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勇者の付き……人?  作者: フタキバ
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勇者の付き人って、立場的に微妙じゃね?

「……誰も、居ないね」

「居ないなぁ……」


 こそこそする理由は無いかもしれないが、俺達は水晶玉の導きに従い神託を受けられる一族とやらが暮らす村まで着いた。んだが、人っ子一人居ない。

 家らしき建物の煙突から煙が立ち上っている辺り今までそこで生活をしていた何かは居ると判断出来る。が、やっぱり誰も居ない。


「これは、やっぱりあそこに行くしかないか」

「あの1番大きな建物だよね? なんだか、上から光が出てるけど……大丈夫、なのかな?」

「さぁ……? と、とにかく、覗いてみようか?」

「う、うん」


 美代ちゃんを先に行かせる訳にはいかないから、おっかなびっくりではあるが俺が先んじて進む事にした。うぅ、近寄りたくないんだがなぁ。

 うん、外から見た感じ教会って言われるとそうっぽく見えなくもない。建物なんかは石を組んで作られてるみたいだし、その程度には文化レベルもあるみたいだな。

 よし、入口だ。そーっと中を覗いてみるか……おぉ、結構広いんだな、中は。


「吉沢さん、あそこ」

「ん? あ、あれは人……か?」


 なんだかはっきり見えないな……そうか、向こう側から光がこっちに向かってきてるから影になってて見えないのか。っていうか、なんなんだこの光は?

 入口の向こう側だから、あの祭壇みたいなところから光が出ているみたいだな。あれは?


「あれ、あの人って……イリアンさん?」

「ほ、本当だ。後光まで出して、まるで神様だな」


 それで、何か集まってる人らしき者に語りかけてる。神託って、こんなにダイレクトに神様が出てきてやるものなのか?

 おっと、語り終わったのか、イリアンの姿が薄くなって消えていく。それで、神託とやらは終わったのか?


「わぁー、あれ? 吉沢さん、ポッケ光ってるよ?」

「ん? あ、本当だ」


 ポケットに入れてたのはさっきの水晶玉だ。それが光ってるって事は、あれからの通信か。

 手に取ってみると、やっぱりさっきと同じように光ってる。が、ここじゃちょっと不味いな。


「美代ちゃん、ちょっとこっちへ」

「あ、はい」


 よし、裏手に回れば誰にも気付かれないだろう。さて、何を言い出すかな?

 っていうか、これはこっちからは話し掛けられないのか? どうにかこっちから話し掛けられると色々楽なんだが。


『ふぅー、一仕事終えた後はなんとも言えないさっぱり感♪』

「満足してるところ悪いが、村着いたぞ? それと嘘っぽい神託とやらも見た」

『……うぇい!? もう村に居るんですか!?』

「そうだけど、何か問題でも?」

『いやその、これよりこの村に現れるであろうウルフェンの青年と人間の少女に導きを与えよーって言っちゃって、もうここに居るとなると微妙に話が変わっちゃうなーって』


 そ、そういうのはその辺も想定して話すものじゃないのか? 全く、この嘘臭い神はどうしてこうも微妙な結果を生むのか。勘弁してくれ。

 

「で、どうするんだよこの場合?」

『えっと、多分現れるって言ってたから、これから村に入る必要は無いんですよ。ただ、その子とあなたがセットで村人に見つかればいいんです』

「なるほど……じゃあ、それで行ってみるしか無いか」

『えぇ! グッドラーック♪』

「……それ、イラッとするから次から禁止な」

『そ、そんな!?』


 あ、切れた。切られたって言うより、強制的に通信が切断されたような感じだったな? なんだったんだ?

 とにかく、どうにかして俺達が神託の者だってここの村の住民に認識してもらわないとならないって訳だ。どうするかなぁ。


「えっと、どうすればいいのかな?」

「うーん……どうしようか?」


 とは言っても、大して方法が思いつく事は無し。1番良いのは、あの神との会話を無視する事になるが、村に入り直す事だよな。それで行くか。

 ん、なんだこれ、匂い? 上か? でもなんか、あまり良い匂いじゃあないな。避けるべきだろう、多分。

 美代ちゃんには悪いけど、急いで抱えさせてもらった。これで前に……跳ぶ!

 うぉぉ、なんか上から落ちてきた!? ってかこいつ、な、なんだ……!?


「気付かれた? いやそうか、ウルフェンは鼻が利くのだったか」

「いや、そう言われてもなんとも言えないが」

「ひっ、と、トカゲ人間!?」


 と、トカゲだけど、やっぱり人間っぽいな。って言うか、手に持ってるあれはなんだ? 棒? いや、先端に刃が付いてる。槍か。おまけに体に纏ってるのは、鎧みたいだな。

 それが地面に刺さってる。ってか、俺達刺されかけた? 刺されかけたって事だよな。俺達が居たところに刺さってるんだから。


「トカゲじゃない、私はドラシェルのレーン・カナードだ!」

「ど、ドラシェル?」

「トカゲじゃないなら、なんでしょう?」

「トカゲっぽくてトカゲじゃない。ならそれって、ど、ドラゴンとか?」

「当たり前だ。ドラシェルは竜人、一般常識だ」


 と、目の前の白い髪の毛の青いドラゴンっぽいお方は仰っているが、知らねぇよ、こっちの一般常識なんて。ここに着いてまだ1時間経ったかどうかくらいなんだからな。

 で、引き抜いた槍をこっちに向けると。これは、完全に不審者として警戒されてる。まぁ、実際不審者なんだけど。

 どうしようかこの状況。あの槍でブスーっとやられるのは命がピンチだ、それだけはなんとか避けねばならない。


「何故こんなところに居る? ……物盗りか」

「いや待て、決め付けるな。俺達は」

「名を名乗れ! 不審な輩め!」

「名!? 俺は直……」

「ナオ、か。盗人の名だが一応覚えておいてやろう……せぇっ!」


 話を聞けぇ! どうしてこうどいつもこいつも人の話を聞かん!

 なんて思ってる場合じゃないな。うぉぉ、槍が、槍がこっちに向かってきてる! ちょ、止め、止めてぇ!


「うぁぁ、よ……」

「み、美代ちゃんはちょっと離れてて! 近づいちゃダメ!」

「は、はい!」

「くそっ、ちょこまかと。大人しく私の槍の錆になれ!」


 おぉ、なんでか分からないが槍が向かってくるのが見える。体の反応も良いし、なんでこんな事出来るんだ俺?

 言っておくが、俺は武術の経験なんて皆無だ。小中高、おまけに大学でも部活は文化系だ。まぁ、各校で違うものに入ってそんなに熱中する事も無かったが。

 運動音痴ではないが、そこまで運動系も得意な方じゃなかった。故に俺のスペックでこんな事が出来るのはおかしい事と言えるだろう。


「くっ、この!」

「! 行けるか」


 槍を避けて、そのまま一気に距離を詰める。漫画で読んだだけの知識だが、これでどうだ! 水面蹴り足払いだ!


「うわっ!?」

「よし!」

「うわぁ、吉沢さん凄い!」


 我ながらなんという運動スキル……あっと、とりあえず取り押さえておけばいいんだろうか? 腕をこう、背中側に回して抑え付けるんだっけ?


