表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第7章  ガザンベルクの妖術師 〈 Ⅳ〉
266/587

シーナがいない・・・!



 会場に集まった者はみな、すでに一階の窓ガラスがいくつかやぶられる音を聞いていた。使用人の女性は周りに目を向けられる余裕もなく、誰もかれもがおびえきった様子で身を寄せ合っている。


 そんな中、室内を速足はやあしでうろついていたリューイが、あわててロザリオのもとに駆けてくるなり言った。


「ロザリオ、シーナは・・・?」


 そう、リューイはシーナを探し回っていたのである。


 ロザリオはハッとして、部屋じゅうに視線を走らせた。大勢が集まったこの室内に・・・確かに、妹の姿が見当たらない・・・。


「シーナ、シーナがいない!」


 室内に衝撃と緊張が走った。


 誰もが、この中のどこかに当然いるものと思い、気にもしなかったが、言われてみれば・・・何たることか、どこにもいないではないか!


「シーナは⁉」

 ロザリオは世話役の娘に駆け寄って怒鳴どなった。


「お嬢様はお部屋にいらっしゃいませんでしたので、先にご避難されたとばかり・・・も、申し訳・・・。」 


 その娘は両手で口を押さえ、うずくまってしまった。


 侍女じじょは数名いる。ほかの者が先に誘導したのだと、勝手に思い込んだらしい。そして、ほかの侍女もみな。ロザリオは思わずその娘をとがめそうになったが、この恐怖と混乱の中にあっては、念のため探しに行くなどできなかったのも当然だろうと思い、口を閉じた。それに、彼女をめたところで、どうなるものでもない。


 とその時、この会場の出入口へいきなり駆け出した者が一人。


 リューイだ。


 すかさずキースも付いて行く。


「リューイ!」


「ルーヴェン卿、行ってはいけない!」エミリオがあわてて引き止めた。「彼に任せて。」


 その従わざるを得ない声に、とっさに付いて行こうとしたロザリオも我に返った。そうだ、無力な自分が行けば、さらに問題を増やすだけだ。


「なんてことだ。シーナ、どうか無事でいてくれ。」


「信じましょう、彼を。それに、私たちにも義務が・・・。」


 そう言われて、ロザリオは無理に冷静を取り戻した。


「ああ・・・みなを守らねば、済まない。」


「いえ、私も同じ気持ちです。」


 事実、エミリオ自身、すぐにでも追いかけて援護したかった。リューイは片腕を思うように使えないのである。しかし、ここにいる警備の者など戦える男たちは、初めて目にする常識外れの敵に対して、果たして驚きあわてることなく力を発揮できるだろうか・・・いや・・・。


 そう考えると、やはり、この場を離れるわけにはいかなかった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