猫の雨乞い
猫と雨宿りの少年の話。
「もうさいあくっ」
いつもは友人たちと秘密基地のように使っている空き家を、今日はその少年だけが訪れていた。
雨に降られて一時的に雨宿りをしにきたようだった。
「にゃぁ」
「あ! ごんた!!」
私が一鳴きすると少年はこちらに駆け寄ってきた。
なぜごんたと名付けられたのかは分からないが、私は私の名前を憶えていないのでひとまず自分のことをごんただと思うようにしている。
「お前もこんなところにいたのか。雨嫌だよなぁ」
そう言って私の頭を撫で回す。少し強めだがまぁ許そう。
少年が座ったから、私は素早く膝の上に乗る。
私が警戒していた頃、かなり引っ掻いてしまったのだが、彼はかまわず私に近づいて触ろうとしてきた。
私は自分がもう何年生きているのか分からない。年、という概念を理解し始めたのがここ最近だから仕方がない。人は随分小難しく物事を決める。明るくなったら起きて、狩りをして、それかエサをねだって、暗くなったら寝床へ帰る。そうやって生きていたから、何回明るいのと暗いのが交換されたかなんてわからなかった。それに、今みたいな雨の日はずっと暗いではないか。
大変そうだ。いつもそんなことを数えながら生きているなんて。それだけでも難しいのに、よく子供たちは数字の書かれた紙をもってあーだこーだと騒いでいる。
“べんきょう”というのが嫌で、"てすと"というのが嫌らしい。
「この前、テストでいい点取ったらさ。みんなにガリ勉って言われたんだ。
親も先生も、大人はみんな勉強しろ!って言うのに、勉強すると友だちからいじられるし、でも悪い点数は取りたくないし……」
私の頭を撫でながら、ずっとぐるぐると考え込んでいる。少年が何を言っているのかは正直分からないが、きっとなにか落ち込んでいる。
そんなに落ち込むなら、ずっとここで私と暮らせばいいのに。私は少年に撫でてもらえて、少年は悩まなくて済む。
「にゃぁ にゃぁ」
二鳴きすると、少年は泣きそうな顔で笑った。
「慰めてくれてるのか? ありがとう、ごんた」
頭を撫でていた手が、今度は両手で私の顔を撫でた。
「よし!元気出た!!」
少年が大きい声を出した時、外から光が入ってきた。少年は天気でも操れるのだろうか。
「そろそろ帰るね、雨も止んだし。」
何かを言ったあと、少年は私を優しくどけて立ち上がった。
少年が手を振る。少年は少年の寝床に帰ってしまう。
雨がずっと降っててくれればいいのに。
私は顔を洗って一人、眠りについた。




