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悪役令嬢召喚

開いて頂きありがとうございます。

//*** 2 ***//


「今まではあの馬鹿な兄……前王に甘やかされて育ったんだろうが……」

 叔父の元へと転移させられたアリシアに対して、叔父は冷たく当たった。

シャルル=ジャルドが生きているなら、大事に扱われた事だろう。最も、ジャルド王が生きているならば、預けられる事も無いのだろうが。


「どうするんだ、追い出……」

「息子とくっつければ、王位で誰も文句が……」


 隣国の勇者に殺された後、叔父は自らの子爵位と引き換えに魔国を属国とし調印した後、奴隷同然としてアリシアは扱われる様になる。

 ジャルド王だけではなく、国の重鎮達が勇者達の襲撃で殺されたのだ。当然といえば当然だろう。


 アリシアの養育を盾に、重鎮達の反対を押さえつける。

 息子とくっつけて完全に王位を手中に収める。

 そう計算していたアリシアの叔父は肩透かしを食らった。


 隣国が後ろ盾になっている魔国の王位は揺るがない。

 

 政略結婚染みた事で無理にアリシアとくっつける必要がなくなる。

 アリシアの使い道が完全に消えたのであった。


 兄、ジャルド王へのコンプレックスからか、利用する価値がなくなったアリシアに冷たくあたり、奴隷同然の扱いをさせるようになるまで、そう時間は必要無かった。

 

 五年の年月が流れた。十五歳になったアリシアは、美しい少女へと育っていた。


「ご主人様、お呼びびでしょうか」


 アリシアは、そこで叔父から叔父の子を女性慣れさせるための練習台、として役目を言いつけられる。

 属国とはいえ王子が、その持て余す欲を町へ求める訳にはいかない。アリシアであれば、元王女であり、品格にも容姿にも問題ないだろう、と。


 攻め込まれた敵国にすり寄り掴み取った王位。本物の王女は、奴隷同然の扱いを受けながら、簒奪者の息子の筆おろし相手に指名である。

 

 ようやく利用できる時が来た、とアリシアの叔父は満足そうだった。


 いくら王子とはいえ、未婚の高貴な女性を充てる事はない。


 叔父がアリシアに対して、『元王女』という敬意がなく。

 『兄の娘』という配慮すらなく。

 養ってやっている奴隷同然の存在だ、と軽く見ているかが解る。


 元王女のお姫様といっても、王女扱いは十歳まで。

物心が付いてから数えると、ほぼ同じくらいの年数を奴隷同然の扱いで過ごしてきたアリシアは、怯えながらも、はい、と返事する事しかできなかった。


「あの……」

「今日は練習だから、とりあえず女性の身体に慣れる事から始めたい」

 三歳程年下の叔父の子にねっとりとなでられ、愛の言葉も無いまま、初日は終わった。

 アリシアにとって幸運だったのは、最後まで行為が及ばなかった事である。


 求められた行為にアリシアは恥辱と嫌悪から何度も途中で嘔吐した。

「そんなに嫌なら、今日はもういい!」

 と殴りつけられはしたが、その痛みに見合うだけの価値はあったのだ。


 最後まで行けば、アリシアがこのような扱いから抜け出す機会は無くなって

いたのだから。


 年下の子に殴られ、罵倒されたアリシアは、申訳ありませんでしたと謝り、気持ち悪さから部屋に戻っても何度か嘔吐した後、部屋で泣いた。

 そして、今日はと言っていた事に気付く。


 明日は?

 明後日は?

 こんな事が毎日続くの……?


 アリシアの身体を余す所なく嘗め回した爬虫類のような叔父の子の事を考え

ただけでアリシアは怖気が走り、自分の身体を掻き抱いた。


「お父様……お父様……」


 優しかった父親の事を思い出す。

 五年の間に人口は減り、税は上がり、飢える人は増えた。

 中には子供達を奴隷として隣国へ売る人も居た。黒髪黒目の才能ある魔族の奴隷は、高値で取引されるようになり、国では浚われる子供も増えた。


 お父様が生きていれば、と。

 悪いニュースが流れるたびに、アリシアは心を痛めた。

「あの時、私が居なければ、お父様は凶刃を躱せたはず。私が居たから……。

これは、これは私の罪であり、私の罰なの……?」


『アリシアが使う必要は無いからね』

 そう言って優しく頭を撫でる父親を思い出した。

 使う、何を……?

 そこで、ふとアリシアは、王族のみに伝わる召喚術の存在を思い出した。

 


 成人前の王族の穢れ泣き乙女の女性限定で、自分の身も心も捧げる事を代償に使用できる魔術。

 王族、というカテゴリからはもう外れてしまっているが、アリシアはただ爬虫類のような目をした叔父の子に捧げるよりは、と、召喚術を行う事にした。


『私はジャルド国の王家に連なる少女、私の召喚に答えて……』

 アリシアの部屋に描かれた召喚陣が光を放つ。ここからは、召喚したい人のイメージを思い描けるかが大事だ。


 凄く強い人、という召喚よりも、誰にも受けきれない剣を振る人、という方が、より強くなる。

 具体的に、どのような事ができるかをイメージする事が大事なのだ。


 アリシアは、父親を生き返らせる事ができる人、という考えが浮かんだが、そんな事ができる人は居ないだろう。召喚は失敗して、普通に終わる。


『いいんだよ、私は。アリシアが幸せになれればいいんだ』


 そういう父親の言葉が浮かび、また悲しくなって涙が落ちそうになる。

 何を、何を召喚するか?

 そして、五年の間に奴隷として扱われてきた自分への原因に思いつき、大人しかったアリシアに復讐心が宿り始める。


『お父様を殺した勇者は許せない。国をこんなにした事も許せない。どうか、

国を立て直して、お父様を殺した奴らへ復讐できる力を持った存在を……』


 そして光が消えた後……

 やや釣り目がちな目をした

 整った美しい顔立ちをした

 金髪碧眼で縦ロールの、高貴そうな女性がそこに残っていた。

小説タイトルでネタばれしていますが、金髪碧眼縦ロールの女性を召喚しました。

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