イヴとの再会
アレックに手を引かれて、女性が出てきた。肩の下辺りで軽く内巻きになっている綺麗な蜂蜜色の髪とそして・・・ミナルシア神殿の修道服。
「イヴ・・・。」
レッドはそう呟いて、ゼノを肩から下ろした。
イヴはその場にたたずんだまま、呆然とこちらを見つめている。
「レッド・・・?」
やっとそう口にしたイヴは、もう一度、今度はその名を叫ぼうとしたが息が詰まって声が出ない。
イヴは、これが夢ではないことを祈りながら駆けだした。
そしてレッドは、胸に飛び込んできたイヴを抱きしめた。ただ抱き止めたのではなく、思わずとっさに、つい両腕を回して。
一方の少年たちはひやかしもせず、そんな二人を直視するのも気恥ずかしくて、そばでただニヤける顔を見合うばかりである。
レッドはそっとイヴを引き離して、その顔を見つめた。少し痩せたようにも思えた。輪郭は以前よりもほっそりとして、ますます綺麗に、そして少し大人の顔つきになった。
「元気・・・だった?」
レッドは恐る恐る口にした。
「ええ・・・大丈夫。」と、イヴは頬をゆるめて彼を見上げた。
抱きしめたその体はいっそう逞しくなったようにも思えたし、自信を取り戻して堂々とさだめに従い続けたのだと分かるその顔も、より精悍になったように見えて、イヴは少し寂しさを覚えた。けれど、瞳の奥の優しい煌めきは変わらないことに、ほっとした。イヴはもう一度彼の背中を抱きしめて、その温もりを確かめた。
ただレッドの方は、今度は抱きしめ返してやることもできずに、困惑していた。
「イヴ、どうして今ここに? 休みじゃないだろ、その恰好。」
「ええ、務めの途中よ。合間に立ち寄ったの。きっと神様が教えてくれたのね、ほんとに戻ってきてくれるなんて。夢じゃないわよね。」
「ああ、違うんだ、イヴ。実は ―― 。」
二人の頭上で、枝葉がガサッ! っと、大きな音をたてた。そうかと思うと、鳥でもリスでもないものが舞い降りてきて、ちょうどイヴの真横に降り立った。レッドは平然としていたが、イヴはぎょっとして肩を飛び上がらせ、よろめいたところをレッドに支えられた。
突然そこに現れたのは、見知らぬ金髪の青年・・・リューイである。
「へえ・・・この人かあ・・・。」
木の枝からいつもの調子でひょいと飛び降りたリューイは、レッドのそばにいる女性の顔をじろじろ眺めて、にんまりと笑った。
「よろしく、俺はリューイ。」
イヴは驚いただけでなく、この理解できない状況と、そして、その青年の気品ある端整な顔とは裏腹な態度にも戸惑った。
「え、あの・・・私は・・・。」
「イヴだろ。」
「いきなり失礼なうえ呼び捨てか。」
呆れてレッドは注意した。
「この方は?」
「いや、こいつじゃなくて、ああいや、こいつもそうなんだけど・・・。」
レッドは、来た道を振り返った。リューイだけでなく、やはり、ほかの仲間たちもみな結局ついてきている。
「とにかく、君に会わせたい人がいるんだ。ほら・・・あの人。」
促されるままにレッドの背後を見たイヴは・・・思わず愕然とした。そして、驚きのあまり絶句していると、頭の上からレッドの ―― 静かだがどこか切ない ―― 声がこう言った。
「君が待ってる・・・神々の中心だ。」




