あしを引っ張る
とある学校の陸上部、3年生になった私は、春の特別大きな県大会で、優秀な成績を収めた。
後輩からは持て囃され、お世話になった先生や先輩には賛辞を呈され、応援してくれた親は美味しいご飯を作ってくれた。
私一人ではここまで来れなかった。常日頃から皆に感謝し、出来る事をする毎日。
「昨日はスパイクに細工をされた」
「今日はお弁当を隠された」
「明日はユニフォームでも汚すのか?」
嫌がらせを受けた事もあった。
犯人が誰なのかは察していた。1年生の時に共に入部したものの、努力もせず、才能も無く、いつかまともに部活にも来なくなったあいつだろう。
しかし、悩むことは無かった。ゴールだけを見た。無視を徹底した。いつしか嫌がらせもピタリと止んだ。同時にそいつは正式に退部した。
私は、自信の努力と周りの協力で出来た、強固な地下茎から伸びる葦なのだ。引っ張っても、そう簡単には抜けない。