「くぅっ……」

「……ノリで抑え込んじゃったけど、どうしよう?」

「あの、吉沢さん……」

「ん? どうし……!!」


 わーお、いつの間にかトカゲ人間の集団が出来上がってた。いや、確かドラシェルだったっけ? ここって、この種族の村だったのね。あは、あははははは……どうしよう。


「あーえっと……こ、こんにちは」

「ふむ、見事な腕前だ。レーンの非礼は詫びるので、一先ずその者を開放してくれはしないだろうか?」

「は、はいもちろん!」


 こんな状況で抵抗なんてする気は毛頭無い。第一囲まれてるしな、こんな中で何かやろうとしても袋叩きがいいところだろう。

 このレーンとかいう奴を離してハンズアップ。抵抗する気が無い事を表すのがこれが1番だろう。


「しかしレーンが抑え込まれるとはな。この村の守部なのだが」

「も、申し訳ありません」

「いや、良い。気にするでない」

「あ、あのー俺達盗人ではなくてですね」

「ふむ、ウルフェンの青年と人間の少女、もしや其方等は……先程の神託の」


 うっ、そうですとも言えないし拒否も出来ない。なんて切り返すべきだろうか?


「あ、あの、その神託って、なんですか?」


 おぉ、上手いぞ美代ちゃん! 完璧な返しだ。それとなく神託の内容を伺えば、俺達がそうだっていう話に繋げるチャンスも広がる!

 が、少し俺と美代ちゃんの事をじろりと見て、目の前のトカゲ……じゃなくて、顎鬚を蓄えたドラシェルの男性? は何かを考え込んだ。ど、どうなるんでしょう俺達は。


「盗人と言うにも邪念を感じんし、まぁ良いでしょう。どのような要件でこのセイラムに?」

「セイ、ラム? それがこの村の名前なんですか?」

「それも知らずにここに来たのか!? やはり怪しい奴!」

「待ちなさいレーン、いきなり槍を向けては話も出来ないだろうに。現にこの子は怯えてしまっているじゃないか」


 あ、美代ちゃんが半泣きで震えてる。しかもハンズアップで。まぁ、そんなもの向けられた事なんて無いだろうし、当然の反応かもな。

 どうやらこの人? は話が分かる人らしい。なら、出来るだけ色々教えて頂きたいところだな。


「俺達はその、どっちもこの村へ行けっていう声を聞いてここに来た次第で、自分の事もよく分からないんです」

「え!? 吉沢さんそうなんですか!?」


 お願いだからこういう時も勘を働かせてくれると実に嬉しかったんだけどな、美代ちゃん。これは話が拗れるぞー。


「……どうやら、君達はお互いの事を知っているようだが?」

「すいません、話を円滑に進められるように嘘を言おうとしました」

「こういった時は、素直に現状を話した方が得策だと思うがね」

「はい、仰る通りです。申し訳無い」


 あら、笑われた。まぁ、盗人ならこんな事を正直に言う筈は無いだろう。これで最低でも盗人とは思われないだろう。多分。

 おっと、他のドラシェルの皆さんも俺達の様子を見て笑ってらっしゃる。ただ、一匹を除いてだが。

 レーンと名乗ってるドラシェルだけは複雑そうな顔をして槍を下ろしてはくれた。でもめっちゃ俺を睨んでるんだが。さっきの、だよなーやっぱり原因は。


「そうですな、一先ずは私の家に招こう。そこで、詳しく話を聞かせてもらおう」

「そうして頂けるとこちらとしても有難いです」

「村長! このような怪しい者を家に招くなんて!」

「お前がいきなり襲いかかった無礼の詫びも兼ねているのだよ」

「うぐっ、それは……」


 遇の音も出ないとはこの事か。あれも結局のところの原因はそっちが原因だからな。勝手に村に入ってた事は水に流して頂きたい。

 周りのドラシェルの皆さんが目の前の男性の一声で解散していった。さっき村長って呼ばれてたって事は、この人がこの村の長なんだろうな。

 手招きされたからついて行くとしようか。……あ、レーンさんもついて来るんですね。そりゃあ不審者扱いされてるんだから当然と言えば当然だろう。

 なるほど、神託とやらがあったから全員あそこに集まってたのか。村の中が入ってきた時とはうって変わって賑やかになってる。これがこの村の本来の姿なんだろうな。


「わぁ……皆トカ……じゃなくて、ドラシェルって人達なんだ」

「みたいだね。1時間半前の東京に居た俺だったら卒倒してる光景だ」


 今だって信じられない気持ちでいっぱいなんだからな。俺自身がこんなのになってなかったら、どう考えても受け入れがたい事実だったろうさ。

 ウルフェンか……シベリアンハスキー似の獣人。獣人なんて、本当に創作の世界の話だぞ。でも自分がなってしまったら受け入れるしかないんだろうな。

 しっかしさっきは体が軽かったなぁ。あんな事出来るとは思わなかった。これも、この体の恩恵なのかね? 動きが軽い、思ったように体が動いてくれる。凄いもんだ。

 出来ればこんな事が向こうで出来てれば、サラリーマンじゃない人生も選べたかもしれないか。……はぁ、どっちみち、向こうで死んでるんだからどうしようもないんだけどさ。

 おっと、どうやら村長さんの家に着いたみたいだな。周りの家よりは大きいようだし、流石村長ってところなんだろ。


「ではどうぞ」

「お邪魔します」

「あ、えっと、お邪魔しまーす」


 中はそのまま土の地面か。靴を脱がないでいいのを楽だって思っておくのが吉だな。

 家具なんかも一通り揃ってるみたいだ。椅子に腰掛けるように促された事だし、腰掛けて話をするとしようか。


「……あの、レーンさんは座らないんですか?」

「必要無い。腰掛けていたら、村長に何かあった時に動けないからな」

「さっきは自己防衛の為に動いただけだって……こっちが何もされないなら俺も何もしない。約束したっていい」

「ふん、どうだか」


 うわぁ、全力で恨まれてる。そんなに取り押さえられたの痛かったかな? そう力は入れてなかったと思うんだけど。

 いや、今はレーンの事は忘れよう。俺達の現状を話すのが先だな。


「では、聞かせてもらおうか。君達が何者で、どうしてここに来たのかを」

「えっと、何から話せばいいのかな」

「吉沢さん、最初から話してみようよ。一つずつ、ね?」

「それもそうだね。……俺達にもまだよく分かってない部分もあるんです。嘘じゃなく、それでもいいでしょうか?」

「構わない。君達が何者なのか、私は興味があるのだよ」


 そんな興味があるなんて言われても、そこまで語れるような話は無い、とも言えないけど、嘘臭い話しか出てこないんだよな。

 それでも俺達にとっての事実だ。俺達は死んで、生き返って、今ここに居る。それをなるべく詳しく話す。あのモドキっぽい女神の事も含めてだ。

 説明は終わった。後は審判を、聞いていた村長様に委ねるだけだ。願わくば、槍を更に握り締めてるレーンを俺達にけしかけるような事にはなってくれないで欲しい。


「ミナスティアとは違う世界で生きて、そして死してこの世界に再誕した、か。信じられない話だ」

「あぁ、俺もそう思います。でも、俺達にはそうとしか言い様が無い。それ以上の情報は持ち合わせてないんで」

「し、信じて下さい! お願いします!」

「無理な話だな。口からでまかせにも程がある」


 素敵な程の完全否定をありがとう。ちょっと泣きそうになるから、お願いだから多少言葉をオブラートで包んで下さいお願いします。


「だが、君達の言葉に嘘は無い。目からも、私達を騙そうとしているような疚しさを感じない」

「!? 村長!?」

「少なくとも私、カンジェン・カナードは君達を信じよう。神託に語られし、勇者とその付き人よ」

「やった! 吉沢さん、信じてくれるって!」

「ありがとうございます! ……ん? カナード?」

「そうそう、私とそこにいるレーンは、親子なのだ。ただ、この子の母はレーンを産んで、数年後に他界してしまったが」


 ま、マジで!? だからここにもついて来たのか! っていうかここが家なのか!

