第4話 スライムとゴブリンと四天王《追放側視点》
奴隷商を残し逃亡した王宮の勅命のメンバーはホラアナ洞窟から出ると、後に続きガリアンも追いつく。
「なんとか逃げきりましたわね。」
「しかし、魔法が使えぬとは誤算であった。」
「おい! てめえ何先に逃げてんだ!!」
「フェンリルなんて相手して勝てる訳ないだろが! 頭おかしいのか?」
「やっと落ち着いたぞ、貴様らよくもまあ失敗は無いだのと嘘ついてくれたな!!」
「うるせえな! てめえが急かすからだろ!!」
「言わせてえけば……ぐわあああああ!!」
「「「「!?」」」」
「ば、バカな! あの奴隷商が一撃で!?」
王宮の勅命のメンバーが口論になっているとガリアンが追いつき詰め寄っていたところに何者かの魔法が命中しガリアンは炎に包まれ悲痛な叫びをあげながら息絶える。
「あたし達魔王軍にあだなす冒険者パーティー王宮の勅命の真の実力者も大したことないわね。」
「何者だ!?」
「我等が何者か、良いだろう応えようではないか。」
「まずは俺からだニセ魔王四天王が一人、獄炎のヒジャクテン!」
「同じくニセ魔王四天王が一人、流水のミズイヤーダ!」
「同じくニセ魔王四天王が一人、暴風のカゼガダメ!」
「同じくニセ魔王四天王が一人、土塊のツチアカンテ!」
「魔王四天王じゃと!?」
炎を身に纏うヒジャクテン、全身が水で出来てるかの様な姿のミズイヤーダ、疾風が周りに巻き起こっているカゼガダメ、岩の巨体の中から怪しく眼を光らせるツチアカンテの四天王が姿を現しガリアンをロイドと勘違いし瞬殺する。
「ねえ、かなりマズいですわよね?」
「マズいなんてもんじゃねえよ、本気でオレ達を殺りに来てる。」
「クククッ、頼りの綱が消えて焦ってるようだな。」
「そうよね、だってパーティー内でもっとも力のある奴が消えたのよ。」
「なら試してみようではないか、どれほど弱体化したかをな。」
「なら、このグラップラーゴブリンに相手してもらおうではないか。」
ツチアカンテは巨体の中から筋肉質なゴブリンを排出すると王宮の勅命達へと差し向ける。
「んだあれ?」
「ゴブリン如きでワシらを倒せると思っとるとは、四天王も残念な頭をしておるようだな。」
「全くその通りですわ! ゴブリン程度に遅れは取りませんわよ!!」
「いいからかかって来い、ただのゴブリンでは無いことを思い知らせてやるぜ?」
グラップラーゴブリンはちょいちょいと指で王宮の勅命を長髪しライドは短気な性格もあり剣を抜き一直線に斬りかかる。
「ゴブリン風情が調子に乗ってんじゃねえ!!」
「こいつは驚いたな、ろくに手入れをしてない剣を扱っているとは……本物のバカらしい。」
「なっ、あ……!?」
ライドの振った剣はグラップラーゴブリンの小指一つで受け止めれ何故か手入れをしていない剣を扱っており、国王とルビアも魔法で応戦しようとしていたが全く魔法が使えず焦る。
「何がどうなっておる!?」
「魔法が全く使えませんわ!?」
「当然だろう、ニセ魔王様の命により四大精霊は封印したのだからな!」
「もはや、この世界で僕ら魔族以外に魔法を使える者は居ないよ?」
「なんという事じゃ! この魔族、かなりの頭脳派ではないか!?」
「さぁてと剣士も荷物持ちも役立たずなうえ、魔法の使えない無能の二人パーティーか。」
「魔王様が脅威と見なす程の力は無かったな。」
「あのさ、力も測れたことだし後はスライムで適当にあしらうくらいで良いんじゃない?」
「それもそうだな、もういいぞグラップラーゴブリン適当にのしてやりな。」
「ああ、そのつもりだ。」
「舐めんじゃ……ぐはっ!?」
「そらよ!」
グラップラーゴブリンはライドに腹パンすると立て続けに左手で顔を殴り宙に浮かせ吹っ飛んでいる方向へとマッハの速度で追いつき上空へと背中を蹴り上げ雲を突き抜けたところまでジャンプし両腕を振り下ろし地面に叩きつけると大きな穴が出来る。
「ライド様!?」
「まさかライドが赤児扱いじゃと!?」
「ひいっ!!」
「待たんか貴様! また逃げる気か!!」
「当たり前だ! こんな化け物相手できるか!!」
ガモンはまたも一人逃げようとするが途中で全身が斬り刻まれバラバラになってしまう。
「あっはははは! ああいう奴仕留めるの楽しくて仕方ないんだよねえ♪」
「カゼガダメ、もう少し遊べないの? 一瞬で終わらせたらつまらないじゃない。」
「ゴメンゴメン、残りは譲るからさ許してよ。」
「残りって言っても雑魚しか居ないけど、まあ良いわ。 さ、いらっしゃい私の魔改造スライムちゃん♪」
ミズイヤーダが手を翳すと何処からかスライムが現れ国王とルビアの前に近寄る。
「舐めおって、スライムで十分とでも言うつもりか!」
「こんなの杖で一撃ですわ! おぼっ!?」
「な、なんじゃ!? このスライムは!?」
「ごぼぼぼぼ!?」
スライムは形状を変化させルビアの口から体内へと入り込んでいき、質量を無視しているのかルビアのお腹はパンパンに膨れ上がる。
「ひっ……ぐ……やぁ……だぁ……」
(死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!)
「あら、この娘中々良い反応するわね?」
「残りは腑抜けたジジイだがどうする?」
「おいオッサン、早く逃げ惑いなよ? 面白くないだろ?」
「だ、誰が逃げるか! これでもアストラム王国の国王じゃ!! 逃げる選択肢なぞ持ち合わせてはおらぬ!!」
「ほう。」
「ま、良いんじゃない? 生かしておいても、魔改造スライム聴こえてる? その女は殺さず寄生するだけに今は止めておきなさいな。」
「かひゅ……はぁ……はぁ……」
膨らんでいたお腹は元に戻りルビアはカチカチと歯を鳴らし腹を擦る。
「行くぞ、お前らニセ魔王様に報告だ。」
「「「あいよ。」」」
四天王とグラップラーゴブリンは残りの国王とルビア、ついでにライドを生かしその場から消え去る。
「魔王……面白いではないか……倒した者には地位名声名誉が与えられ“勇者”として未来永劫伝説として語り継がれる。」
「ぐぬぬ、あのクソゴブリンめ……次会ったら容赦しねえ……」
「ライド、ルビア、これより王宮の勅命は勇者パーティーとして魔王討伐に赴くぞ!」
「へ?」
「良いねえ、魔王を倒した暁にはオレ達は英雄として語り継がれるのか。」
「そうじゃ! これは世界の危機と言うデメリットがある反面ワシらが勇者となるチャンス、つまり大きなメリットがあると言うことじゃ!!」
(冗談じゃないわ! こんな状態で魔王討伐の旅なんて無理!)
「わたくしも賛成致しますわ! 世界中にセドックの名を広めますわよ!!」
(口と身体が勝手に!?)
「流石はオレの女だ、景気づけに一度国に帰って抱くとしよう。」
「気が早いが英雄どうしの間に産まれる孫が見れる日も近いと言うことじゃな。」
ズタボロでどの口が言うのか国王達はアストラム王国へと戻り体制を整え手も足も出ない相手にあるはずの無い勝機を何故か確信しており、長旅が徒労に終わる未来が待っている。