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モテない男の話

う〜ん。

男が読むと泣けます。

要注意(笑

   「死ぬまで俺に付いて来い!!」


 男は女に背中を向け、逞しく男らしい低い声で言う。

しかし震えるその声には恥じらいを感じ、なんとも微笑ましい風を露呈している。


   「断固拒否します。」


 女は答える。

その高く、聞くだけで全身の産毛が鳴く艶ましい声にははっきりと否定の意志が篭っていた。


   「よしそうか!行け!!」

   「そうさせて頂きます。」


 そして女は男の脇を駆け抜ける。

男は一切微動だにしなかった。

女が去った後、男は人知れず涙を流した。

一粒ずつ頬を伝う男の涙。

ポツリポツリと地面に落ちては弾けて消える。

喉の置くから延々と出続ける嗚咽を歯を食いしばって、それでも堪えきれずに少しずつ出てくる嗚咽を飲み込もうと必死になる男。

耐え切れない悲しみをそれでも食い縛って耐える男泣き。

男は一時間以上そこに立っていた。



                  ☆



   「好きです!付き合って下さい!!」

   「ごめん無理!!」


 はっきりと、あまりにはっきりと拒絶の意を示した彼女は逃げるように走り去っていった。

ガララララと開け放たれた扉がピシャリと閉まった。


   「そん・・・な・・・・・」


 男はその場に崩れるように両膝をつき、うなだれた。

勇気を振り絞ったと言うにも生温いほどに、全身からありったけの勇気を掻き出した男の告白は、あまりにも無惨にあっさり切り捨てられた。


   「ひどす・・・ぎ・・・るよ・・・」


 自然と男の目に涙が溢れる。


   「うぅ・・・ぅ・・・うぅぅ・・・」


 悲しみに混じる嗚咽の声はしばらく響いていた。



                ☆



   「君と一つになりたい!!」


 男は両手を広げ、さあ胸に飛び込んでおいで、とでも言いたげに構えてみせる。


   「嫌よ絶対!!」

  −ドゴォ・・・グシャ−


 女は男を拳で殴り倒し、倒れた顔を思いっきり踏んでから去って行った。


   「チクショウ・・・」


 男を頬を濡らすのは殴られた痛みでも踏まれた痛みでもない。



                  ☆



   「例え全世界を敵に回しても、僕は君の味方だ!!」


 男は守るように女を自分の背中に隠す。


   「とりあえず私があなたの敵になるわ。」


 そう言った女は男の背中の後ろから出て、どこかへ走り去った。


   「そん・・・なのって・・・ないだろ・・・」


 目からとめどなく溢れる汗を止める術はなかった。



                ☆



   「俺は死んでも君だけは守る!!」

   「守ってくれなくても良いから今死んで。」

  −キン!!−


 女は男の急所を蹴り上げ、男はうずくまる。


   「ふん!百年早いのよ!若造が!!」


 通り様に唾をペッと男に吐きかけて女は去った。


   「うぅ・・・ぅぅぅ・・・」


 どれほど屈辱を受けようと男は泣きはしない。

どれほど悔しくとも男は涙を飲み込んでみせる。

ならば、今流す涙はどれほどに悔しかったのだろうか。

否、悔しくなど無い。

ただ悲しいだけだ。



                ☆



   「俺の味噌汁を毎日作ってくれ!!」

   「インスタントを作れば?」


 女は男の脇を駆け去った。


   「インスタントじゃ不味いんだよ・・・」


 男は拳で壁を叩く。

その嗚咽が誰にも聞こえぬよう、力いっぱい壁を叩いた。

一応断っておきますが、この話の主人公である『男』は作者ではありません。

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