 うわ、露骨にこっちを睨んだと思ったら奥にある扉を開けてそっちへ引っ込んで行っちゃったよ。俺そんなに悪い事した? してないと思うんだけどなぁ。


「申し訳無い、男親だけではどうも血の気が多くなってしまったようでな。君に負かされたのがよっぽど悔しかったようだ」

「いやあれは、俺もまぐれのようなものでああなったんでして」

「そうかな? 見ていたが、動きも技も素晴らしく、そして見た事の無いものだった。レーンが抑えられたのも頷ける」

「み、見てたんですか!? しかもなんか詳しいし」

「ふっ、レーンに戦いと技を仕込んだのは私だよ。これでも、村長になる前は歴代最強の守部と呼ばれていたものだ」


 わーい、そんな強そうな人と戦いにならなくて良かった。本当に俺が勝てたのって紙一重もいいところだな。

 ……母親が居ない、か。なんというか、それも寂しい話だよ。で、父親から教えられた戦い方でこの村の守護者になったのに、俺みたいのに負けたらそりゃ恨むわな。


「そうだ、君達の名を聞いていなかったな。教えてはくれないだろうか」

「あー……あの、この世界のじゃない名前になりますよ?」

「そうか、君達は今この世界に生まれたばかりだと言う事になるんだったな。構わない、まずは以前の世界の名を教えておくれ」

「それでは……吉沢直太です」

「坂崎美代です。は、始めまして」

「なるほど、それでナオだったのか。ようやく分かったよ」


 いやそれ、レーンとやりあう前の会話で呼ばれた名ですよ? 本当に最初の方から見られてたのね、俺達。


「しかし、その名ではミナスティアでは目立つだろう」

「やっぱり、そうなります?」

「ヨシザワナオタ、サカザキミヨ、どちらも聞き慣れないのは確かだ。レーンが言ったナオだけならば、名乗るだけなら問題は無いと思うが……」

「えっと、じゃあこれからはナオさんって呼んだ方がいいのかな?」

「うーん、吉沢さんじゃこっちだと違和感があるのかもしれないか。あぁ、ナオで呼んでくれるかい?」

「分かりました。私はミヨで大丈夫かな?」

「ふむ、それなら問題は無いだろう。一つ問題があるとすれば、それは姓だな」


 姓ね……今までのレーンの呼び方やカンジェンさんの名乗りからして、日本式じゃなく外国基準の姓が後で名が前の形式っぽいよな。

 とすると、ナオ・ヨシザワって事になるのか? ……ここまで来ると、吉沢のところに違和感を感じるよなぁ。


「良ければ、私が姓となる名を君達に贈ろうか。自分達で考えると言うのも、こちらを知らないのでは苦労するだろう」

「確かに……ミヨちゃん、どうする?」

「自分じゃ分からないし、よ……じゃなくて、ナオさんはどうするの?」

「じゃあ、折角だし頂こうか」

「うん! カンジェンさん、お願いします」

「相分かった。勇者とその守護者に相応しい名を考えておこう!」


 うわ、なんか嬉しそう。っていうか俺、付き人から守護者になってる。なんで?

 でも嬉しそうなのを阻害するのも悪い気がするし、まぁ任せようか。


「さて、名は私が考えておくとして、君達はこれからどうするのかね?」

「それが、このミナスティアについてはさっぱり分からないんですよ。なんか、グラファスとかいう奴を倒せとは言われたんですが……」

「風の噂では聞いた事がある名だ。十数年前から急に規模を大きくしている王国があり、その城主は冥き闇の魔力を以てして他国を攻めていると。確かその王の名が、グラファス・ファウンドと言うそうだ」


 グラファス・ファウンド……え? ちょっと待て、王国!? 王国の王様倒せっての!? 無理無理、んなのミヨちゃんと二人で出来る訳無いだろ!

 しかも魔力ってなんぞ!? まさか魔法なんて非科学的な物がこの世界には存在してるんじゃないだろうな!?


「カンジェンさん、くらきやみのまりょくって……何?」

「この世界でも禁忌とされる、魔性を呼び寄せる闇の魔法を行使する為の魔力の事だよ、ミヨちゃん」

「適応早っ。いやそもそも、その魔力とか魔法ってその、あれですか? 何も無いところから火が出たりとかそういう」

「うむ? 君達の元居た世界には魔法が無かったのか?」


 ミヨちゃんと俺で同時に頷きました。うわぁ、ファンタジー感が八割増しで襲ってきたよ。勘弁してくれ。

 ん? カンジェンさんが手の平を上にして俺達の方へ腕を伸ばしてきた。何する気だ?


「……フラム」

「!? うぉっ、手の平が燃えた!?」

「う、ううん、違うよ。カンジェンさんの手の平の上に、火の玉が出来てるみたい」


 お、おぉ、よく見たら本当だ、手の平が燃えてるんじゃなくて火の玉が出来てる。こ、これが魔法?


