46話
このギジの世界にいる佐原ケンは現在15歳の少年である。
このくらいの年齢の少年は、物事の大半を勢いで決めるのだ。
ケンは一般的な同年代と比べると、世界の違いによって多少性格がやさぐれてしまっていたが、そういった根本は変わらない。
「おい! お前ら一体何だ!」
アジトの中にいた獅子王会構成員が叫ぶ間に、3人はそれぞれ手に持った得物で派手にレーザーを放って、それらを排除していく。
そこには作戦どころか、ロクな戦術すら無かった。
しかし、敵側である獅子王会側も泉を拉致して数時間で、しかも真っ正面から少人数で乗り込んで来るとは思っておらず、完全に奇襲を受ける形になる。
その予想外の奇襲に敵は混乱した。統制された動きは出来ず、アジト内の構成員は各個撃破されていく。
アジトの中はそれなりに広かったのだが、それでも室内という限定された空間である為に、多人数である獅子王会側の動きが制限される事と、室内にある机やらソファーやらのガラクタを盾に出来たのがケン達に有利に働いた。
だが、それでも競闘を取り仕切るだけの大手チームである。
中には腕っぷしのある者もいた。
「がっ……!」
1人の男が、敵の攻撃を避けたケンを銃床で殴り、そのまま組伏せたのである。
「おっと!」
男の下で今にも撃ち殺されそうになっていたケンにミクが気付く。ケンの上で馬乗りになっている男の胴体にレーザーを撃ってこれを助けた。
「ちょーっと、油断してない?」
自分のレーザーライフルを肩に担ぎながらミクがククっと笑う。
「どうも……」
ケンは男の死体をどかして答えた。
「2人とも、また来たぞ!」
階段から降りてくる敵を狙撃用のレーザーライフルである“物干し竿”で撃ちながら加村が叫んだ。
「流石に人数が多いな……」
「この騒ぎで泉さんだっけ? 殺されなければ良いけどねぇ」
「人質だからねー。交渉の為にも何も無しに殺すことは無いでしょ」
ケン、加村、ミクがそれぞれ言いながら部屋に散らばっていたテーブルや訳の分からない置物、敵の死体などでバリケードを作りながら、階段から次々と降りてくる敵に応戦する。
「しかし、これだけの人数を君は1人で相手するつもりだったのかい?」
加村が尋ねた。
「アジトにいる人数なんてたかが知れていたからな……。それに実際に戦う奴等はここにはほとんどいないだろう」
自分の“でんでん銃”のバッテリーを交換しながらケンが答える。
「どういう事?」
横からミクが口を出す。
「この規模のチームだ。傘下のチーム、競闘の試合の取り決め、その他諸々の管理だけでも相当な手間と人数が必要になる。このアジトはそういった管理とか、事務とか、そういったのをやる連中が集まっている」
「じゃあ、実戦をする人達は?」
「多分、街のどっかで飲んだくれているか、傘下のチームの訓練とか、助っ人で競闘の試合中だろう?」
つまり、このアジトは組織の方針や管理、運営を行う、企業で言うところの本社に当たるのだ。
組織は大きいほど、その運営は複雑なものとなり、それを処理出来るスキルを持つな人員が必要になる。
ここはそうした者と、それらに指示を出す組織の代表が集まっているのだ。
勿論、外敵に備えての警備もいるのだが、それは金で雇われたチンピラに過ぎない。
実際に競闘で戦う選手を警備に回し、万が一のことがあれば商売に影響が出てくる為に、多少腕が落ちても、低予算で替えが効くような者を雇っているのである。
そんな事をケンが話し終えた直後だ。目の前の敵が何かを放り投げるのが3人の目に映る。
それが手榴弾だと認識すると、3人はそれぞれ手に持った得物で弾幕を張りながらバリケードを飛び越えた。
そして着地すると同時に、バリケードの内側で手榴弾が爆発して、つい数秒前までいた空間とバリケードを吹き飛ばす。
「痛い!」
吹き飛ばされたバリケードの破片を背中に浴びながらミクが叫ぶ。
ケンは“でんでん銃”で弾幕を張るのを止めず、更に敵を2人倒す。飛んでくる破片は鎧が防いだ為に何とも無い。
加村は懐から手榴弾を取り出して、階段上に投げる。
ややあって爆発。敵の叫び声。
「さぁ、先陣を斬ってもらえるかなぁ?」
手榴弾の熱で焦げ付いた壁を見ながら加村が言う。
「言われなくても」
ケンが答えて走り出す。
「あー、痛たたた……」
自分もケンのような鎧を身に着けようかしらと思いながら、ミクはケンの後ろに着いた。
階段を抜けて、上のフロアに出る。
数人の男達の姿が見え、すぐさまケンが手榴弾を投げる。
爆風と断末魔の声。熱と吹き飛ばされた破片が鎧に当たるのを感じつつ“でんでん銃”を構えた。
「このビル、それなりの広さがあって助かったね」
後ろにいたミクが辺りを見回しつつ言った。
フロアがそれなりに広くなければ、お互いに手榴弾など迂闊に使えないからだ。
「何だってんだ!」
その階のフロア奥の扉から何人か男達が現れる。当然、獅子王会のメンバーだ。
「さっさと片付けるぞ!」
出来ればこのフロアに泉がいて欲しいと思いながらケンが言う。
3人がそれぞれ目星を付けた敵を撃つ。
次々と現れては抵抗する敵を倒し、抵抗する気の無い者は縄などで縛り上げて動けないようにする。
こうして、この階を3人は完全に制圧した。
「どうやらこの階にはいないみたいだね」
ミクが最後まで抵抗していた男にとどめを刺して言う。
「なら、上の階へ行くぞ。これなら下からも敵が来て挟み撃ちっていうことも無いだろう」
自分の“でんでん銃”のバッテリーを交換したケンが答えた。
「そうだな」
加村が答えた時である。
横目で階段を見た加村は、上から男達が降りてくるのを目撃した。
すぐに加村は狙撃銃である“物干し竿”を撃ち、それに気付いた2人も同じように各々の銃
を取る。
「動くな!」
3人の銃撃により何人か倒れるが、その中の1人が叫ぶ。
そこには泉の姿も見える。
男は後ろから泉の首に左腕を巻き付けて、右手に持ったリボルバー式の拳銃をその頭に突き付けていた。
「人質かい……」
3人はそれぞれ苦虫を噛み潰したような顔で、その光景を見た。