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逆ハーエンドの守護神

開いて頂きありがとうございます!

キャラブレのため微修正です。

//*** 3 ***//

「貴方が私の召喚者ですの?」

 アリシアは小さく、はいと答えて俯いた。


「エレンですわ」

 そう言って、腕を組み、アリシアを睨みつけながら、エレンは溜息をついて促した。


「私の名前です、エレン=アーク。人に名乗らせるだけではなくて、貴方のお名前を伺ってもいいかしら?」


「あ、あの。私はアリシア=ジャルド……です」

 ジャルド、という言葉を聞いて、エレンは驚きの表情を一瞬張り付けた。

 その事にアリシアが尋ねると、何でもないわ、とエレンは首を振った。

「そう、貴方の事はアリシアって呼ぶわね。私の事はエレンと名前で呼んで頂戴」


 早口に自己紹介をすると、エレンはアリシアをじろじろと不躾な視線で見て、くすりと笑った。


「あの、何か?」

「……いいですわ、合格にしてあげる」

「え、え?」


 後ずさりするアリシアに、エレンは追い詰めるように顔を近付ける。

「召喚した人は召喚された人に身も心も捧げる、という事を知らないのかしら」

「し、知ってますけど……そのエレンは、女性……ですよね?」


「私は女の子が好きなだけです。もしかして男に見えるっていうのかしら?それは私に喧嘩を売ってるって事ですわよね?」


 喧嘩を売ってるの?と冷ややかな口調で聞かれ、アリシアはぶんぶんと首を横に振る。


「そう、敵対する気はないのね。それならこっちへきなさい。可愛がってあげますわ……。大丈夫、私は可愛らしい子は好きですの」

「え、エレン?あの、いったい何を」

 布団へ押し倒され、ぐるぐるとまわる考えにパンクしたのかアリシアはおかしな声をあげ、考える事を辞めた。

 後は声を抑えながら、エレンへと身を捧げるだけであった。

身を捧げると言ってもおさわり程度の物で、叔父の子にやられた時のような嫌悪感はなかった。


 二時間後、満足そうなエレンが服を着始める。エレンは真っ白で綺麗な肌をしており、アリシアは顔を赤らめる。

 柔らかく、ほっそりとした身体をしたエレン。本当に彼女が私の召喚者なのだろうか、とアリシアはじっとエレンを見つめた。

 アリシアと大差無い体格の彼女が、本当に勇者達を倒せるだけの力があるのだろうか。


 王家に伝わる召喚の話を何度も父から聞かされていたエレンは、過去の召喚の記録を思い出す。

 記録のどれもが、凄い話ばかりだった。


 五百年前、他国から攻められていた事に悩み呼び出されたのはドラゴンだった。

 そのドラゴンは、人語を解し、魔国を侵略しに来た全ての兵を一息で焼き尽くした。

 ジャルド国旗がドラゴンのマークなのは、その召喚による物だ。


 三百二十年前、国を豊かにしたいから、と呼び出されたのは聖女だった。

 聖女は、自らを転生者と名乗り、治水や政治、社会の仕組みを改革し、国を豊かにした。

 聖女を召喚した日は、今でも休息日として皆がお祈りを捧げていた。


 色々な面でジャルド国を救ってきた召喚術。

 アリシアは、お伽話のような、それぞれの記録を何度も読み返していた。


 そして、今。エレンと呼ばれる少女が、復讐のためにアリシアに呼ばれたのだ。

 一見、普通の令嬢だが、エレンはどのような能力を持っているのだろう。

 アリシアは幼い日に読んだ物語に重ね合わせるようにして、エレンへ向けて口を開いた。


「あの、エレンは私に召喚されたんですよね?そ、その……エレンの特技は何ですか?人型なので……剣とか、魔術とか?」

「私は、ただの悪役令嬢よ」


 アリシアは悪役令嬢という聞きなれない言葉に首を傾げる。


「ごめんなさい、エレン。私はその悪役令嬢というものがよく解らないです。その悪役令嬢って何なんです?」

「私は某乙女ゲームの悪役令嬢。何ができるかはそのうち解りますわよ」


 くすり、と綺麗な笑顔でエレンは微笑んだ。


 一方その頃の勇者達の国では……。


「聖女様!」

「マリア様!」

 ジャルド王を打ち取った五人が、聖女と呼ばれた人物の前に並んでいた。


「うん、それでどうだったの?」

「はい、あっさりと打ち取れました。これも聖女様の予言の力があってこそです


「そう、あそこの国はこの世界にとって脅威になる予定だったの。ありがとう、勇者様」

 そう言って聖女は笑う。

(うまくライバルキャラ潰しができたみたいね)