「このように、自分の魔力を呪文によって組み替えて力にする。それが魔法だ」

「あっ、消えちゃった」

「ほ、本当にあるんだな、魔法……」

「魔力はこの世に生を受けた者ならば誰もが持っている心の力。恐らくという事になるが、君達も学び修練すれば魔法を行使出来るようになるだろう」


 マジですか……俺も手の平から火の玉出せるようになるのかね? 想像出来ないな。


「す、凄いね、ナオさん」

「あぁ、全くだ」

「その分だと、本当に何も知らないようだな。神託の、導きを与えよとはこういう事か」


 はい、全くもってその通りでございます。右も左も分からないだらけで困ってるくらいだからな。


「ならば、しばらくこの村に滞在するといい。その間に、出来る限りの知識を教え手解きを致そう」

「いいんですか? 見知らぬ俺達を置くなんて。それに、どうやら俺はレーンに相当目の敵にされてるみたいですけど」

「構わんよ。寧ろ、君達は見知らぬ私達のような者を頼りにしてもいいのかね?」

「……お互い様って事ですか」

「そういう事だ」


 ミヨちゃんの方を向くと、嬉しそうに笑いながら頷いた。決まりだな。

 揃ってお願いしますと俺達が言った事で、ここセイラムの村での俺達の生活が幕を上げた。更に言えば、この世界ミナスティアでの生活が、かな。

 魔法に倒さなきゃいけないらしい王国とやらにこの世界に居る人間以外の種族に……はぁ、覚えなきゃいけない事、山積みそうだなぁ。


 ……そんな転生初日から早一週間、我ながら適応力に驚かされてるところだよ。主にミヨちゃんのにだが。


「えいっ! やぁぁ!」

「いいぞ! 剣に流されずに、自ら振るうんだ!」

「……一週間前まで剣どころかナイフすらまともに持った事無かった子とは思えない上達っぷりだ」

「全くだな。勇者になるという定めを受けた子、あながち間違っていないようだ」


 激を飛ばしながら相手をしているレーンに、その手に剣を持ったミヨちゃんが果敢に挑んでる。会った時は大人しい子だったんだけどなぁ。

 あ、俺は今カンジェンさんに稽古をつけてもらって休んでるところです。やっと体の感じにも慣れてきたってところ。


「しかし、ミヨもナオも七日でここまで上達するとは思わなんだ。やはり、神託を受けし者の実力は侮れん」

「そうは言っても、俺って素手での戦い方しか教わってないんですけど……」

「下手に武器を持つと、持ち味の速さを損なうからな。自分に合う武器が見つかるまでは徒手で戦った方がよっぽど良いと思うぞ」


 はい、カンジェンさんの仰る通りです。なんか俺、剣とか槍とか持つと邪魔臭くて仕方なくてな。しょうがないから素手での戦い方を教わった次第です。


「しかし、あれを使えば武器など要らんようにも思うが?」

「まー、結構慣れたからそれで戦えなくもないって感じですかね?」


 手の平を上に向けて、丁度カンジェンさんが俺達に初めて魔法を見せてくれた時のような感じにする。

 そう、俺も魔法とやらを習うと、出来ちゃったのよ。もっとも、カンジェンさん曰くかなり特殊な魔法らしいけど。


「……狼氷礫」


 そう俺が口にすると、手の平の上に石ころくらいの氷の塊が出来上がる。どうやら俺は、火とかそういうものを生み出す魔法は使えないらしい。

 それどころか、この世界で一般的な魔道書とやらに書かれてる呪文は読んでも全滅。仕方がないからってカンジェンさんの指導の元、自分の内から湧き出す力を感じろーだの、魔法を使いたいと強く念じろーだのって訓練をしたら出来るようになったのがこれだったんだよ。

 つまり、この世界には存在しない完全に俺のオリジナルの呪文と魔法、それを俺は編み出してしまったらしい。ツイてるんだかツイてないんだかなぁ。

 因みに俺が使える魔法は二種類。狼氷礫みたいな氷の魔法と……。


「水狼球!」

「ほぉ、氷の礫を水泡で包んだか。なかなか器用になってきたな」

「多少コントロールも覚えてきたって感じですかね」


 この通り、水の魔法が使える。氷と水、割と使い勝手はいいもんを使えるようになったと我ながら思う。

 そして着実に人間離れしていってる。あぁ、普通のリーマンだった頃の自分が遠ざかっていくのを感じる。


「はぁ……」

「どうした、溜め息なんぞ吐いて」

「いやなんかもう、後戻り出来ないんだなぁと思って」


 手の平の上で回ってた氷と水の泡を消して、ゴロンと仰向けに横になった。良い天気だ、それに空気も綺麗で心地良い。

 異世界、ミナスティア……これから、俺達が生きていく事になる世界。本当に、東京とは全然違うよ。何もかもが。


「ナ~オさん♪」

「おふっ!? ……ミヨちゃん、訓練終わったの?」

「はい! んー、ナオさんの毛、ふかふかで気持ち良い」

「体動かした後だと熱いと思うけど?」


 あぁ、こんな感じでミヨちゃんとも打ち解けてきてます。このウルフェンの体をミヨちゃんが大分気に入ったらしく、隙を見つけるとこうして抱きついてくるようになってしまいました。……お、俺の所為じゃないからな。

 しかし気に入ったからと言っていきなりマウントを取られるのは地味にきつい。そしてそのまま倒れ込んでくるように抱きついてくるから若干重い。口にしてはいけないワードだとは分かってるけど、重いものは重いのだ。


「ミヨは懸命に訓練していると言うのにお前はだらしなく横になっているのか? それでよく守護者を名乗っているものだな」

「守護者じゃなくて付き人な。大体、勇者の守護者っておかしいだろ。勇者はこの世界の守護者のような者だろ?」

「なんだ、ミヨに重荷を全て担がせるつもりか? 薄情なものだ」


 なんで一週間も経ってるのにこうやって噛み付いてくるかねレーンは。同じ食卓を囲んでるんだからもう少し受け入れてくれてもいいと思うんだけどなぁ……。

 ま、こうして嫌味とはいえ会話をしてくる気にはなってくれたようだが。最初の二日間なんて無視されてたからね、本当に。


「レーンさんもナオさんも、喧嘩しちゃダメだよ?」

「喧嘩なんてしていないよミヨ。ただ、このだらしないウルフェンを叱咤しただけさ」

「はいはい、そういう事にしておきますよ」


 こんな感じで、俺達が険悪なムードになるとミヨちゃんが間を取り持ってくれたのが、多少なりとも向こうが歩み寄ってきてくれた理由なんだがね。なんだか知らないが、妙にミヨちゃんとレーンは仲良くなったんだよ。

 ミヨちゃんが体から降りたのを確認して、俺も体を起こした。確かに言われてる通り、あまりだらけてるのもミヨちゃんに悪いし。


「ふむ、レーン、ナオ、今日もやるのか?」

「そのつもりです、村長」

「え? やるの?」

「当たり前だ! お前達が村を離れるまでに必ずお前に参ったと言わせてやる!」


 だからなんでそんなに俺に勝つ事に固執してるの? 勘弁してくれ。

 あぁ、今からレーンとの模擬試合が始まるところだ。こっちにやる気が無くても、向こうのやる気にはスイッチが入ってるようだし。これで相手しないとこれから先の一日中むくれてるんだよ。

