巻き戻し
家の庭にある物置。そこは少女のお気に入りの場所だ。
暗くて、ごちゃごちゃ物が置いてある。
何か面白いものはないかと、少女は物置を漁っていた。
埃まみれのそこを探っていくと、一つのラジカセが見つかった。彼女はそれがどう使うのか分からなかった。ただ、ボタンというのは好奇心がわくものだ。
一つ押せば、下がっていたボタンが元に戻る。でも何も起こらない。彼女はある一つのボタンを押したところで、後ろに電源コードがあることに気づいた。
どこか差すところはないか。彼女が見回していると、外で母の声が聞こえた。
「ごはんよーー」
彼女はそれを聞いて不思議に思った。なぜなら、彼女はついさっき昼食を食べたからだ。もしかしたら聞き間違えかもしれない。そう思いながら物置を出た。
リビングに行くと、さっき食べたはずの昼食がそのまま並んでいた。
「これさっき食べたよね?」
彼女が言うと、母親はきょとんとした。
「何言ってるの。寝ぼけてるんじゃない?顔洗ってきなさい」
促されてとりあえず顔を洗う。夢だったのかもしれない。
だって現に彼女のお腹は減っていたし、母もふざけているようには見えない。
とにかくお腹を満たそうと、彼女は昼食のうどんをすすった。
ふと時計を見る。そこで彼女は気づいた。やっぱりおかしい。
物置に入る前は13時だった。なのに、今時計は12時40分をさしていた。
あの機械は過去に戻れるのかも。そう思い、彼女は毎日物置へと足を運び、その度あのラジカセのボタンを押した。
どうやら本当に時を遡れるようだ。しかし、数分単しか遡れないようだった。
例えば家で何か壊してしまった時。彼女は親に報告するでもなく、逃げるのでもなく、物置へ行き時を巻き戻した。そうすれば怒られなくて済む。
そうして、彼女は時を戻すのが癖になっていた。
それが日常になったある日、彼女は何気なくテレビのニュースを見ていた。
”時間が飛ぶ!? 謎の現象で死亡事故も!”
『時が飛ぶという現象が各地で報告されています。当初は錯覚と考えられていましたが、数日前に発生した交通事故を皮切りに、社会問題へと発展しています』
『信号が点滅してて、でもいけそうだし渡っちゃおうって。...... なのに、あの子だけ、まるで時間が切り取られたようにそこに突っ立ったままで、そのまま、そのまま......!』
そのニュースを見て、彼女の心臓はバクバクと音を立てた。
そして彼女は、無意味にも物置へと向かった。




