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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

キラキラ 星に願いをしてみたら

作者: 風風風虱
掲載日:2025/12/23

☆☆☆

「お腹、空いたなぁ〜」


少年は寝っ転がったまま、そんなことを思いました。

開いた天井から満天の星がキラキラ輝いて見えました。

今は夜。

今夜は月の光もありませんでした。


少し前でしたら星の光を邪魔する街の光があったのですが、今はそんなものはありません。

街の光どころか、街自体がなくなってしまっていました。


なにかとても昔の話のようでした。

頭がぼんやりしてあまりうまく思い出すことができないのです。


それはいつもと同じ朝だったと思うのです。

ただ、突然けたたましいサイレンが鳴り始めました。それが異変の最初でした。

サイレンを聞いたお父さんとお母さんの顔色がみるみる白くなったのを今でもよく覚えています。


それから空から爆弾が降ってくるようになりました。


住む家がなくなり。

次に、学校がなくなり。

それから、病院がなくなりました。


友達がいなくなり。

先生が見えなくなり。

父さんと母さんを失いました。


少年は今、廃虚と化した建物に一人寝っ転がって夜空を見上げているのでした。


それが始まるまで夜空は街の光に照らされ、黒く淀んでいました。

それが始まった頃から、街の光が消えていき、空には無数の星がまたたきはじめました。


それをみんなは、“戦争”と呼んでいました。


少年は、無数に星がきらめく夜空を見つめながら思いました。


「ああ。お星さま。この世から争いが無くなればよいのに」


少年の願いを聞いたかのように、夜空の片隅で流れ星が一筋、尾を曳いて流れました。


★★★

「なんでいまだにあいつらを排除できないでいる?

いつまでかかるというのだ?

お前の自慢の戦車や飛行機はどうした?!

この役立たずめ!!」


その男の人は目の前の軍服の男の人を思い切り怒鳴りつけていました。

軍服の男の人は軍隊で一番偉い人なのですが、目の前で怒っている人は国で一番偉い人だから仕方がありません。

軍服の男の人はただ、亀のように首を縮こませるぐらいしかできませんでした。

それでも亀みたいに完全に首を引っ込ませることはできませんでしたので、恐る恐る答えました。


「彼らは予想以上にしぶとく、廃墟や瓦礫の下からゲリラ戦を仕掛けておりまして。

また他国からの人道的支援物資が横流しされているようで、なかなか、とどめを刺すことができずにおります」

「ならば支援物資なんて遮断してしまえ!」

「そんなことをすれば、罪もない民間人が苦しむと世界中からまた非難されてしまいます」

「うるさい!

そもそもお前たちは一週間でやつらを始末できると言ったではないか。

それなのにいつまでたっても始末できていないから私が世界中から非難されなければならないのだろう!」

「いえ、お言葉ですが、一週間で計画は達成できておりました。

それを閣下が欲を出して全エリアを制圧する、などと……」

「だまれ!!」


男の人の一喝で軍服の男の人の首がもう一ミリほど肩に引っ込みました。


「あの地はもともと我らのものなのだ。

千年前の領土を取り戻そうとしてなにが悪いというのだ。

あのような無能で力のない民族があの地を支配しているなどと考えるだけで虫唾が走る。

つべこべいわずにとっとと取り戻せ!」


その時です。

ドカーンととても大きな音がしました。

床もがたがたと揺れ、二人は同時にしりもちをつきました。


「な、なにごとだ。敵の攻撃か?」

「いえ、我が国の防空システムは完璧です。どんなミサイルだって撃ち落とします」


そう言いながら、二人は恐る恐る窓から外の様子をうかがいました。

官邸の目の前の庭に大きな穴が開いていました。


「なんだね、あれは?」

「さあ、穴のように見えますね」

「やっぱり敵の攻撃じゃあないのか!」

「いえ、いえ、そのようなことは……」


二人がぶつぶつ話し合っていると、穴から突然何かが出てきました。

黒く細長い、何か金属製のものでした。

クの字に折れ曲がると穴のふちにざくりと刺さりました。

と、もう一本同じものが穴から飛び出てくると、やはり地面に突き刺さりました。

アッと思う間もなく三本目が現れて、これも地面に突き刺さりました。


「なんだあれは?」

「さ、さあ、なにかの足のように見えますが」

「足だと? 一体全体、なんの足だというのか?

