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日本国仙法第001条 RR法

 時は西暦21XX年。

日本は犯罪数世界一を記録した。

あらゆる人間が犯罪に走り、それによって生活が苦しくなった善良なる一般人が苦悩の末犯罪に走り、それによってまた犯罪に走る人間が増えるという悪循環。

もはや、法律も憲法も、警察すらも力を失った。

この流れを断ち切るため、日本政府は果てしない苦悩の議論の末に一つの決断を下す。

それは『日本国仙法第001条 RR法』。

憲法にも法律にも力がないのなら、として生まれたこの『日本国仙法』は、日本のかつての栄華を取り戻す為の最後の砦だった。

その記念すべき第001条として可決されたのがRR法。

このRR法は犯罪抑制の為だけに可決された法であるのだった。



                    ☆



   「14番!!15番!!出ろ!!!」


 看守の喧しい声が轟く。

RR法が可決して以来、牢屋に入る人間が圧倒的に増えた。

そして日本の人口が圧倒的に減った。

理由は明らかだ。

このRR法によって犯罪者の運命は二つしかなくなったのだから。

無罪放免か死刑、すなわち生か死のどちらかだ。


   「グズグズするなぁ!!!」


 本当に喧しいと思う。

俺は鞭で叩かれる前にさっさと牢から出る。

15番の牢にいた男も出てきた。

そして俺と男は狭い部屋に連れて行かれる。

牢よりも狭く、小さな机が一つあり、その両側に椅子があるだけの部屋だ。


   「座れ。」


 看守が命令した。

俺は言われなくとも、とばかりに椅子に座る。

相手も座った。

今から何をやらされるのかわからない。

ただ、この部屋から出てくるのは毎回一人だけなのだ。

そして、この部屋から出た人間は無罪放免となる。

どうせ、犯罪者である俺達には人権らしい人権はない。

名前は無く、番号で呼ばれる存在なのだから。


   「クックック。お前らのどちらかは、これで晴れて牢屋から出られる。」


 看守は気持ち悪い笑みをこぼすと、机の上にコトリとある物を置いた。

それだけで全て理解する。


   「わかるだろう?これで生き残った方が出られるんだ。」


 見れば分かる。

六発装填式リボルバーの拳銃だ。

つまり・・・


   「ロシアン・・・ルーレット?」


 15番の男が俺より先に言った。


   「そうだ。RR法というのを知っているな?」


 知っている。

どんなに小さい犯罪でも、例えば万引きでも、警察に捕まれば裁判無しで独房にぶち込まれ、無罪放免か死刑のどちらかにしかならない。

その選別方法のことだ・・・

このRR法の恐ろしいとこは裁判がないことだ。

つまり、冤罪でも独房にぶち込まれる羽目になる。

しかしまさか、ロシアンルーレット(Russian Roulette)とは・・・

冤罪で死ぬこともあれば、実際に犯罪を犯しているのに無罪になることもあるわけだ。


   「では、始める。」


 看守が銃の中に弾を一発込めた。

そして、シャーシャーとシリンダーを回す。

これで、弾がいつ出るか分からない。


   「では引け。」


 俺に渡された。

先行は俺なのか・・・

俺は恐る恐る銃口をこめかみに当てる。

手が震えた。

俺は死刑になってもおかしくない犯罪を犯したというのに、この期に及んで生を掴み取りたいと思っている。

浅ましいことだ・・・


  −カシャ−


 弾は出なかった。

俺はフゥと安堵の息をもらす。

次は相手の番だ。

相手はしばらくブルブルと震えていたが・・・


  −カシャ−


 やがて覚悟を決めたかのように引き金を引いた。

弾は出ない。

また俺の番。


  −カシャ−


 俺は躊躇う事無く引き金を引く。

もう死の覚悟は出来た。

引き金を引くのに何を躊躇うことがあると言うのだろう。


   「か、かみさ・・・神様!!」


 そう言って目の前の男はギュッと目を瞑る。


   「おい!!早く引け!!!」


 看守が男を急かす。


   「いやだぁ!!いやだぁ!!!」


 まるで子供のように喚き散らす目の前の男。

仕方の無いことだと思う。

残り三発の内の一発にハズレがあるのだから。


   「う・・・う・・・」

  −カシャ−


 泣きながら男は引き金を引く。

またしても弾は出ず。

これで俺の死の確立は二分の一。


   「看守さん。」

   「なんだ?命乞いなら聞かんぞ。」

   「そんなんじゃありません。もし俺が死んだら、俺の親に一言俺が『済まなかったと言っていた』と伝えてください。」

   「何を言っている。お前の親はお前が殺したのだろう?」


 俺はハハハと顔だけで笑うと、銃口をこめかみに押し付けた。

そして祈る思いで引き金に指を掛けた。

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