今日という日
正常な家に生まれ、正常な両親に育てられ、正常な学校生活を送り、それでも異様な自分がただ苦しくなっている。一人相撲だ。
幼少期の私はたまに変だと言われるようなことをした。例えば、家にある風邪薬と胃腸薬を入れ替えたりした。独特の匂いがする胃腸薬だったから、それはすぐにバレて叫ぶように怒られた。理解できない、何がしたいのか分からない、気味が悪いと責められた。
昔はテレビっ子で、授業みたいな番組でやっていた"思い込みで病気が治る"というのが本当なのか確かめたかっただけだったのだ。今考えるとかなり危険なことをやっていた。申し訳ないと思うと同時に、あの人が私の言い分を何一つ聞いてくれなかったことに落胆した。私が理由を説明しようとして「テレビでね......」と発した瞬間、
"変なテレビばっかり見ているからそうなる"
"もうこれからはテレビは禁止ね"
と、老人だったら聞こえないだろうモスキート音並みの高音でキーキーと怒っていた。
なんでダメなのか、あの時教えてくれればよかったのに。残念だ。私はバカだから。
電話が鳴り響く。今日はゴミ出しの日だからと、ゴミをまとめている早朝のことだった。
電話を取る。電話の向こうは、緊迫した様子ではあるがしっかりと落ち着いた声で話をしていた。
母親が交通事故にあったというのだ。
「えっ!?!?」
そう声を出す。
連絡をくれた病院に、私は早く向かわなくてはと少し焦る。
とりあえず、中途半端にまとめてしまったゴミを片付けようとする。45Lのゴミ袋に家中のゴミを集めたら、両脇の取手部分を一つに縛る。しかし縛りきる前に、ふと思い出した。
そうだ。なんて都合の良い世界なんだ。私は今まで、人々が言う"普通に考えて" とか、"常識的に考えて" とかの言葉に苦しめられて、この世界はまるで私という存在を許容しないように設計されているのではないかと思い悩むほどだった。しかし、今日という日は、私のために存在したのだ。
そうウキウキしながら、薬や絆創膏などが入っているボックスを引き出す。
母が風邪をひく度、彼女は強制的なロシアンルーレットに参加させられていた。
私が病院で貰っている睡眠薬。調子の良い日は飛ばして、少しずつ、少しづつ。
風邪薬にそっくりな見た目をしたその睡眠薬を、風邪薬の瓶の中に潜ませておく。
だんだんと確率が上がって、今日、今日なのだ。
私は睡眠薬が混入した風邪薬の瓶の中身を全てゴミ袋に流し込んだ。
* 絶対やらないでね




