空っぽ
第12部、第18部の続きっぽい感じです。
クラスメイトが死んだ。仲良いわけではなかったが、みんなから愛されている子だ。
その現実が受け止めきれないまま、ただ自分の中にあるわけの分からない憤りが過去に流されていくのが耐えられなかった。
同級生の死を追うドキュメンタリー映画を撮りたい。そう思いついてから、私はすぐに行動に移った。
『急にどうしたの』
このことを話した時、親友は心の底から私を心配してくれていたのだと思う。
それでも私の珍しく真剣な目に、親友は誠意をもって答えてくれていたと思う。
『正直ね、未だに実感がないの。殺されたんでしょう、佐伯さん。なんか、物語でも見せられてるような気分でさ。上手く言えないんだけど、現実味がないというか...... 現実なのにね』
それから、亡くなった佐伯さんと仲が良かった人へと取材を続けていった。
佐伯さんの友人たちには、最初責められた。当たり前だ。ただでさえ友が亡くなって精神が落ち込んでいる時に、現実から目を逸らして痛みから逃れようとしている時に、それを踏みにじるような行動をしているのだ。だからこそ、私は本当のことを話した。
"私は現実に対して怒っているような気がする"
"でも、自分がなんでこんな感情になるのか分からない"
"どんな形でもいいから、気持ちに整理をつけたい"
"それが、人に話を聞くことだった"
震えながら一つ一つ打ち明けていくと、だんだんと口を開いてくれるようになった。
「...... あのさ、棺の中見た?」
佐伯さんにいつもボディーガードのように引っ付いていた牧島さんが話し出す。
私は首を横に振った。あの日は気が動転していたし、棺の周りは彼女の友人や家族が囲んでいたから私は近づけなかったのだ。
「あの中、さ」
"空っぽだったの"
「...... え?」
予想外の言葉に目を見開いた。
牧島さんは一粒大きな涙を流した。
みんな、彼女の変わり果てた姿に泣いたのだと思っていた。なのに、棺が空?
「あの時、確かに悲しかった。みんなは悲しくて泣いてたのかもしれない。でもね、私、たぶん怖くて泣いてた。まるで、存在まるごと、消えちゃったみたいで。ねぇ、ちゃんといたよね?佐伯、ここにいたよね?」
縋るように泣きついてきた牧島さんに驚きながらも、私は頭が真っ白になっていた。
こんな不安を、今までずっと抱えて過ごしていたのか。
......でもなぜ、棺は空だったのか。顔が引き攣る。
私は、佐伯さんが殺された事件を詳しく調べることにした。




