職業?・・・死神!?2
俺、福見純太は、死神になった。死神と言っても、仕事みたいなもんでまぁ派遣に近い感じだ。
死にそうだったところを、死神の佐藤美晴に救われ。死神という仕事に就かされたが、死ぬよりましだった。
しかし病院を退院して、今日で2週間がたった。
季節は秋になろうとしてる。俺が入院してるうちに夏休みは終わったようだ。
佐藤美晴が言ったような、仕事は一切やっていない。たまに本当は、夢だったんじゃないかと思う。
しかし死神手帳は、まだ手元にある。佐藤美晴は、死が1か月以内の人がいると自動的に手帳に出ると言っていたが本当だろうか、今だ信じられない。
そもそも死神を仕事にしてる人が、他にもいることに。
俺は、今日から学校に復帰する。まぁ周りの人はそんなに気にはしないだろう、俺がいてもいなくても。
だが俺は違う一度死にかけた命だから学園生活を楽しもうと思う。
学校について教室に行くと、みんないつもの挨拶するていどだった。
何人かは心配をしてくれたが、一瞬の出来事だった。
だが俺にはみんなの本音がわかっている。
死神になった俺は、自分に向けられた本音を何でもわかるようになった。
しかしそれを気にしても仕方がない、俺は学園生活を楽しくするため考えて、まず部活に入ろうと思った。まぁ動くのは怠いから文化系の部活にしようと思う。
まぁ部活は放課後でも大丈夫だろう。今は授業だ遅れを取り戻さないといけない。先生たちは気を使ってくれたが授業が遅れることはない、俺は必死についていくため頑張った。
昼休みになり飯を食い落ち着いてると、いきなりカバンの中から音がなった。
俺はスマホをマナモードにするのを忘れたと思ったが教室中はやけに落ち着いてる。
こういう時はたいてい「誰のだよ」と騒ぐはずなのに。
俺はカバンの中を観た。そこには家に置いてきたはずの死神手帳があった。
「あれ…家に置いてきたのに」
俺が手に取ると音は止んだ。死神手帳は、人に見えないように音も聞こえないようだ。
俺が死帳を開くと、そこにある人の詳細が浮かび上がった。
俺は、仕事だとすぐにわかった。一応佐藤美晴からの依頼になってる。
まぁ上司みたいなもんだからわかるが、俺は一応詳細を観た。
『佐藤美晴より初仕事の詳細
対象者の名前は中野千代
歳は69才
身長156センチ
体重65キロ
誕生日10月27日
職業無職
住所は********
5年前最愛の夫に先立たれ今は一人暮らしをしている。
年に2回ほど娘が様子を見に来ていたが最近は来てないようだ。
死亡日時は今から1か月後、1週間以内に対象者に伝えること。
それと今回は初仕事として私が同行する。
放課後街の噴水広場の噴水前に来るよう。
詳細は以上だ』
これが詳細、俺は驚いた。
本当に死神になったんだと実感したからだ。
しかし自分が死を伝えるとはどんな感じだろうか。
俺は怒られるのではと正直怖かった。しかし引き受けたからにはやらなければ、
やらなければ俺が死んでしまう。
放課後の部活探しを諦め、授業が終わるとすぐに噴水広場に向かった。
噴水広場に着くと、そこには佐藤美晴がいた。
「遅いぞ…福見純太」
「すいません…清掃当番でして」
佐藤美晴はあの時と変わらない姿でそこにいた。
「なんだ人を…じろじろ見て…さては…エロいことを」
「違いますよ!…佐藤さんも普通に現実に生きてるんだと思って」
「生きていてはいけないか」
「そっそんなんことは」
「……まぁいい…ところで佐藤さんはやめてくれ一応同い年だし、美晴でいいわよ」
「そうなんですか…わかりました…じゃー俺も純太でいいですよ」
「わかった純太……ところでいきなりの仕事だが大丈夫か」
「えぇ大丈夫です」
「そうか…なら今から対象者のところに行こうか」
「今からですか!」
「そうだ!もし対象者にやり残したことがいっぱいあったら大変だろう、
予定を組まなきゃいけないし」
「そうかもですけど…心の準備がまだ」
「純太……死神になったなら、もっとしっかりしてくれないと困るぞ」
「すいません……」
「とりあえず…今日は私が教えるようにやればいい」
「わかりました」
俺は初仕事を心の準備ができないまま向かえた。
歩いて向かっているうちに、美晴にいろんなことを学んだ。
最初はどう言うのか、その後の対応など、注意することは取り乱さないこと、
