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【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第7章  ガザンベルクの妖術師 〈 Ⅳ〉
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シーナを探して



 屋敷の中にはおぞましい気配が散り散りに感じられ、所々で大きな物音や破壊音もあがっている。何頭もいる魔物は一緒には行動せず、それぞれが思い思いに動いているらしい。


 焦燥しょうそうに駆られながらも、リューイは黙ってキースに付いて行く。キースは、その期待に応えようと懸命にシーナの匂いを探すが、彼女の匂いはそこらじゅうにあり、焚かれているこうかおりも邪魔をして簡単にはいかなかった。


「シーナ、シーナ!」


 そこでリューイが大声を上げると、案の定、魔物がぞろぞろと現れて前後をふさがれた。


 リューイは舌打ちし、すぐ横のドアを開けて部屋の中へ逃げ込んだ。すぐさま鍵をかけ、窓から身を乗り出して下の階をのぞき、人の気配がありそうな部屋はないかと目を凝らしてみる。


「シーナ!」


「リューイ・・・。」

 シーナは彼の声を窓の外で聞いた。


 目を覚ましたシーナは、たちまちこの異常事態に気付いて書斎の鍵をかけたが、それらはすぐにやってきて、ドアをやぶろうと体当たりを繰り返し始めたのである。ドアは悲鳴を上げてさかんにきしみ、シーナは見つかりたくないと思うあまり、窓を乗り越えていた。足がやっと置けるほどの外の出っ張りに足をかけ、ぎりぎり窓の縁につかまって、そうして外壁がいへきの陰に隠れながらじっとしていたのである。


 彼の声はすぐ下の階から聞こえてきたが、身動きできないシーナはそちらに首を向けることもできずに、ただやっとの思いで叫び返した。


「リューイ!」


 リューイは反射的に顔をあげて上を見た。そして、シーナを見つけた。シーナは一つ上の階の、二つ隣の部屋の外壁にしがみついている。


「シーナ、今行く。」


 ひと言そう励まして、リューイも窓の外の出っ張りに降りた。そして、それを伝ってシーナのもとへ向かった。幸い彼女のところまで手を掛けられる箇所があり、肩の痛みにさえ耐えられれば、どうにかたどり着くことができそうだ。


 ところがその時、書斎のドアがついに破られた 一一!


 魔物の群れがワッとばかりに乱入してきて、その迫力に驚いたシーナの手がフッと窓枠まどわくから離れてしまった。


「きゃああっ!」


 リューイが見ている前で、シーナが背中から落ちてくる 一一 !


 とっさに足元をるリューイ。


 そしてシーナの体は、空中で大きく両手を広げたリューイの胸に飛び込んでいった。


 リューイはその時、シーナを受け止めることしか考えられなかった。それでも彼女の頭をしっかりと両腕で抱きこみ、自分の方が先に地面につくようにした。


 二人は一緒になって、魔物がうごめく闇の中へと落下していった。










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