるままにギルがしげみからそっとのぞいてみれば、目に飛び込んできたのは、リューイと、そしてリューイを助けた少女が抱き合って一緒に寝ころんでいるほほ笑ましい姿。植物のつる螺旋らせん状にからまる木の下にいる。そこで彼女はリューイの胸にほおをぴったりと付けて目を閉じ、リューイも彼女の背中を抱きしめて、涼しい風が吹き過ぎていく中、二人は幸せそうにまどろんでいるのである。


「へえ・・・驚いたな。」


「なにを感心したような声出してんだ。ますます連れ戻しにくくなったじゃねえか。すっかり仲良しを通り越して、もうまるで恋人同士だ。」


「これはこれで祝ってやりたいくらいだがな、俺としては。」


「いつまでも気楽なこと言ってんじゃねえぞ。」


 二人がやぶに隠れてただ見守っていると、低く垂れこめた空から雨粒がぱらぱらと落ちてきた。


 ギルは反射的に空を見上げた。すると急に雨脚が強くなってきたので、今日のところはすぐに戻ることに。


 一方、リューイとメイリンがいる場所は大木の枝葉えだはがしっかりと傘になってくれているが、雨音で不意に気付いた二人もあわてたように起き上がっていた。そして、リューイが素早くシャツを脱いで、彼女の頭にサッとかぶせてやるのが見えた。彼女を思う気持ちが自然とそうさせたのだろう。二人はそのまま慣れたふうに寄り添いながら帰って行く。


 その場を離れる前に、ギルはもう一度振り返った。去っていくリューイの後ろ姿は、まさに恋人が濡れないように気遣う大人の紳士のようだ。自分の知らない誰かのよう・・・すると突然、子供と変わらない振る舞いばかりするリューイが目に浮かんだ。妙な喪失感が、正直、少し胸にこたえた。


 ギルは、先に立って歩きだしたレッドの後ろで、知らずと寂しそうな笑みを浮かべていた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