いつも冷静でいることなどいろいろ。
伝えた後1か月間は対象者が望むことをできる程度にすること、
一番は1か月後にしっかり死んでもらうこと。
俺はこれから、人の死に触れ合うと思うと一言一句しっかりと頭に入った。
言われたことを頭の中で往復させた。
「着いたぞ…」
美晴が言った。そこには結構立派な一軒家があった。
心臓が速く動くそれもそのはずだ。いまから死を宣告するのだから。
俺は深呼吸する。心を落ち着かせる。
そして一呼吸おいて、インターホンを押した。
「はい…どちら様ですか」
俺は落ち着いて美晴に習ったように言った。
「あの私…死神と言う者なんですが、中野千代さんでよろしいですか、大事なお話があるので、少しお時間いいですかね」
「死神さん?……押し売りならお断りですけど」
「押し売りではないです。中野さんにお話があるので少しお邪魔してもいいでしゃうか」
「まぁ…少しならどうぞ」
「ありがとうございます」
(まるで外回りしてるサラリーマンだ、家に入る前に死神名乗ってるしな)
中野さんはすぐに玄関を開けてくれた。居間にとおされお茶を出してもらった。
美晴が言うには死を宣告する時が大変で相手が何するかわからないという。
俺は怖くて声が出なかった。
「でっ……なんのお話ですか」
中野さんが聞いてきた。俺は深呼吸をして話始めた。
「えー…中野千代さんあなたは今日から1か月後、つまり10月27日にお亡くなりになります。
私はあなたの死を素晴らしいものにするためのサポートをする死神の福見純太と言います」
「死ですか…それは本当ですか」
「はい…残念ですが本当のことです」
俺は怖かった。何をされるかわからないからだ。
「そうですか……やっと私にもお迎えが来たのね」
「驚かれないのですか」
俺はあまりにも普通だったので聞いてしまった。
「驚かないですよ…なんかそんな感じはしてたんです。もうすぐじゃないかと」
「そうですか……」
「ところで死神さん…サポートとは何をしてくれるのかしら」
「あぁ…えー…基本は中野さんが、人生を後悔しないようにやり残したことをやるのが基本ですね。
後は言いにくいのですが、中野さんが望んむ死に方をお選びいただいてサポートとさしてもらいます」
「そうなの……それは規則などあるの」
「基本はありませんが二点ほど、まずやり残したことはこちらができると判断したもの、
二つ目は10月27日まで死なないこと、以上を守ってもらえればいいです」
「そうなの…でも私はやり残したことは無いのよ」
「なんでもいいですよ。些細なことでも」
「そうね……そうだ…じゃーあなた私が亡くなるまで家にいてちょうだい」
「僕がですか…」
「そうよあなたが私の息子になるの」
「はー…それぐらいなら」
俺はまさかのことに驚いたが、きっと一人では寂しいのだろうと了承した。
「じゃー中野さん…」
「おばあちゃんでいいわよ」
「うっ……おっおばあちゃん」
「なんだい…純太」
「あー…そのーおばあちゃんは望む死に方はあるの?」
「そうだね…苦しまなければそれでいいよ」
「わかったよおばちゃん…しっかりお手伝いさせてもらいます」
「頼んだよ純太」
「…わかった…じゃー荷物を取りに一旦帰るね」
「あぁ…わかったよ」
家を出た俺はため息をついて言った。
「はぁぁ…マジか…美晴本当に俺ここに住むの」
「仕方ないだろう…それが依頼だからな」
「…わかったよ…でも苦しまないってどうすればいいの」
「簡単じゃないか!10月27日まで過ごせばいい、そうすれば
おそらく老衰するだろうよ」
「老衰か……なんかかわいそうだね中野さんは」
「なんでだ」
「だって誰も中野さんの最後を、見守ってくれないんだよ」
「だから純太…君がいるんだろう」
「…そうだね…俺頑張るは」
「頑張って…じゃー私は行くね……そうだ仕事が終わったら給料払うから、
頑張んなよ」
美晴は行ってしまった。俺は家に帰って親に話した。
もちろん死神の仕事のことは言ってない。
何とか知り合いの家に泊まると言って家を出た。
(仕事をするたびにこんなことが増えるのかな)
俺はこれからを考えながら歩いてると中野さんの家に着いた。
「おばあちゃん入るよ…」
「あぁー…純太おかえり」
「あぁ…ただいま」
(まるでドラマみたいだ!本当の親子じゃ何のに)
「どうしたの純太…」
