平和?な水族館デート〜裏〜
夏樹と結衣の号令で集まった響と柊は朝の4時から翔の家の近くで張り込みをしていた
「お前らアホみたいに早すぎだって絶対」
「菜々は私達と同類よ?じゃあこの時間から出かけるでしょ」
「なるほど確かに」
アホのアホ理論に納得してしまうアホ柊
そして出てくるのを今か今かと待っている何故かノリノリのアホ響
4人のアホ達は無事に尾行を成功させれるのだろうか
そして1時間後、進展無し
2時間後、進展無し
3時間後、進展無し
「クッソが騙されだぜ!アホ女共が!ぜんっぜんどうるいじゃないじゃねぇか!」
「うるっさいわね!ちょっと計算違いだっただけじゃない!」
「夏樹の言う通りだ!念には念をってやつだろーが!」
痺れを切らした柊に噛み付くアホ2人。その中でも唯一ずっとワクワクしながら響は待っていた
そしてそこから更に1時間後、ようやく菜々と翔は姿を現した。菜々と翔は翔のお母さんに行ってきますと声をかけると駅の方へと向かっていった
「事前の情報によると場所は水族館よね、響?」
「イェッサー!」
「よし、そうと分かれば駅にい…」
夏樹の言葉が止まる。それも当然だろう、彼女の視界には手を繋ぎ仲良さげに歩く翔と菜々の姿が映し出されていた
「え、アイツらいつの間に…」
それを見た結衣も同じく呆気にとられる。そして一瞬の間の後
「「ぶっっ殺してやる!!!」」
「待て待て待て待て!尾行だろ?尾行!バカかお前ら!響も止めろ!」
そう言い2人を静止する柊と響。柊と響が居るのはこの2人の暴走を止めるためといっても過言ではないだろう
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暴れまくる2人を何とか押さえ込みアホ4人は水族館前へと到着していた。時刻は9時、開店まで1時間ある4人は翔達がチケットを買ったのを見届けて4人分のチケットを購入する
「おいおい、今から1時間って…今日待ち時間多くないか?」
「まぁまぁ、人多いし菜々ちゃんの提案なんじゃない?」
そう言い文句を言いつつも翔達からギリ見つからないところで待機する柊と夏樹
待ち時間に飽きた響と結衣は水族館の近くにあるガチャガチャコーナーを見に遊びに行った
なんてまとまりの無い4人なんだ…
やがて開店時間となり俺達は人混みに紛れスパイミッションを開始した
最初に翔達が向かったのは大量の魚が展示されている入口入ってすぐの大水槽だった
「うおー!すげぇー!」
「バッカお前声デケェよ!」
スパイミッションだと言うのに考えもなしに大声を上げる響、それを大声で静止する結衣
「お前ら2人ともうるせぇよ…」
「間違いないね…」
そんなアホなやり取りをしていると翔達が先へと進んだ。翔達は特に何もすること無く順調に水族館の奥へと足を進めていた
そして、更に時間がたちふれあいコーナーへと辿り着いた俺達
「す、すっげぇ!結衣見ろよ!エイだぞエイ!」
「え!すご!これまじもんかー!?」
そんなアホなやり取りをする響と結衣を後目に、柊と夏樹は備考を続ける
ヒトデのふれあいコーナーで盛り上がる2人、その2人を見る周りの視線はとても暖かく、お似合いのカップルを見つめるような視線に夏樹の胸が締め付けられる
その後もしばらくふれあいコーナーを楽しみ昼食をレストランで終えたアホ4人はイルカショーの会場へと来ていた
翔達の席は1番近い席だったので4人は後ろの少し遠目の席で見守る
「ってかあっこバカ濡れるけどあの2人大丈夫なの?」
響にそう言われ3人は翔達の方向へ目をやると、周りがカッパ姿だらけなのに、2人だけがなんの防水対策しておらずめちゃくちゃ浮いていた
「ほんとだ、翔くんが濡れるのは面白いけど菜々ちゃんが濡れるのはちょっと可哀想かも」
「って言ったって声かける訳にも行かねぇしなぁ…とりあえず見守ろうぜ!」
心配する夏樹に結衣がそう声をかけ、イルカショーの進行を見守る
しばらく4人で待機すると陽気なBGMが流れ始め、イルカショーが始まった
イルカショーが始まると翔と菜々がワイワイ言いながら、ショーを見ている姿を見ていると夏樹と結衣は勿論、柊と響まで謎の嫉妬心が湧き出てきて水しぶきが上げられるのを今か今かと待ちわびていた
やがて、イルカショーはクライマックスが近寄り4人はワクワクしながらその光景を見守る
そしてその時は訪れた。客席の方向目掛け泳ぎ始めた複数のイルカは急に飛び上がり、客席から1番近いところに着水する
その衝撃で打ち上げられた水しぶきは客席を飲み込み、無防備な翔と菜々は想像の3倍はビショビショの姿になる
「「「「うおおおおお!!!!」」」」
気づけば4人は立ち上がり叫びながら拍手を送っていた。人間、嫉妬心に追い詰められるとこうなるようだ
だが4人の嫉妬心から湧いた歓声とは裏腹に菜々と翔の距離はより縮まっているような気がした
やがてイルカショーが終わり、お土産屋さんを経由した翔達はトイレへと行きアホ4人は外のベンチで途中の屋台で買ったベビーカステラをつまみながら待機していた
「ちょ、無理っ!」
ふと笑いながら走って逃げる夏樹、3人は夏樹が見ていた方向を見ると翔がピラルクの顔面ドアップの写真が貼られたTシャツを着ており、その姿を見た3人は夏樹が吹き出した理由を察して笑わないように必死に抑え込む
だが、その後にペンギンの写真が入ったTシャツを着た菜々が現れた。3人は限界だった
死にそうになりながら必死に夏樹が逃げた方向へと、逃げると声が聞こえない位置まで行き大声で声を出して腹を抱えて笑った
そしてその後もダサT2人は水族館デートを楽しんでおり、アホ4人もなんやかんや屋台によったり、お土産屋を見たりして楽しみ翔達が外に出たのを確認し外に出ると、夕日が辺りを照らし出していた
「やばいなぁ、流石に疲れたわ…」
そう言う柊の言葉に他の3人もそれな等と声を上げた。朝4時から集合し尾行を続けた疲労感からか夕日を見ると疲れがドッっと来た4人だったが最後の力を振り絞り尾行を続けた
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帰り道は特に面白い事も無く、無事朝日ヶ丘へと辿り着いた4人は翔と菜々が家に入るのを見送ってから、夕飯食べて解散しようとなり朝に集合した翔の家の前に先回りし翔達の帰りを待っていた
「アレ誰だろう。翔くんのお父さん?」
ふと夏樹がそう言い指を指した方向を見ると、翔の家の前でスーツ姿の男がウロウロと徘徊していた
「怪しすぎるな、締めるか?」
「アホかお前、翔のお父さんだったらどうすんだよ」
柊がそう言いその男を締めに行こうとするが、結衣にそう言われ1度ふみとどまる
だが、翔のお父さんだとして家に入らないのはおかしな話だ
4人が怪しいと思い声を掛けるか悩んでいると、やがて翔と菜々の姿が目に映った
男も翔達に気付いたのか、翔たちの方へ歩み始めた
「ほらね、やっぱり翔君の知り合いだっ」
「ぶっ殺してやる!!!!」
夏樹が言葉を言い終わる前に住宅街に響き渡る翔の怒声
初めて見るそんな翔の姿に4人は呆気にとられるが、一番最初に動いたのは柊だった




