何者にもなれない
人は何歳からでも挑戦できる。
なんて言うのは嘘だ。
挑戦するには捨てなければならない。
今まで積み上げたものを壊して、壊して、壊す。
そうして初めて挑戦権を得る。
いい歳して、と白い目で見られて、
家族に迷惑をかけ、「昔は真面目だったのに」と陰口を叩かれる。
挑戦するには、独りにならなければならない。
社会にの歯車としての役割を放棄し、平凡を捨てなければならない。
「自分の代わり」はいくらでもいるが、
「自分の代わり」に世間の目に耐えてくれる人はいない。
挑戦をするには、私はもう囚われてしまった。
そして、自分の夢など、結局その程度で諦められるものだったのだ、と思い知る。
諦めてない。諦めてないよと心が叫ぶ。
挑戦したい。と魂が叫んでる。
けれど。
けれどもう。
無理なのだ。
だって囚われてしまった。
幸せな平凡に。
優しいぬるま湯に。
愛すべき人たちに。
幸福な日常を、壊してもいいと思えるほど、
自分の心は強くない。
だから結局
心にわだかまりを抱えながら
心を殺しながら
愛おしい平凡の中で
死んでいく。




