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【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第7章  ガザンベルクの妖術師 〈 Ⅳ〉
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流浪の剣士と尋ね人



「ちょっ、ちょっと待ってくれ。俺たちが向かおうとしているのもその神殿なんだが、一つずつ聞かせてもらいたい。」と、ギルは彼らの話に割り込んだ。「テオ殿というのは・・・?」


 ロザリオは驚いたように二人を見たが、まずはこう答えた。

「テオ・グラントという名医だが。この町では評判の占い師でもあるご老人だ。」


「やっぱり、カイルのおじいさんだわ。」


 ギルとシャナイアはまた目を見合った。


「それじゃあ・・・カーフェイ殿って?」


「彼・・・彼は、世に名高いアイアンギルスの傭兵ようへい・・・だが。」


 アイアンギルス・・・。


 ギルの隣で同じようにロザリオの話を聞いていたカイザーは、この名に一瞬眉を動かし、つい反応したものの、この場では何も言わなかった。


「レッドのことね・・・。」と、シャナイア。


 二人は唖然あぜんと口を開けた。若様わかさまと呼ばれて護衛を連れていることから、貴族階級の者であるのは一目瞭然いちもくりょうぜんのこの青年の、テオはともかく、なぜレッドまでおたずね者となっているのかさっぱり分からない。


 やがてロザリオは、やはり何か関係がありそうな彼らに、なぜあの二人を必要としているかを説明し始めた。


 すると、その青年の話を聞いているうち、ギルとシャナイアはまたも仰天ぎょうてんすることに。


「リューイだわね・・・。」


「彼を知っているのか。」

 ロザリオは身を乗り出した。


「ああ、金髪碧眼きんぱつへきがんのハンサムなヒーローだろ。確かに、今日は二度も人助けをした。」 


「ど、どこにいるのだ、彼は。」


「神殿にいるわよ。」


「なんと・・・。でもなぜ。」


「彼は、この町の住人じゃあないよ。ちなみに、彼と待ち合わせをしていた友人というのは、俺たちのことだ。俺たちは旅をしているんだ。訳あって、今は神殿に世話になっているんでね。話せば長くなる。もう一つ言うと、レッドもその中にいた。」


「そうだ、私は一刻も早くレッドのところへ――。」

 ロザリオはサッと立ち上がった。


「どこへ行く気だい、君。」


 落ち着かない様子でロザリオが振り返る。

「以前、彼はヴィックトゥーンのとある店に滞在たいざいしていたのだ。だから—— 。」


 ギルがやれやれと思うと同時に、ロザリオもやっと気づいた。


「そうか、彼・・・」


「・・・も、神殿。」

 シャナイアがうなずいて、答えてあげた。


 ギルは腰を上げた。

「では、参りましょうか。」


 ギルがそううながすと、負傷した男にはもう一人がついて上手く支えてやっていたので、ギルはミーアの脇を抱え上げて肩車かたぐるまに乗せ、先導して歩きだした。


「エルファラム帝国の第一皇子は知っているかい。」


 カイザーが隣に来て歩調を合わせると、ギルはきいた。 


「ああ。うわさで聞いただけだが。」

「そうか。」

「君は、見たことがあるのかい。」


 ギルは首をひねって、ミーアと目を見合う。

 ミーアはただ、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。


「いや。」

 やがて、ギルも答えた。

「俺も・・・噂で聞いただけだ。」









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