 一昨日にそれをやって本当に面倒な事になったしなぁ……だからやるしかないんだ。


「さぁ、構えろナオ!」

「はいはい……」

「ナオさんもレーンさんも頑張って!」


 うん、頑張りたくないです。因みにこれが始まると、なんでか村の皆様方も集まってきて見物を始めます。いや、訓練を村の広間でやってるのが悪いんだけど。


「では、双方共に用意はいいな? ……始め!」

「しぃあぁぁ!」

「だからさぁ、模擬なんだから気合い入れ過ぎだって」

「煩ぁい!」


 カンジェンさんの始めの合図が聞こえた途端に槍を向けて突っ込んできたよ。寸止めは流石にすると思うけど、目が真剣だから大分怖いんだよな。

 怖いから……避ける。レーンの正面から外れて、左側に回り込んで蹴りを一発。あ、防がれた。

 っと、槍の横薙ぎが来たか。棒の部分とはいえ殴られると痛い。ドラシェルって基本力の強い種族らしく、普通にこれだけでもダメージになるから厄介なんだよ。

 体を回しての横薙ぎを、大きめに後ろに跳んで避ける。槍の特性的に相手に懐に入ったままにはさせないって事なんだろ。


「ちっ、やはり速い……」

「そりゃ当たりたくねぇもんよ。狼氷枷」

「! 何!?」


 うん、着地と同時に地面に手を突いて、相手の足元を凍らせる魔法を使いましたよ。見事に嵌ってくれましたっと。

 この魔法は、地面に触れている相手の部分を地面ごと凍らせる効果がある。簡単に言えばトラバサミみたいな魔法だな。


「くそ、しまった!」

「んじゃあ遠慮無く行かせてもらうぞ」

「なっ、このぉ!」


 左の片足が地面と繋がってる状態なんだからもう何したって無駄無駄。槍を振り回したって、避けるのはそう難しくない。

 指を曲げて掌底打ちの構えを手に作って、暴れてる槍に打ち込む。持ってる自分が動けなくて、槍にそんな衝撃が加わればどうなるかはお分かりだろう。


「うぁっ!」

「うん、こんなもんだろ」

「勝負有りだな。レーン、お前の気負い過ぎだ」

「くぅぅっ……」


 指をパチンと弾いて、レーンの足の狼氷枷を解いてやった。動くようになった足を確認して、槍を拾い上げてる。

 あ、槍抱えていじけちゃったよ。しゃがみこんで槍の柄で地面にグリグリ円を描いてるのは、なんだか子供っぽく見えて可愛げもあるんだけどな。

 なんかこれはレーンの癖らしい。カンジェンさんとの訓練でも、自分でも分かるミスをするとこうなってたそうな。つまり、負けた原因に自分で心当たりはあるようだ。ってかカンジェンさんから指摘されてたんだから当然だな。


「レーンさん、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫。大丈夫だよ……」

「……俺、しばらく家の方に居ますね」

「済まない、レーンが面倒を掛けるな」

「いえ、特に気にしませんから」


 ここは俺が何かフォローするより、ミヨちゃんとカンジェンさんに任せるのが得策だろう。下手に俺が何か言っても裏目に出るのは分かりきってる。


「待て」

「ん?」

「レーンさん?」

「認めないからな、勝ち逃げなんて。絶対にお前を負かしてやる」

「勘弁してくれよ……そもそも模擬戦を仕掛けてきたのはそっちだろ? それで恨まれるのは筋違いだ」

「煩い! とにかく、私はお前に絶対勝ってやる!」


 なんでこうなったかなぁ、俺は嫌われたいなんて思ってないんだぞ? 好かれても困るが。戦いたくはないのが本音だ。

 でもこの調子じゃ、本当に勝つまで勝負を挑まれそうだ。下手に手を抜けば確実にバレて、より一層ガミガミ言われるだろうな。

 言いたいだけ言って家に引っ込んじゃったよ。これは、明日も吹っ掛けられると思っておくか。


「困ったものだ……済まんな、ナオ」

「いいですよ。それでレーンの気が済むなら」

「いや、我が子の我侭で君達の旅立ちを引き伸ばす事は出来ないだろう」


 旅立ち……あぁ、そうか、そうだよな。俺達にはやらなきゃならない事があるんだ。それには、ここに居るだけじゃダメなんだった。


「旅立ちって……でもまだ私達、教わりたい事がいっぱい!」

「ミヨ、旅立ちが辛いのはよく分かる。だが、この一週間でお前達はよく学び、よく訓練に励んだ。もう私には教えられる事は無いのだ」

「そんな、でも……」


 カンジェンさんの唐突の言葉に、ミヨちゃんは相当戸惑ってる。そうだよな、この一週間の間セイラムで過ごさせてもらったが、ここは良い村だ。余所者である筈の俺達の事をすぐに受け入れてくれたし、良くしてくれた。

 これからもここで暮らせれば、さぞ楽しいと思う。俺もこの村の事は好きになったよ。だから、離れたいとは思ってない。

 まったく、面倒な役割さえ無ければなぁ。……なら、その役割を終えて、帰ってくればいいだけか。


「……カンジェンさん、もし……俺達の旅が無事に終わったら、この村で暮らす許可をくれませんか?」

「この村で、かい?」

「はい。もう、俺達にとってこの村は、この世界での故郷ですから。ね?」


 少しだけ零れた涙を拭って、ミヨちゃんは頷いた。あぁ、必ず帰ってくる。旅が辛くても、それを支えに出来るから。

 一週間って短い期間だったけど、何も知らない場所に放り出された俺達にとってこの村の温かさは、何にも代え難いほどに嬉しかった。優しかった……。


「故郷か……あぁ、いつでも帰ってきなさい。私はここで、君達の帰りを楽しみに待っているとしよう」

「ありがとうございます……」


 おっと、ギュッとミヨちゃんが抱きついてきた。まだ12歳らしいから、胸の辺りに顔が来る事にはなるんだけどな。

 ……寂しい、よな。やっぱり。たった一週間って言ったって、カンジェンさんやレーンは一緒に過ごした……家族みたいなものなんだ。それを不意に失ったミヨちゃんにとっては、大きな存在だって分かる。


「大丈夫。俺はこの先も一緒に居るから、ね?」

「うん……」

「まぁ待ちなさい。何も今からすぐ旅立てと言っている訳じゃあない。今日は旅の事を一時忘れて、村でゆっくりと過ごすといい」

「そうですね、そうさせてもらいます。ミヨちゃんもそれでいいかい?」

「うん、村の人達ともお話したいから」


 村の皆にも随分お世話になったんだ。確かに、挨拶くらいしておきたい。別れって言うより、行ってきますって形でな。


「うむ、行ってきなさい。私は家の方に居るから、疲れたら戻っておいで」

「はい! ナオさん、行こう」

「え? 俺も一緒に?」

「ダメ、かな?」


 いや、バラバラに行くのも面倒だし……まぁいいかな。どうせ皆に会いに行くんだ、二人で行ってもいいだろ。


「いや、構わないよ。行こうか」

「うん!」


 笑ってくれたし、これでいいんだよな。じゃあ、村の皆に顔を見せに行こうか。忘れられるのも寂しいしな。


 農作業だったり家事だったりをしている村の皆のところへ行って、明日この村を一時離れる事を告げていく。驚いたり寂しいと言ってくれたり、必ず帰ってこいよなんて事を言ってくれるもんだから、ミヨちゃんは笑いながらまた少し涙を滲ませてるみたいだ。

 あぁ……優しい村だよ、本当に、本当に……。不味いな、俺もそんなに涙腺は緩い方じゃないんだが、胸にじんわり来るものがある。

 必ず、帰ってこよう。二人で、元気に。


「そっかー……ミヨもナオも行っちゃうのか」

「うん……でもね、帰ってきたら、今度はこの村でずっと暮らすんだってカンジェンさんと約束したの。ね、ナオさん」

「あぁ、そのつもりだよ」

「なんだ、ならサヨナラじゃなくて行ってらっしゃいだな。用事なんてさっさと済ませて、この村でゆっくり暮らそうぜ」

「うん!」

「ありがとう……そう出来るように、頑張ってくるつもりだよ」


 今のは、この村でも俺達と歳が近いドラシェルでシャナルって奴。訓練してない時はミヨちゃんと一緒に遊んだり、俺にちょっかい出しに来た奴なんだ。

 あいつもそうだけど、本当にこの村の皆は良い人達だ。このミナスティアに来て最初に出会えたのがこの村で本当に良かったと思う。

 シャナルと別れて、これで村の皆への挨拶は大体終わったかな。まだ日は高いけど、どうしようか?


