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【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第7章  ガザンベルクの妖術師 〈 Ⅳ〉
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ひょっとして・・・


「地下室、地下室・・・。」

 呪いの邪気に誘われて、カイルは下へ降りられる階段を探していた。


 魔物はときどき現れるが、幸運にも単独か少数で、ギルは不意に出くわすそれらだけを相手にすればよく、しかも剣を一閃いっせんさせるだけで済む手応えのないものばかり。


 そうするとギルは、少し前から疑問に思う余裕ができた。そもそも、それは以前にも感じたことであり、それが今回、確信に変わったのである。


 今なら問うてみることができそうだ。


「とりこみ中済まないが、一つきいてもいいか。」


「なに?」


「ひょっとして・・・リサでの一件(※1)は、あの石碑せきひの呪いを真っ先に解けば、済む話だったんじゃないか?」


 カイルがつんのめって、ピタッと立ち止まった。

 ギルもその数歩先で足を止めた。怪訝けげんそうに眉根まゆねを寄せて。


「なな、なんで⁉」


「なんでって、俺たちが今やろうとしていることで事足ことたりるなら、そういうことになるだろう。違うか? 」


「・・・そうです。」

 肩をすくめて、カイルはおずおずと答えた。


 ギルは呆気あっけにとられて、しばらく言葉が出てこなかった。


「いったい、どういうわけで あんなことになった(※1)。」


 長いため息をついてからギルがそう問うと、カイルは急に肩を落として、素直に答え始めた。


「僕はあの時、どっちもやらないといけないと思い込んでしまったんだ。呪いの浄化と、魔物退治の両方を、それぞれ。それでも、浄化を先にする予定だったんだけど、予想外のことが起こって、あれらが術空間をやぶって出てきちゃったから(※1)・・・つい、やっつけるのに夢中になって・・・結局、呪いを解くのが後回あとまわしになった・・・。浄化が成功すれば・・・同時に魔物も消えていなくなるなんて。」


「つまり、お前がやらかした失敗は、結局のところ、わざわざ難しく考えちまったことか?経験不足から。」


「・・・も一つ言うと、魔物の姿がなるべく見えないようにしたこと。そのせいで僕が呼んだ闇が暴走して、結果的にあんな手に負えない事態に・・・(※1)。」


 それは恐らく、防壁を作っていた自分たち、さらには、見物していた村人たちへの配慮だったのだろうと、ギルにも察することはできた。それに考えは間違っていたが、手順としては合っていた。事故が起こったのは不運だったとも言える。が、あの時正しい知識があったなら、もっと上手くすることが、負傷者も出さずに済んだかもしれない。さらには、最初に自分たちが味わった恐怖も無意味だったのか・・・?


「お前・・・あいつらに知られたら殺されるぞ。」

「絶対、言わないで!」


「だが、それなら、ニルスでのあの怪物はどうするつもりだったんだ? きりもなく湧いて出てきてたんだぞ。どうしたら、あのやかたや地下迷路の洞窟どうくつじゅうから、全部しぼり出して皆殺しにできる(※2)。」


「あの時はやるしかなかったし、考えてる余裕も無かったから、とにかく元凶をやっつけて、ほかのことはそれから考えようと・・・余計なことは考えないようにしてたんだ・・・。」


「なるほど、賢明けんめいだな。」

 ギルは呆れたため息をついた。


 カイルは、ひどく肩を落としていた。

 リサの村での失敗が、この少年にとって痛烈な心の痛手いたでとなったことは、ギルにも悟ることはできている。あの日から(※1)。


「これで、お前は俺の言いなりだな。」

「ええっ⁉」

「冗談だ。開き直っていいぞ。お前はよくやってた。」


 カイルの背中をたたいて、ギルは「急ごう。」とうながした。






 ※1 『第5章 シオンの森の少女』― 「途切れた呪力~」

 ※2 『第6章 白亜の街の悲話』 ― 「妖魔の






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