表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】アルタクティス ~ 神の大陸 自覚なき英雄たちの総称 ~   作者: 月河未羽
【新装版】 第1章   失踪  〈 Ⅰ -邂逅編〉
15/587

明晰夢 2 ― 神々の中心人物



 すると、夢は上手い具合にちょうどさきの続きから始まって、またレッドを悩ませた。


 甘い記憶も楽しい思い出も多々ある。なのに、なぜまた・・・と、レッドは浅い眠りの中で苦悩する。認めたくはないが、彼女を傷つけたことが、何よりも印象的なものとなってしまったのか。


 そして流れる、そんな切ない夢の続き・・・。



〝ごめんなさい。あなたが意地悪言うから・・・。〟


 細い指先が、取りつくろうように彼の左頬をでた。 


 その手首を軽くつかんだレッドは、それから彼女の目をじっと見つめた。

 

〝無くなるんだろ・・・。〟


 レッドは、重苦しいため息をついて、悲しい声で言った。


〝無くなっちまうんだろ・・・その・・・男と・・・。〟


 彼女は、彼の気が変わってしまった最大の理由に、この時、ようやく気付いた。


〝いつ・・・知ったの。〟


 レッドは、それには答えなかった。そして代わりにこう言った。


〝誰かを好きになるなとは言わない。だが・・・ごめん、俺にはできない。〟


〝失っても構わないわ。〟


〝どうしても奪いたくないんだ。そばにいてやりたいし、いて欲しい。でも・・・そばにいれば俺はきっと・・・君に手を出す。怖くて仕方がない。〟


〝怖い・・・?〟


〝俺を救ってくれたその力を・・・人を救うことのできるその貴重な力を・・・奪っちまうかもしれないと考えるだけで怖いんだ。〟


 息詰まるような沈黙が続いた。


 だがその彼女には、実は、レッドに内緒にしていたことがもう一つあった。彼女は自分の能力のことと共に、それを隠しているのがずっと心苦しかった。彼とはこれで終わる・・・。そうだとしても、彼以外に自分の全てを捧げる気になどなれない彼女は、彼がもし戻って来てくれることがあるなら、もう全てを知ってもらったうえで待ちたいと思った。


 それで、彼女はやがて口を開いた。


〝レッド・・・私、実は・・・待っている人がいるの。〟と。


〝え・・・。〟


 思わぬそのセリフに意表を突かれて、レッドは唖然あぜん


〝は・・・!?〟


〝違うの、ある時いきなり勝手に決めつけられて・・・私が修道女の、言ってみればリーダーみたいな役に選ばれた時だったわ。そのあかしにこのペンダントをゆずり受けたんだけど・・・。〟


 彼女は、オレンジ色の宝石が光るそれをたくし上げて、レッドに見せた。


〝その時にエマカトラ(修道女の長という意味の称号)様が急に顔色を変えられて・・・そのあと、そんな話をされたの。〟


〝そんな話って?〟


〝時が来たら、ある人につき従うようにって。〟


〝ある人?誰・・・?〟


〝神々の中心人物。〟


〝・・・なんだって?〟


〝私にもよく理解できなくて。なんでも、アルタクティスがどうとか・・・時が来たら分かるとしか教えてもらえなかったの。〟


〝それって、この大陸の名前だろう?〟


〝いいえ、そうなんだけど、また違う意味があるみたいなの。とにかく、このペンダントを肌身離さずに持っていなさいって言われたのよ。あなたをむかえに来る人がきっといるからって。でも全く訳が分からないんだもの。だから真剣に考える気にもなれなくて・・・。〟


 レッドにとっても意味不明だったが、しばらくすると静かな声で言った。


〝・・・だったら尚更なおさらだ。君は、何か大きな使命を負っている。そんな気がする。俺には・・・遠い存在だ。〟








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