第2幕
ジャック「それでは、ロンさんの実力を拝見させていただきましょうか。」
あれから2人は人目のつかないところへとやってきた。仲間になるとはいえ、まずはその実力を測っておかなければならない。ということで、ネタバレ防止や危険な道具の取り扱いなどの観点からここへやってきたというわけだ。
するとロンはあらかじめ用意していたナイフをいくつか取り出す。そしてそれらを空中へと放り投げた。綺麗な円を描きながらロンの周りで可憐に舞う。もちろんアクセントに少々軌道を変えたり、数を増やしたりを忘れずに。そうしてロンは見事ナイフでのジャグリングを成功させてみせた。ジャックから見て彼よりジャグリングのスキルは遥かにあった。さらに言うとロンはナイフでのジャグリングという大変危険な芸をしているにも関わらず、その顔から笑顔は消えなかった。楽しいという純情ではなく偽りの感情を浮かび上がらせているというのはジャックからすれば明白だった。それでも彼はエンターテイメントとしてやっていることだと観客に理解させるには十分なほどのスキルを持っていた。ジャックはロンに向かって拍手を送る。
ジャック「素晴らしい!もはや私のジャグリングなど霞んで見えてしまいますよ。」
ロン「そんなことねぇよ。あんたの方がもっと上手くやる。」
ジャック「おや、そうですか?こういうのは一番自分が分かるものなのですが…。」
ロン「あんたのジャグリングはもっとみんなを楽しませる。上手い下手じゃなくて俺はそういうのに惚れたんだ。」
ジャック「まぁ!随分と嬉しいことを言ってくれるものですねぇ。」
ロンの方がスキルがあるのは間違いない。けれども彼はジャックの“楽しませる芸”が好きと言ったのだ。それにジャックは少し嬉しさを覚えてしまった。そしてロンは次々と芸を披露する。火吹き,玉乗り,ローラーバランスなど。そのどれもがレベルの高いものばかりだった。ジャックは少し妬ましい気持ちになったが、ロンの技術は必ず人にさらなる笑顔を与えるものだと確信し、我に返り感激する。
ジャック「すばらしい…すばらしい!まさかこれほどまでとは。正直予想していませんでしたねぇ。あなたはまさに突如として現れたダークホース!私があなたとなど、おこがましいにも程があるというものです。」
ロン「さっきから言ってるが、俺はあんたには敵わねぇ。」
ジャック「何をおっしゃいますか!その才をあなたは誇るべきです。あなたと組めば、さらに人々を笑顔に変えられる。私はそう確信します。あなたと組めること、大変喜ばしく思いますよ。」
ロン「こっちも。かねてからの願いが叶ったんだ。一生懸命やらせてもらうよ。」
こうして改めてジャックに新しく仲間ができた。これから先、彼らはこの街で人々に希望与える存在となることだろう。そうして明日からの予定を話し合った2人はようやくそれぞれの日常へと戻っていく。
その夜…
ジャック「まさか、僕に仲間ができるなんてなぁ。夢にも思わなかったよ。クックック…。これからもっと面白くなりそうだ。」
脱衣所でジャックは風呂に入ろうと服を脱いでいた。彼の衣装がはらりと脱げる。そうして彼の裸体が露わになる。身体の至るとことに痛々しい火傷,打撲痕,切り傷が深々と彼の体に刻まれていた。中でも特に顔の損傷が激しく、仮面を外した彼の右半分は赤黒く染まっていた。そこをさすりながら彼は不敵に笑みを浮かべる。風呂にも入り、服も着替え終えたジャックは
ジャック「さぁーってと、いっちょやりますか。」
そう言ってとあることを始めるのであった。