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思い出せない最強は、元妻に雇われている 「記憶のない俺は、知らない女に拾われた___その正体は元妻だった」  作者: お魚さん


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第21話


ケルベロスを倒したあと。


熱気の残る地面を踏みしめながら、


ユウとギンジは城へと歩いていた。



しばらく進む。


やがて――


巨大な城門が視界に入る。


黒く、重く、圧迫するような存在感。


「いますね」


ユウが静かに言う。


「ああ」


ギンジも短く返す。


迷いはない。



ギィ……


重い音を立てて、


扉を押し開ける。



中。


正面には、


上へと続く大階段。


その両端――


整然と並ぶ影。


魔族の執事たち。


全員が、


腰に剣を携えている。


微動だにしない。


だが――


「……」


ギンジの目が細くなる。


(できるな……)


(全員、Sランク上位ってとこか……)



「ようこそ、おいでくださいました」


声。


視線を上げる。


階段の踊り場。


一人の男が立っていた。


端正な佇まい。


無駄のない所作。


「執事長、“バルツ”と申します」


深く、綺麗なお辞儀。



「では……」


ゆっくりと頭を上げる。


そのまま――


指を鳴らす。


パチン。



一斉に。


執事たちの視線がこちらへ向く。


同時に――


殺気。


空気が、張り詰める。


バルツが微笑む。


「消えてもらいます」



――抜剣。


執事たちが一斉に踏み込む。



「ギンジさん……」


ユウが口角をあげながらギンジを見る。


「よーいどん」


「てめぇ」


ギンジがニヤリと笑う。


◆戦闘開始◆


ユウは――剣を抜かない。


身体強化、最低限の攻撃魔法。


それだけで、


執事たちを捌いていく。


殴り、避け、崩し、放つ。


無駄がない。



一方、ギンジ。


刀に魔力を流す。


刃が――赤く染まる。


流れるように振るう。


一太刀ごとに、


一人、また一人と崩れ落ちる。


冷静、正確、そして速い。



数人倒したところで、


ユウが視線を上げ、剣に手をかける。


「あの執事長――」


「俺がいきますね」


「ああ、まかせた」


――抜剣。


同時に、


ユウの姿が消える。


次の瞬間には、


バルツの懐。


キンッ!!


細剣レイピアが閃く。


ユウの一撃を受け止める。


「……」


ユウの口元がわずかに緩む。


(おっ……やるなぁ)



「さようなら」


バルツの細剣が動く。


――速い。


いや、速すぎる。


斬撃!!斬撃!!斬撃!!


嵐のような連撃。


だが――


当たらない。かすりもしない。


ユウは、


すべてを躱していた。


やがて。


斬撃が止む。



「……」


ユウは、


剣を――納める。


そのまま、


背を向ける。


何事もなかったかのように、


ギンジの方へ階段を降りていく。


「……撤退ですか?」


バルツが口を開く。


余裕の笑み。


「賢い判断で――」



◆その瞬間◆



視界が――ズレた。


(……?)


違和感。理解が追いつかない。


(まさか……)


(斬られ……た?)


(いつだ……?)


(何も……見えなか――)



◆ゴトッ◆



首が落ち、身体が遅れて崩れた。


血が、遅れて噴き出す。



◆その頃◆



「終わりだな」


ギンジが最後の一人を斬り伏せていた。


刀を払い、血が散る。


ユウが隣に並ぶ。


「加勢は必要なかったですね」


二人、わずかに笑う。


スッとギンジが前を見る。


「いくぞ」


「はい」


視線の先の階段の上。


その奥――


◆玉座の間◆


二人は、迷いなく歩き出した。

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