「…んっ…何にもそれよりばあちゃん俺はなにすればいい」
「何もしなくていいのよ…ゆっくりしてなさい」
「あっあぁ…わかった」
千代さんは俺にいろんな話をしてくれた。おじいさんの話、娘の話、若いころの話など。
話を聞いてるうちに外も暗くなってきた。
「あらこんな時間…純太お腹空いたろう、すぐご飯にするね」
「…うんわかった…俺も手伝うよ」
俺はいつからか本当に息子になった感じがした。
千代さんと一緒に暮らして2週間がたった。
始めの方は、間違えて家に帰ろうとしたけど、今では千代さんの家は第二の実家のような感覚だった。
「ただいま…おばあちゃん」
「おかえり純太…学校どうだった」
「うん…俺ね…部活入ったんだ」
「そうかい…よかったね。いったい何をする部活なんだい」
「うーんとねぇ…文化部に入ったんだ。小説を書いたりするんだ」
「まぁいいわねーいつかばああちゃんにも見せてね」
「あぁいいよ」
普通の親子の会話。俺は楽しかった。こんな日々が続けばと思っていたが時間は待ってはくれなかった。
10月27日今日は千代さんの最後の日。
だが俺は死神の仕事のことを忘れていた。
「おばあちゃん行ってくるね学校」
「はい…行ってらしゃい」
いつものように家を出た。
そしていつもの学校生活を送り、放課後に部活に顔を出し帰宅した。
帰り道おばあちゃんへのお土産に、たい焼きを買った。
「おばあちゃんただいま…たい焼き買ってきたよ」
返事がない。
「おばあちゃん……」
俺は家に入ると倒れたおばあちゃんを見つけた。
「おばあちゃん!…しっかりしておばあちゃん」
「あぁ…純太」
「おばあちゃん!」
「とうとうこの日が来たんだね」
「この日…」
俺は死神であることを思い出した。すぐに日にちを確認する。
「10月27日…じゃーおばあちゃんまさか」
「そうだよ純太…今日が私の最後の日だよ」
「そんな…俺忘れてて……」
「いいんだよ純太…おかげで本当の親子みたいだった。楽しかったよ1か月間」
俺は涙がこぼれた。
「俺…でも…おばあちゃんに何もしてあげられてない」
「そんなことは無いよ…一人寂しく死ななくて済む。純太泣いてるのかい……
死神が死ぬ人間の前では泣いてはいけないよ。涙を観たら死ぬのが怖くなるだろう。
死神なら最後まで笑ってな」
「無理だよ…おばあちゃん…だって俺は何もしてないしそれに死神って言っても、ただの人だよ」
「そうかもしれないね…でもこれからいっぱいの死に寄り添う時、純太が泣いてたらこっちも死にずらいだろう…だから笑いなさい、辛くても」
「…わかったよ……」
俺は作り笑いをした。
「そう…それでいい…純太…ありがとう…いいえ死神さん…これで苦しまずに逝けるわ」
「おばあちゃん……」
「死神さん……私はあなたのおばあちゃんじゃないわよ」
俺は驚きと共に美晴に言われていたことを思い出した。
「いい…対象者が死を迎えるときはしっかりお見送りするの…じゃなきゃ魂が成仏できないから」
思い出し俺は死神に戻った。
「では中野千代さん…あなたは人生を全うしました。これからあなたは死にます。しかしその魂は苦しむことなく成仏することでしょう」
「えぇ…ありがとう死神さん…思い出を…ありがとう」
俺は涙を堪えて最後の言葉を言う
「それでは……中野千代様逝ってらしゃいませ」
千代さんは最後笑ってくれた。俺は泣くことしかできなかった。
泣くと同時にこれが死神という仕事なのだと実感した。
こうして俺の初仕事は終わった。
その後、千代さんが亡くなったことは、娘さんに伝えられ、きちんと埋葬された。
俺は美晴に会い、給料をもらったが、まるで人の命をお金みたいに扱うのが嫌だった。
「なぁ美晴…どうして今回俺は千代さんの心の声が聞こえなかったんだろうか」
「うーんそれはね…対象者に感情移入しすぎたからだね」
「そういうことか」
確かに俺は死神であることを忘れていた。
「いい…死神であることを忘れるってことは…殺せないってことなんだからね。
そしたら死ぬのは君だからね」
「あぁわかってるよ」
美晴に怒られ死神であることを再度自覚した。
でも俺はもう人の死に寄り添う時泣かないようにしようと思う。
俺より死ぬ人の方が泣きたいのだから。
そして次もきっと千代さんみたいに対象者に感謝されるような死神になろうと
俺は沈む夕焼けに誓った。