77話
「質問があるのは構わんがお前らも何者か教えてくれないか?」
オーバーロードナイトと名乗った男が言う。
「あぁ、俺達は武器屋旅団という行商人だ。………一応な」
ケンが答えた。
一応と付ける辺り、ケン自身は武器屋旅団の仲間というよりも雇われとか、単なる付き添いだという思いが根底にあり、旅団とは何処か一線を引いている事を伺わせる。
「行商人?」
「仲間とはぐれた。アンタは他に俺らみたいのを見なかったか?」
「……いいや? 見なかったな。俺も仲間が殺られてはぐれたクチだからな」
その答えにユリが肩を落とした。
一方、ケンとミクはこれだけ広い廃墟エリアならそれも仕方無いと思う。
「まぁ、それならそれで良いさ。合流場所は決めてあるからな」
やはり合流地点に行くしかないとケンは肩をすくめながら言った。
「それは結構なことだ」
オーバーロードナイトの男が返す。
「あぁ、その合流地点というのがそちらの要塞なんだが……。案内してもらえないか?」
ケンが尋ねた。
男はそれに驚いて目を丸くする。
「おいおい、冗談だろ?」
勝手に自分達の要塞が合流場所にされ、更にそこまで案内しろというのは厚かましくはないかと男が声をあげる。
「こっちは命の恩人だ。対価として考えれば安いもんだろ。それにアンタもお仲間が全滅したなら戻るしか無いんじゃないか?」
「そりゃそうだけどな……」
部外者をそうそう連れ込む訳にはいかないだろうと男は顔をしかめた。
「まぁ、案内してくれなくても私達の仲間は勝手に向かうだろうし、私達もそのつもりだけどねー」
そう言ったのはミクだ。
あまりにも自分勝手な話に男は思わず顔をしかめる。
しばらく考えて舌打ち。
3人を見回した。
「分かったよ。要塞まで案内する」
その言葉にユリはホッと胸を撫で下ろし、ミクとケンに微笑む。
「ただし、取引が出来るかは知らんぞ」
「別に構わないさ。正直、そこまでの物資は持っていない」
「じゃあ、何しに来るんだ?」
「さぁな。団長が決めたことだ。俺としては観光のつもりだ」
「要塞は観光地じゃない」
ケンの言葉に男が苦々しく言った。
「観光地だから観光するんじゃなくて、観光する人がいるから観光地になるんですよー?」
気の抜けた声でミクが言ってクツクツと笑う。
「全く……! そういえばお前らの名前を聞いてなかったな」
食えない奴らだと男は思いながら尋ねる。
こんなのを連れ込んで大丈夫だろうかと不安にもなった。
「佐原ケン」
「水野ミク」
「白河ユリ、です」
それぞれが答えた。
「俺は金田圭一。……要塞までの案内はするが、それだけだからな。それ以上のことは俺は知らんぞ」
金田はそう言って自分のレーザーライフルを持ち直す。そして歩き出した。
「それは構わないさ。後の事はその時になって考える」
ケンが言って金田の後に着いていく。それにミクとユリも続いた。