て、敵の秘密兵器じゃないのか!」


二人がそんなことを話していると、足と言われた三本の柱がぐぐっと伸び上がり、穴から球形のものが現れました。

足と同じように真っ黒で、ただ星の形をしたものが二つ、キラキラ光っていました。

まるで目のようです。


その不思議な物体はしばらく左右を見回していましたが、三本の足を器用に動かして歩き始めました。

ドシン、ドシンと地響きを立てながら少し歩くと、それは耳障りなキンキン声で喋り始めました。


《我々は、キラキラ星からやってきたキラキラ星人である。

この星は、もともと我々のものである。

はるか昔、およそ三千万年前、環境悪化のためこの星を捨て、キラキラ星へ移住したのだ。

だが、この星の環境が安定したために我々は再び戻ってきた。

さあ、猿どもよ、この地を我々に明け渡せ。そうすれば命ばかりは助けてやろう》


驚いたのはその国の一番偉い人です。顔を真っ赤にして叫びました。


「あいつらは何を言っているのだ。この地は我々のものだ。昔から我々の物なのだ!」

「し、しかし、三千万年前となれば奴らのほうが優先権があるのではないでしょうか?」

「なにを馬鹿なことを言っている。かまわん。所詮は力あるものが正義だ。奴らに我々の力を思い知らせてやれ!!」


国で一番偉い人に命じられた将軍は、電話で飛行機と戦車を呼び集めました。

数分もしないうちに空が真っ黒になるほどの飛行機がやってきました。

飛行機がありったけのミサイルを発射します。


キラキラキラ~


キラキラ星人は目から金色の光を放ちました。

するとミサイルは空中でみんな爆発してしまいました。


キラキラ キラキラキラ~


キラキラ星人はさらに金色の光を放つと、空を飛んでいる飛行機が次々と火を噴いて墜落していきました。

ならばと、今度は戦車の大砲が一斉に火を噴きました。

キラキラ星人の真ん丸の体に弾が当たり、バカン、バカンと破裂しましたが、キラキラ星人の体には傷一つつきません。


キラキラキラ~


キラキラ星人の目からまた金色の光線が発射されました。

すると戦車がドロドロに溶けてしまいました。


「ダメです。我々の武器ではまるで歯が立ちません!」


将軍は泣きそうな声で言いました。それを聞いた国で一番偉い人は目の玉を飛び出さんばかりに怒りました。


「なんて役立たずどもだ。こうなったら同盟国である大国の大統領に力を貸してもらおう!」


国で一番偉い人は、机の引き出しから赤い電話を取り出しました。

それはいつも味方をしてくれる大国の大統領への直通電話、ホットラインと呼ばれるものでした。


「ああ、もしもし、大国の大統領様ですか?

実は変な奴が現れまして、私たちの土地を不当にも奪おうというのです。

とても手ごわい相手で、ええ、キラキラ星人とか名乗っているふざけたやつらなのですが、どうかあなたの力でこいつらを……

え? なんですって、あなたのところにもキラキラ星人を名乗る輩が現れて、暴れて困っている、ですって?