「……ふぅ」

「ん? ちょっと疲れたかな?」

「う、うん」

「そっか。なら家へ戻って休もうか」

「うん……ねぇナオさん」

「どうかした?」

「手、握って……いい?」


 そりゃまぁ、そんな事なら。俺の方から手を伸ばすと、それをミヨちゃんが握り返してくる。少々毛深い手だけど、あまり気にはならないだろう。多分。


「……肉球じゃないんだね」

「いや、あれは犬とか猫が硬いところを歩いても平気なように柔らかくなってるらしいから、その必要の無いウルフェンにはそれが無いって事なんじゃないかな」

「なんだぁ、プニプニしてたら良かったのに」

「まぁ、プニプニしてない代わりに手の平の方の毛は殆ど無いみたいだけど」

「足の裏も?」

「足の裏も」


 いや、なんでこんな話になったんでしょ? ま、気晴らし程度にはいいか。

 そうして少し喋りながら、カンジェンさんの家まで戻って来た。この家にも慣れてきたところだったけど、明日から当分はお別れだな。


「ただいまー」

「戻りま……」

「二人とも明日旅立つだと! 私は聞いてないぞ!」


 ちょ、なん、なんぞ!? 家に帰ってきた途端に胸ぐら掴まれた!? ぬぉ、ゆ、ゆら、揺らすなぁ!


「れ、レーンさん!?」

「私との勝負はどうするつもりだ、ナオ!」

「ちょま、ぶぇっ」

「落ち着かないか、レーン。ナオが吐くぞ」

「だ、あぁ、そのままじゃ喋れないか……」

「も、もうちょっと早く気付いてね……」


 パッと離されたんで深呼吸、深呼吸……ふぅ、落ち着いた。


「大丈夫? ナオさん」

「な、なんとか……」

「一先ず、お茶でも飲みながら話そうか。レーンも座りなさい」

「あ、はい」


 カンジェンさんがお茶を淹れてる間に、俺達は椅子に腰掛ける。おっと、もう淹れてあったのか、すぐにカンジェンさんもお茶を持って戻ってきた。

 何茶かは知らないが、このお茶も香りが良くて飲み易いんだよな。茶葉なんなんだろ?


「それでさっきの話だ。旅立つ事を、何故私に隠していた」

「いやだって、さっきカンジェンさんと話して決めた事だもんよ。お前が家に戻った後に」

「な、そうなのか?」

「うん、そうだよ」

「そう……なのか……」


 そもそも俺達は、旅立つ為の基礎準備をする為にこの村に滞在してた訳だからな。いずれ旅に出るって事はレーンも知ってたと思うんだが?

 しかしレーンがこんなに俺達の旅立ちで落ち込むとはな。村の皆も含めて、こんなにしょんぼりしたのはレーンだけだぞ。


「ですが村長……いえ、父上。些か時期尚早なのではないですか? 確かに二人共戦闘の実力は上がったと思いますし、ミナスティアについての知識を覚えてはいると思いますが……」

「あぁ、だからこそ二人を送り出せると踏んだのだ。これ以上は、この村に居ても伸び代は無かろう。レーン、二人を惜しむ気持ちは分かるが……分かっておくれ」

「私はそんなつもりで! ……」


 言った訳じゃない、って続かないところを見ると、どうやらそう思っていた節はあるみたいだな。なんだかんだ言って、結構俺達の事気に入ってくれてたのね。

 会話が途切れて、この場の空気が明らかに沈んでいるのが分かる。どうするかな、これ。あの事言えば多少変わるか?


「まぁでも、今生の別れって訳じゃない。旅が終われば、また会えるさ」

「? どういう事だ?」

「私達、カンジェンさんと約束したの。旅が終わったら、ここで暮らすって」

「無論断る必要も無いので、私は歓迎しようと思う。村の皆はどうだった?」

「早く用事を済ませて、のんびりここで暮らそう、との事でした」

「じ、じゃあ……」


 そう、グラファスを倒せば、俺達はここへ帰ってくる。どの道全てが終わっても俺達に帰る場所なんて無かったんだ、寧ろここに帰れるようになった事は嬉しい事だよ。

 ホッとした顔してるなぁ。まだ旅が無事に終わるとも分かってないんだ、最終的に全部無事に終わったらって話なのにな。


「レーンさん、私達……ここに帰ってきても、いいよね?」

「当たり前だ! 旅が終わったらなんて言わず、いつでも帰ってくればいい!」

「おぉ、レーンの口からそんな言葉が飛び出してくるとは思わなかった」

「あ、お、お前はいちいち煩いんだ、ナオ!」

「ふふっ、どうやら話は着いたようだな」


 照れて赤くなったレーンを見て、俺達三人は笑った。勝負の話をしないって事は、どうやら決着は帰って来た時にって事で納得したんだろう。


「さて、旅立つ二人に私は送らねばならぬものがあったな」

「? そんなのありましたっけ?」

「あ、名前だよナオさん。ほら、カンジェンさんが旅立つ時に贈ろうって言ってたよ」


 あ、すっかり忘れてた。未だ俺はナオで、ミヨちゃんはミヨでしかないんだよな。だってカンジェンが旅立つ時までは秘密だって言うものだから。

 それをようやく貰える訳だ。どんな名をカンジェンさんは考えてくれたのかな?


「まずはミヨ、お前からだ」

「はい!」

「……お前の名は、ミヨ・リュミエーレ。世界に光をもたらす者として、光という意味を込めさせてもらった」

「リュミエーレ……」


 なるほど、闇の魔力を持つ者と戦う勇者、だから光か。いいんじゃないかな。


「そして、ナオ」

「はい」

「お前の名は、ナオ・シュヴァリス。ミヨを守り共に歩む者として、守護者という意味を名に込めた」

「シュヴァリス、か……なんかもう付き人なんだか守護者なんだか分からなくなりますね」

「そう言うな。良い名じゃないか」


 あら、予想外のところからフォローが入ったな。まさかレーンから言われるとは思わなかった。

 なんにせよ、これでこの世界での俺達の名が決まったな。……もう、吉沢直太って名乗る事も無いのかなぁ。


「……これで、私が君達に出来る事は無くなったな」

「そんな事ありませんよ。俺達はここに帰ってくるんだから、お元気で居てもらわなくては困ります」

「ふっ、それもそうだな。村長として、君達がこの村に帰ってくるまで守り通すという役目が残っていたのだったな」

「うん、私、頑張る。頑張って、絶対ここに帰ってくる」

「あぁ、俺も誰かさんと決着とやらを着けなきゃならないようだし、なんとかしてここに帰ってこないとずっと恨まれそうだ」

「ふん、言っていろ」


 ……良かった、本当に……最初に会えた人達が、この人達で。

 さーて、堅苦しいのはここまでだ。今日は、後はゆっくり休んで明日に備えよう。明日、良い天気だと最高だよなぁ。


 夕食を済ませて、レーンもカンジェンさんも自分の寝室へと戻った。俺とミヨちゃんは、部屋が無いからこの居間で寝る事になるんだけどさ。

 床に何枚か敷き布を重ねて敷いて、それの上に寝てます。まぁ、二人暮らしだったところに急遽転がり込んだんだからこれは我慢しなきゃならんだろう。

 で、今は寝床も用意出来て、そこに横になってるところ。隣のミヨちゃんは疲れたのか、もう眠ってるのかな。

 俺はなんとなく寝付けなくて、ぼんやり天井を見てる。なんというか、ついにこのミナスティアを旅するんだなぁと思って。

 知識として、どんな町があるとかどんな者が居るとか、そういうのは教わったけど……やっぱり自分の目で見ないと分からない事っていうのはあると思う。そういうのを考えると、地味にワクワクしてる自分も居るんだよな、これが。