 マリアは前世の記憶持ちだった。

 そして、この世界が乙女ゲームだと言う事を知っている。


 マリアは、大好きなゲームのヒロインに転生している事に歓喜した。

 現代知識の内政チート、ゲーム知識の攻略チートにより、すぐ国で重要な地位に付けられた。

(このゲームはやはり、二作目ね。シャルル=ジャルドが攻略対象の王子じゃなくて王だもの)


 ヒロインは、前世でやりこんだゲームに思いを馳せる。


『魔王の鐘と守護の盾、鐘の続き』

 戦略シミュレーションRPGゲームの要素を持った乙女ゲームだ。

 内政でお金を増やし軍を編成し、強くして他国へ攻め入り世界を統一をする。

 攻略対象とイベントをこなしながら好感度を上げて行けば、有利に進められるようになる。


 二作目の攻略対象は、王子、勇者、槍使い、僧侶、魔術師。どれもタイプの違うキャラで、飽きがこない。ライバルキャラは魔国の姫、アリシア。魔国の姫で絶世の美貌を持っている。

 ほっとくとジャルド王、シャルルがこっちの国へ婚約を持ち掛け、王子がアリシアに一目ぼれしてくっついてしまう。

 序盤で内政、戦闘の万能カードである王子、という戦力を潰され、場合によっては出奔して魔国についてしまうのだ。

 マリアが逆ハーエンドのために、早期で潰したい国の一つだった。


(シャルル様に会えなかったのは残念だけど)

 マリアは一作目『魔王の鐘と守護の盾』の攻略対象、シャルルのファンでもあった。

 一目でも会いたいと思ったが、逆ハーのために、仕方なくジャルド国を潰すルートを選んだのだった。


 これが一作目だったら……とマリアは身震いした。

 

 ライバルキャラは、ベタベタな絵に描いたような悪役令嬢。


 ヒロインがアイテムをフルコンプし、仲間全員が完全ステータスで向かってもあっさりと打ち破るステータスと特殊能力。

 100万の兵士に強化をかけても、あっさりと1ターンで沈ませられる。

 本当にこいつはただの令嬢なのか?と掲示板は荒れた。

 『どうやって、こんなドレスのお嬢様が100万の兵士を潰すの?』

 『無理ゲーすぎるwww』

 『酷すぎる、バグじゃないの?』

 ゲームとしてなりたっていない訳ではない。

 本来なら、悪役令嬢と敵対しないように行動する事で、好感度二位のキャラとくっついて、勝手に退場してくれるのだ。

 逆に言えば、好感度二位のキャラが、攻略できなくなってしまう訳だ。


ゲーム会社の言い分はこうであった。

『逆ハーはけしからん。気に入ったキャラを落とす事が推奨。でも逆ハーも無い訳じゃないよ。でも逆ハーならこいつを超えていけ!』

この一言で、製品紹介ページはリアル乙女達のF5攻撃で暫く【Not Found】だった。


 好感度二位のキャラとくっつく時には、サポートキャラ(女性)を引き連れて、三人で消えていく。

 プレイヤーもゲームに慣れてサポートキャラの解説が終わり退場する時なのだが、そのあまりにも雑なイベントのおまとめ退場にユーザーは激怒した。


 そして、初めて動画付きで攻略情報が出た。

 逆ハースチル寸前までの動画についたたコメントは……


『各キャラ最低20回ずつパラメータ持ち越しで攻略……だと?』

『全てのアイテム、スキル、能力フルコンプしてるじゃん……』


 そして動画をあげた本人のコメントは……。

『バトルでは、スタン技【成功率十パーセント】を使い、十連続でスタンを成功させる。一度でも攻撃を喰らったらリセット推奨。これらの条件全部満たせばいけた。あ、でもスタン決まらないとこれでも楽に死ねるよ?(^-^;』


その攻略情報が出た時、マリアはDVDをたたき割り、即攻略情報掲示板にアップロードしてやった。


『逆ハーエンドの守護神が最強すぎる』

『逆ハーエンド見れねえよ、見てえよ……』

『攻略できない?ああ、敵に回したんだよね、それもうリセットしないと無理だから』


良かった、ここが二作目の世界で。

ゲームをもう辞めようかってくらい私のトラウマにもなったあの悪役令嬢……

【エレン=アーク】がいない世界で本当に良かった……。


 マリアは、胸を撫で下ろし、今日も攻略対象達を誘いイベントをこなすのであった。


アリシア「エレン、どうしたの?」

エレン「風邪かしら、くしゃみが出ますの……」

(馬鹿は風邪を、と古典的な事を言ったらどうやって虐めようかしら)

アリシア「……大変、お薬持ってくるね」

エレン「アリシアは本当に可愛いですわね。今夜は一緒に抱きあって眠りましょう」

ブックマークをしてくれた方、ありがとうございました!

読んで頂きありがとうございました!

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