え、なに? 音がうるさくてよく聞き取れません……

もしもし、もしもし…… 切れた」


「大変です、テレビを見てください。

あのキラキラ星人というやつらは世界中に現れているみたいです」


将軍に言われてテレビを見ると、いろいろな国の都市が、目の前のキラキラ星人とそっくりな球体に破壊されているシーンが映し出されていました。


「なんということだ。こんなことがあるだろうか」


国で一番偉い人が呆然としていると、窓のところから先ほどのキラキラ星人がのぞき込んできました。


《この星は我々のものだ。さっさと消えてしまえ》


キラキラ~


キラキラ星人の目から光線が発射されました。

それっきり国で一番偉い人も将軍も消えてなくなってしまいました。


☆☆

「お腹、空いたなぁ〜」


少年は寝っ転がったまま、そんなことを思いました。

もう何日も何も食べていません。

少し前までは時折空から食べる物や薬が降ってきたのですが、それもこのところすっかりなくなっています。


「世界中の人たちはもう僕らのことなんか忘れてしまったのかなぁ」


少年は変わってしまった世界を悲しいと思いました。

変わったと言えば、最近、東の遠くの方で暗い煙がもくもくと上がるようになりました。

昼間、少年はそれを見て、また、どこかで誰かが争いごとをしているのだろうと思うのです。

それでも夜になると空には相変わらず、無数の星が静かに輝き始めるのでした。


「ああ。お星さま。この星から争う人たちが居なくなりますように」


少年の願いを聞いたかのように、夜空の片隅で流れ星が一筋、尾を曳いて流れました。


★★

キラキラ星人たちが廃墟になった都市を闊歩しながら、生き残っている人たちに光線を浴びせ、消し去っているところへ、真っ赤な火の玉が空から落ちてきました。


ズガガーン


大地が揺れ、地面に大きな穴が開きました。

キラキラ星人たちが何事かと穴の周りに集まってきました。

すると、突然穴の中から四本の足が飛び出てきました。

四本の足がえぐるように地面をとらえると、穴の中から青い六面体の物体が現れました。

四つの面には赤く輝く目と足がくっついていました。


【吾輩はギラギラ星人でアール。

吾輩たちは遠く一億年ほど前にこの星の支配者であったのでアール。

争いの末荒廃したこの星を捨て、ギラギラ星に一時避難していたが、この度、戻ってきたのでアール。

さあ、お前たち、とっととこの星から出ていくのでアール】


ギラギラ星人と名乗る青い六面体は、周囲を取り巻くキラキラ星人たちに向かってそう宣言するのでした。


《なにを馬鹿なことを言っているのだ。この星は我々のものだ。出ていくのはお前のほうだ》


キラキラ星人たちは口々に叫びました。

ギラギラ星人は四つある目で騒いでいるキラキラ星人たちを観察していましたが、いきなり目から真っ赤な光線を発しました。

四つある目から、ほとんど同時にです。


ギラギラギラ

ギラギラ~

ギラギラギラ

ギギギギ ギラギラ~


キラキラ星人たちは真っ赤な光線を受けると、たちまち塵のように消えてしまいました。

しかし、キラキラ星人たちはまだまだたくさんいます。

残ったキラキラ星人たちがギラギラ星人に向かって金色の光線を発射しました。


キラキラ~


しかし、ギラギラ星人の青い体は金色の光線をほとんど反射してしまいました。

それでも多少は効果があるようで、ギラギラ星人は少しよろめきました。

キラキラ星人たちはそのチャンスを逃すことなく、さらにキラキラと光線をギラギラ星人に浴びせかけると、ついにギラギラ星人は動かなくなりました。


ところがです。

穴の中からもう一体、ギラギラ星人が現れました。

そして、もう一体。

もう一体と、穴からギラギラ星人がどんどん出てくるではないですか。


キラキラ星人たちも負けずに仲間を呼び集めました。

キラキラ星人とギラギラ星人たちの戦いは、どんどん激しさを増していきました。


ギラギラ~

キラキラ~

キラキラ~


互いの光は相手の体を焼き、大地を砕き、雲を散らし、空を真っ赤に染め上げるのでした。


「……もう、何も見えなくっちゃった」


少年は寝っ転がったまま空を見上げました。

けれど星は見えません。月も見えません。

ただ、炭のような真っ黒なものがあるだけでした。


以前、東の遠くで上がっていた黒い煙が、いつのまにか北でも上がり、南でも上がり、そしてついには至るところで黒い煙が立ち登り、空全体を真っ黒に染め上げてしまったのです。


もう、今が昼なのか夜なのか、わからなくなっていました。

願うべき星すら見つけることができなくなっていました。


それに少年はもうあまり、考えることが難しくなっていました。

寒くて、ひどく眠いのです。


「もういいや。もう、何もかも無くなってしまえばいいのに」


少年は、かすれた声で小さくつぶやきました。


真っ黒な空を引き裂き、巨大な隕石が降ってきました。

まるで少年のつぶやきが、その隕石を呼んだかのようでした。


ギラギラ~

キラキラ~

キラキラ~


キラキラ星人とギラギラ星人が激しく争っているところに、その隕石は落ちてきました。


ドガドガドガガーン


ものすごい大きな音と激しい地響きに、ギラギラ星人とキラキラ星人たちは驚いて、戦うことを一瞬忘れてしまいました。


すると、隕石で空いた穴から真っ赤な足が五本現れました。

なんだろうとギラギラ星人たちが見守っていると、五角形の柱が姿を現しました。

ズブリと、その重さで五つの足が地面にめり込みました。


『俺たちはギランギラン星人だ。

この星は十億年ほど前に俺たちが征服していた。

なんでもいいからお前たちは出ていけ』


ギランギラン星人と名乗る、その赤い五角形の柱のようなものは、五つの足を震わせ、五つの目をギランギランと輝かせて言いました。


【そんないい加減な話にはつきあえきれないのでアール。

お前こそ出ていくのでアール】


と、ギラギラ星人が言いました。


《いいや、いいや、出ていくのはお前たちだ。みんな消し去ってやるぞ》


キラキラ~


キラキラ星人が目から光線を発しました。


ギラギラ~~


ギラギラ星人も負けじと目から怪光線を発射しました。


ギランギラン~


ギランギラン星人も五つの目から光線を発射し、お腹と頭についている口から毒ガスをもくもくと吐き出して応戦しはじめました。


世界はキラキラとギラギラとギランギランした光であふれかえりました。


真っ黒な空から、ちらりほらりと白いものが舞い降りてきました。


雪でしょうか?


それとも別の何かでしょうか?


少年は寝っ転がったまま、目をつぶって身じろぎ一つしません。


その少年の体に、その白いものは少しずつ舞い落ちていきます。

少年は、もう何も言いません。

何も感じないのかもしれません。


白いものはやむことなく、少年の体を覆い隠そうとするように降り続けます。

やがて、完全に少年を覆い尽くします。

それでも白いものはやむことなく、降り続けます。


世界中を覆い尽くすように、白いものは延々と降り続けます。

世界のすべてをなかったことにするように、ただ、延々と降り続けるのでした。

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