 ん? ……なんだ、レーンの部屋の方の扉が開いたぞ? 足音もするって事は、レーンが出てきたのか? もう日も沈んだこの時間に何を?


「……ナオ、まだ起きているか?」

「ん? あぁ、まぁ」

「そうか。……少し風に当たりに行くんだが、付き合わないか?」

「珍しい誘いだな。どういう風の吹き回しだ?」

「特に意味なんか無い。いいから付き合え」


 あらら、提案から命令に変わってしまった。……まだ寝付けそうもないし、付き合うのも悪くないか。

 ミヨちゃんを起こさないようにそっと家から出ると、涼しい夜風が頬を撫でていった。今夜は満月だ。


「あ、しまった!」

「ん? どうかしたのか?」

「……ナオ、お前……なんともないのか?」

「いや、夜風が心地良いくらいでなんともないけど?」


 なんでそんなに警戒してるんだ? 警戒されるような事あったかな?


「えーっと、ウルフェンについては教わっているよな?」

「あぁ、なんせ自分がそうだからな」

「なら、よーく思い出してみろ」

「思い出す? ウルフェンの事を? ……あ」


 そう言えばなんか、ウルフェンは満月の夜に内に眠る野生が目覚めるだかなんだかって聞いたなぁ。それを警戒してたって訳だ。

 あー、もしかして寝付けなかった理由はそれか? 確かにそう言われると微妙に納得出来なくもないけど。


「思い出したようだが……平気か?」

「まぁ、多分」

「そ、そうか」


 家の壁にもたれ掛かるようにして、レーンと並んだ。そう言えば、この一週間でこんな風に静かに並んだのは初めてかもしれない。

 穏やかな風の中で、レーンの白い髪の毛が揺れる。月明かりに照らされて、銀色に輝いてるみたいだ。

 っと、そんなのに見蕩れてたら、また何を言われるか分かったものじゃないな。月でも見てるか。


「一週間か……短かったなぁ」

「ん? あぁ、そんなに長くはなかったな。でも、楽しかったぞ」

「楽しかった、か……私もきっと、そうなのだろうな」


 ふーん、こんな穏やかな顔してるこいつは初めて見るかもしれない。俺には常に目を釣り上げて噛み付いてきてたから。


「私の母上がどうなったかはもう知っているだろう」

「あぁ、カンジェンさんから聞いてる」

「……憧れていたんだ。両親や兄弟が居る、村の同じ年くらいの皆の事を。両親が居るって言うのはどういう感じなのか、兄弟が居るっていうのは……どんななのかって」

「兄弟か。俺も昔は欲しいって思ったなぁ」


 俺も一人っ子だったから、こいつの気持ちは分からないでもない。と言っても、あっちに居る時の話にはなるけどさ。

 かなり小さい時に、親父も母さんも、俺を産んで以降子供が出来ないってボヤいてるのを聞いた事があったんだ。元々、母さんの方が体が弱くて、俺が生まれた事自体がかなり幸運だったそうだ。

 そんな事も知らなかった小さい頃の俺は、よく親父や母さんに弟が出来たらって話をしてた。……でも、思い出してみると、弟が欲しいとは言った事が無かったっけな。

 小さいながらも、分かってたのかもしれない。俺には、弟や妹は出来ないって、なんとなく。


「まるで随分昔のような言い方だな」

「随分昔なんだよ。もう、15年以上も前の話さ」

「15年? その背格好から15年も前じゃ、まだ赤子同然じゃないか」

「あぁそっか、こっちだとまだ18だったっけ」

「……お前、前の世界とやらでは幾つだったんだ?」

「27。と言っても、お前は俺達が別の世界から来たなんて、信じてないんじゃなかったか?」

「そうそう信じられる訳ないだろう。……でも、今のを聞いて妙に納得した部分もある。なるほど、それだけ年上なら、軽くあしらわれたのにも納得出来る」


 精神年齢はそのままだからな。それだけ、見てきたものもあるって事さ。逆にそれだけの歳なのに、噛み付いてくるのをあしらえなかったらどうかと思うだろ。


「異世界か。お前とミヨは、本当にこことは違う場所から来たのだよな」

「至極迷惑極まりない理由からな。何が悲しくて死んでまで苦労させられるんだかな」

「転生、か。だがそれをしたからこそ、私はお前達に会えた。不思議なものだ」

「全くだ。……今晩は何時になく饒舌じゃないか」

「満月はウルフェンに限らず、全ての生き物に影響を与えると聞く。その所為かもな」


 ふっと笑うレーンの横顔に、何故か目を奪われた。月明かりの所為か、妙に目に焼きつくような感じがする。

 いや、気の迷いって奴だな。多分満月がウルフェンに与える影響とか言う奴の所為だろう。俺がレーンに見蕩れるなんてこと、普通に考えて有り得ないだろ。だってこいつ、男だし。


「ん、どうかしたか?」

「あぁいや、なんでもない」

「……そろそろ休むか。明日に響いても困るだろ」

「そうだな。明日か……」

「なぁ、ナオ」

「ん?」

「もし……いや、なんでもない」


 なんだったんだ? あ、レーンが家の中に戻っていく。……俺も寝るか。

 満月の夜、か……今後、ちょっと気を付けた方がいいかもしれないな。大した事は無かったけど、微妙に影響がある事は分かったし。


 なんとか眠りについて、次に気が付いた時にはもう窓から朝日が差し込んできてた。外は快晴、良い旅立ちの朝だ。若干の寝不足感はあるが。


「お早う、ナオさん」

「ん、あぁ、お早うミヨちゃん」

「起きたか、ナオ。夜にレーンと話をしていた割には早い目覚めだな」

「え!? し、知ってたんですか!?」

「この村の夜は静かだからな。レーンがあのように語るのも初めて聞いたものだ」


 あー、レーンが聞いたら相当恥ずかしがるだろうさ。普段あんな語りなんて何があってもしそうに無いもんな。

 あれ、そういやそのレーンは何処へ行ったんだ? 朝なのに何処か行ったのか?


