始まりはおもしろおかしく 1
初めまして、ご覧いただきありがとうございます!
この作品は別サイトにて6年前ほどに連載していて僕が失踪してしまったものをリメイクした物になります
流石に覚えてる人は居ないと思いますが、前とは話の流れが違ったりしますのでご了承下さい
「んーっ...」
朝、窓から射し込む朝日。鳥のさえずり。近所のオバチャンが布団をたたく音。ゴラァ!!と家の玄関を叩く借金取り。うん、いつもどうりの平和な朝だ...ってんなわけあるか!最後のはどう考えてもおかしい
俺は寝起きの脳をフル回転させ状況を飲み込む。時刻は11時、今日は借金取りが10時30分に来る予定で、それまでに電車でどっかに逃げる予定だった…まずい。非常にまずい。借金取り相手に30分も遅刻。やべぇ会社で遅刻するよりヤベぇ命かかってるよ…
焦った俺はベットから飛び上がり、急いで玄関へと向かう。借金取りが玄関にいる。そしてここはアパートの2階、窓の下はコンクリート飛び降りて逃げる所か、足折れて入院だ。そうなるとこういう時のベストアンサーは借金取りに土下座だ
「ごらぁ!!とっとと開けろや!!いつまで待たせんだ!!」
「は、はいっ!!い、今開けますぅ」
玄関のドアを急いであけ、そこにいた人に絶句した。サングラスをかけ金髪、スーツ姿のヤクザだ。身長は170cm以上ありガタイは言うまでもなくとてもいい。玄関を開けてこの数秒で俺は死を覚悟した
「何してたんだゴラァ!!」
「す、すみません...寝てました」
下手に嘘をつくのはアウトだろう、ここは正直に言って謝ろう
「寝てただと?テメェ10時半に来るって言ってただろうがァ!!」
火に油を注いだみたいです。ヤクザはさらに怒りがヒートアップし俺の胸ぐらを掴んでくる。その凄まじい力に抵抗すらできずになすがままにされる
「余裕ぶっこくぐらいだ...約束の3000万用意出来てんだろうなぁ?」
「...」
あるわけねぇだろ!!手持ち300円しかないわ!!確かに自業自得だよ自業自得だけど、前もって1週間後ぐらいに行く位言ってくれよ!!そんな昨日言われて用意できるわけねぇだろ!!...なんて言えず
「ないです...」
「は?お前ほんと舐めてんのか!!いい加減にしねぇとお前を売り捌くぞ!」
「ほんとに申し訳ありません、もう少し...もう少しだけでいいので待ってください!」
ヤクザの叫び声に何事かとお隣さんがドアを開きこちらを覗き込んでいた、やめてくれそんなゴミを見るような目で見ないで...
「クソが!!木下さんよ!あんたいくら借金残ってるか分かってんのか?1億だぞ?」
そう、俺は現在父親が残した借金を肩代わりしている
俺の父親は俺が中学生の頃に病気で亡くなった、ギャンブル中毒だった父は当時小学生だった俺や母親にも手を出してくる根っからのクズだ
父親が病気になって死んだ時には少し安堵した気分もあった、しかしそんな気分は父親が残した『借金』と言う最悪の言葉によって打ち砕かれた。しかもよりによって闇金だ
母親も必死になって働き俺を高校卒業まで育て上げてくれたが、病気でこの世を去ってしまった。
そして父親の残した負の遺産は俺へと受け継がれる
父親が残した借金は俺の代では1億まで膨れ上がり、その取り立ては、俺が必死で入った会社にまで影響を及ぼした。そして俺は会社までもクビになり一気に人生のどん底に叩きつけられた
今は隠れてこの低予算で住むアパートを借りて、ひっそり暮らしていた。まぁ、低予算と言っても月の代金で、俺の所持金の4分の3は持っていかれる
そんな俺の部屋には1日に4回ほど借金取りが押し寄せる、近隣住民からは冷たい目で見られ、声すらかけて貰えず、正直いえばほぼ人生終わっている。今はコンビニのバイトで食費などギリギリやり繰り出来ている状況だ。一生かかっても借金は返済できないだろう
それに弁護士に相談しようにもその金がないし、警察に駆け込もうにも相手は闇金『ヤクザ』だ、何をされるか分かったもんじゃない。頼れる友人を探す気力ももう起きない、終わりものだ
「わ、分かってます...ほんとにもう少しだけ待ってください・なんとかして返しますから!!」
「けっ!明日までに5000万用意しとけ」
ヤクザは掴んでいた胸ぐらを離し、俺を押し倒してそう言った。5000万...俺の頭の中に絶望感が広がる
「カス野郎が!!ぺっ!」
ヤクザは最後に唾を吐きそう言って帰っていった。が、俺は立ち上がれないでいた、5000万...明日までに...増えてるし、流石に払えねぇ...。恐らくアイツは明日までに用意出来なかったら本当に俺を売り捌くだろう。絶望感と同時に死を感じ恐怖で涙が頬を伝う
「いや...無理だろ...」
俺は立ち上がり玄関のドアを閉め再びベットへと倒れた。頭の中は借金の事でいっぱいになり発狂しそうになっていた。だが
「木下さん」
玄関をノックし、俺の名前を呼ぶ女の人の声。借金取りでは無いようだ、俺は涙を拭き取り玄関へと向かった
「はい?...大家さん?」
そこに居たのは大家さんだった。大家さんは結構歳をとっていて、白髪のtheおばあちゃんという感じだ。珍しいな、大家さんは家賃貰う時しか部屋に来ないのに
「木下さん、悪いんだけどね。荷物まとめて出てってくれるかい?」
「え...?」
俺の頭の中が再び絶望に包まれる。荷物まとめて出ていけ...?聞き間違いか?
「木下さんね、毎日毎日3回も4回も借金取りが来て、あんなにバカ騒ぎされたらたまったもんじゃないんだ。ほかの住人からも苦情が入ってね。悪いんだけど出てってもらうよ。後であんたが壊した所の修理費用と今月の家賃の領収書持ってくるから、明後日には出ていけるように準備しといてくれ」
そう言って、俺の返事を聞くまでもなく大家さんは去っていった。俺は再びその場に崩れ落ちた。部屋を出ていく...領収書...ダメだ、本当にダメだ
「あはは...はは...」
絶望感と倦怠感に包まれ、涙が止まらずに零れ落ちる。なんでこんな目にあってんだ...と頭の中で何度も思い何度も絶望する。そしてそのまま気を失った
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「はっ...!」
目を覚まし、俺の目の前に置かれていた紙を拾い上げる。イマイチまだ状況が掴めていない。なぜ俺は玄関で寝てるんだ?
「...嘘だろ、おい」
その紙を見て俺は再び現実へと引き戻された、その紙は領収書だった15万、借金に比べれば安いものだが今の俺には払えない
「...くそ、腹減ったな。考えててもダメだ。とりあえず飯食おう」
俺は立ち上がり、領収書を玄関に起き服を着替え300円を持ってコンビニに行こうと玄関を出た。借金、部屋を出ていく、領収書、色んなことが頭をよぎるが一旦忘れる事にした。木下 翔32歳もはや絶望しか頭になかった
「あっ...」
色んなことを考えながら歩いていると、突然襲いかかる大きな音に気づいた時はもう手遅れだった、音の正体はクラクション、現実に引き戻された時には既に俺の体は吹き飛ばされていた。運転手が降りてき、大丈夫ですか!!と声が聞こえるが、だんだん意識が遠のいていく...あ...死んだ...