流浪の剣士と尋ね人
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。俺たちが向かおうとしているのもその神殿なんだが、一つずつ聞かせてもらいたい。」と、ギルは彼らの話に割り込んだ。「テオ殿というのは・・・?」
ロザリオは驚いたように二人を見たが、まずはこう答えた。
「テオ・グラントという名医だが。この町では評判の占い師でもあるご老人だ。」
「やっぱり、カイルのおじいさんだわ。」
ギルとシャナイアはまた目を見合った。
「それじゃあ・・・カーフェイ殿って?」
「彼・・・彼は、世に名高いアイアンギルスの傭兵・・・だが。」
アイアンギルス・・・。
ギルの隣で同じようにロザリオの話を聞いていたカイザーは、この名に一瞬眉を動かし、つい反応したものの、この場では何も言わなかった。
「レッドのことね・・・。」と、シャナイア。
二人は唖然と口を開けた。若様と呼ばれて護衛を連れていることから、貴族階級の者であるのは一目瞭然のこの青年の、テオはともかく、なぜレッドまでお尋ね者となっているのかさっぱり分からない。
やがてロザリオは、やはり何か関係がありそうな彼らに、なぜあの二人を必要としているかを説明し始めた。
すると、その青年の話を聞いているうち、ギルとシャナイアはまたも仰天することに。
「リューイだわね・・・。」
「彼を知っているのか。」
ロザリオは身を乗り出した。
「ああ、金髪碧眼のハンサムなヒーローだろ。確かに、今日は二度も人助けをした。」
「ど、どこにいるのだ、彼は。」
「神殿にいるわよ。」
「なんと・・・。でもなぜ。」
「彼は、この町の住人じゃあないよ。ちなみに、彼と待ち合わせをしていた友人というのは、俺たちのことだ。俺たちは旅をしているんだ。訳あって、今は神殿に世話になっているんでね。話せば長くなる。もう一つ言うと、レッドもその中にいた。」
「そうだ、私は一刻も早くレッドのところへ――。」
ロザリオはサッと立ち上がった。
「どこへ行く気だい、君。」
落ち着かない様子でロザリオが振り返る。
「以前、彼はヴィックトゥーンのとある店に滞在していたのだ。だから—— 。」
ギルがやれやれと思うと同時に、ロザリオもやっと気づいた。
「そうか、彼・・・」
「・・・も、神殿。」
シャナイアがうなずいて、答えてあげた。
ギルは腰を上げた。
「では、参りましょうか。」
ギルがそう促すと、負傷した男にはもう一人がついて上手く支えてやっていたので、ギルはミーアの脇を抱え上げて肩車に乗せ、先導して歩きだした。
「エルファラム帝国の第一皇子は知っているかい。」
カイザーが隣に来て歩調を合わせると、ギルはきいた。
「ああ。噂で聞いただけだが。」
「そうか。」
「君は、見たことがあるのかい。」
ギルは首をひねって、ミーアと目を見合う。
ミーアはただ、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「いや。」
やがて、ギルも答えた。
「俺も・・・噂で聞いただけだ。」