「あの、カンジェンさん、レーンは何処に?」

「ん!? いやその……まぁ、後から見送りには来ると思うが」


 なんだ? カンジェンさんの言葉が異様に引っ掛かる。何かある、絶対に何かあるぞこれは。


「それより、私が昔使っていた物にはなるが、荷物を入れる道具袋があったのでな。持っていくといい」

「え、あ、ありがとうございます」


 話をすり替えられたか……まぁいい、何かあっても後で分かるだろう。

 ん? 受け取った袋がなんか重い。なんだ?


「カンジェンさん、中に何か?」

「餞別の傷薬等を少々、な。道中で必ず必要になるだろう」

「いいんですか? 今までもお世話になりっぱなしなのに」

「気にする事は無い。娘と息子の為だと思えばな」


 息子……は、俺の事だよな。娘はミヨちゃんだし、なんかそう言われると照れるなぁ。

 さよならじゃない、帰ってくるからこそ、帰ってきたい場所を発つからこそこの言葉はあるんだよな。それを言える人が居るっていうのは……いいものだ。


「……じゃあ、行ってきます」

「カンジェンさん、行ってきます!」

「あぁ、行ってきなさい。そして、必ず帰ってきなさい」


 誰かに抱きしめられる事がこんなにも温かいとは思わなかった。

 たった一週間なんだ、この人と一緒に過ごしたのは。それでも、ずっと一緒に居たように感じる。


「……最後に一つだけ聞いていいですか?」

「なんだい?」

「俺達に良くしてくれたのは、神託があったからですか?」

「……だとしたら、なかなかの演技派だとは思わんかね?」


 ははっ、野暮な事聞いたな。あぁ、これまでの訓練や生活が演技や上っ面でやった訳じゃない事は、一緒に居た俺達が1番分かってる。

 笑って背を軽く押してくれるカンジェンさんを、俺は信じるよ。いかんな、歳を取ると疑い深くなっちまって。

 家から出ると、村の皆が俺達を見送りに出てきてくれてた。……ん? いや、なんで皆俺達が出てくる時間を知ってるんだ?


「やっと出てきたか。遅いぞ、二人とも」

「あ、え!?」

「レーンさん? あれ、いつもと着てる鎧が違うね」

「うむ、あれは守部の証ともなっている鎧だからな。旅に出るので父上に返上した」


 いつもは白い金属で出来た鎧を着ているレーンが、今は緑色の鎧を着て村の出入り口になっている門のところに立っている。って、旅だって? まさか!?


「レーンお前、俺達と一緒に来るつもりか!?」

「あぁ。お前に負けて私もまだまだだと言う事は分かったし、より高みを目指すのには良い機会だと思ってな。それに、旅が終わればここに帰ってくるのだから構わんだろう」

「いやまぁ、朝起きてから行くの一点張りでな、私が先に折れてしまったのだよ」

「いやそこは頑張りましょうよカンジェンさん!」


 って事は、皆旅立つレーンを見つけて出てきたって事か! おいおい……。


「レーンさん、一緒に来てくれるの!?」

「そのつもりだよ。ミヨも剣を扱えるようになったとはいえ、まだ実戦を経験した訳じゃない。ナオだけじゃ守り通せるか心配だからな」

「まぁ、正直助かるが……いいのか? 間違い無く危険だぞ?」

「もう決めたんだ。それに、神が直接手を下す程の相手がこの世界に居るのなら、いずれこの村も危険に陥る可能性がある。守部として、見過ごす訳にはいかん」


 こりゃ、何を言ってもここに残るつもりは無さそうだな。……行くしかないか。


「分かった、降参だ。ついて来るって言うなら、頼りにさせてもらうからな?」

「論ずる必要も無い。寧ろ、お前が頼りにならなかったら置いていくからな」

「勘弁してくれ……」

「じゃあレーンさんとナオさんと三人で旅出来るんだね! やった!」


 ……まぁ、ミヨちゃんも嬉しそうだし、レーンも自分から行く気になったんだからこれ以上俺が言う事は無いか。


「……ナオ、済まないがレーンを頼むよ」

「俺が出来る範囲って事になりますけど、頑張らせて頂きます」

「全く、嫁入り前だと言うのに、守部にまでなった娘を送り出す事になるとは……」


 ……はい? 今カンジェンさんなんて言った!? む、娘ぇ!? って事は、レーンは!


「ほら何をしているナオ。行くぞー」

「ナオさん、早く早くー」

「ちょっと待って! 今もの凄く大事な事カンジェンさんがぼそっと言ったんだって! ちょっとー!」


 どうするんだこれぇ、ど、どうなるんだぁ!?

「はい、という事でミナスティア情報局開設! 第一回目は~……」

「ちょい待ち。一人で突っ走り過ぎだっての。まずミナスティア情報局ってなんだよ」

「いいんですよぉ別に名前は。ただの解説コーナーじゃ味気ないから付けただけですから。という訳で、第一回目の解説は~……はい! ナオ・シュヴァリスさんについてです!」

「うん、俺だな」

「反応が蛋白! 私は寂しいですよナオさん!」

「いや、だって何を言えばいいか分からないしな。とりあえず自己紹介でもすればいいのか?」

「え~? それじゃあ私が居る意味ないじゃないですか~。そうですねぇ……私が質問をしますんで、ナオさんが答えていく感じでお願いしますよ。ツッコミも交えつつ」

「はいはい……ってなんでツッコミ!?」

「オッケーそんな感じです! んじゃあまずはお名前から聞いていきましょうか」

「なんだかなぁ……えっと、俺の名前はナオ・シュヴァリス。東京に居た頃の名前は吉沢直太で、ごく普通のサラリーマンだった」

「グッド! ついでに過去の自分を語っちゃうのはナンセンスですけど! んじゃあ性別と種族なんかをどうぞ!」

「煩いわい! えっと、性別は男、ミナスティアではウルフェンっていう狼の獣人だ。でもなんでかベースはシベリアンハスキーなんだよな……」

「いいじゃないですかー、シベハスは可愛いですよ? ミヨちゃんにはウケてたし」

「ウケ狙いかよ!」

「もういいんで、何が出来るかとかをどうぞ!」

「流された!? えっと、出来る事は……格闘術って言うのかな? とにかく素手での戦いと、氷と水の魔法が使えるようになったな。それ以外は、まだパッとした特技みたいのは無いかな」

「性格も温厚で、誰とでも当たり障り無く立ち回ろうとする一般的な人ですね。面白みの無い……」

「はいそこ、そういう地味に傷付く事をぼそっと言わない」

「ま、そもそもは手違いでお亡くなりになった残念な人ですからね。普通でも止む無しです」

「うん、一発殴ろうか? それとも凍らせてやろうか? 水浸しでもいいぞ?」

「ちょちょっ、怖ーい。神様虐めたらいーけないんだぞー!」

「……なんか疲れた。一回目はこんなもんでいいだろ?」

「えー? もっと色々情報出していきましょうよー。スリーサイズとか」

「男のスリーサイズなんて出してどうするつもりだよ? とにかく、今もうそんなに語れる事なんて無いんだし、こんなもんでいいだろ」

「そうですねー……ならば、ミナスティア情報局、第一回はここまで! 第2回目を待て!」

「……この枠、続けるのか?」

「続けます! 私の出番の為に!」

「そ、そうか……」

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