表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/85

電波な天使

 チビな自称天使に連れられたどり着いたのは階段を下りてすぐの四階空き教室だった。


 道中の俺のクレームを(ことごと)く無視し、天使とは思えない肩を鳴らした歩き方で誘導し、仕舞いには此処に蹴る様にぶち込みやがった。


 ガチリと音がする。ドアにロックをしたようだった。


「なんで鍵するんだよ」

「誰かに聞かれては困るんです! ……とにかく、そこに座ってください」


 最前列の席の一つを指差して自称天使が吠えた。

 渋々俺が座るのを見届けた女は教師の様に教卓に着いた。


 首から上しか見えないそいつはわざとらしい咳払いをしてから、


「それでは、夏樹さん救出大作戦を始めるに当たりまして、いくつか質問があります」

「その前に色々教えてくれよ」

「発言は手を挙げてお願いします」


 相当にウザったい。

 だが刃向っていてはいくら時間があっても足りなさそうで、しかたなく腕を挙げた。


「ハイ、夏樹君!」

「キミは誰だ?」

「私は天使です」

「いやだからそうじゃなくて! 名前は? 天使にだってそれぞれ名前とかあるだろ」

「それもそうですね……。私はミヅキと言います! 深いに月で深月(みづき)です。そのまま深月とお呼びください」

「何歳だ?」

「私の個体としての年齢ってことですよね……今は十七歳です」

「は」


 口を思いっきり開けてしまった。嘘だろ。

 どう見ても十三か十四にしか見えない。ちっせーし。


「もういいですか?」


 俺の挙げたままの手に、まるで苦手な食べ物でも見るかのような目を向けている深月。


「それどこの制服だ? なんで他校の生徒が大川高校(ここ)に居るんだ?」

「制服じゃないです! これは天使の格好です! ですから夏樹君を助けるために……」

「なんだよそれ。意味わかんねえって。大体何だよ天使って? 助けるって、俺誰かに何かされたりするの? 助けないと俺死んじゃうの?」

「そうです。死にます」


 憂いを帯びた瞳を向けてくる深月。


「…………」


 悪戯にしても気分が悪い。

 天使だの助けるだの……電波発言ばかりしやがって。


「からかいたいなら他を当たってくれ。ガキの遊びに付き合う余裕はない」


 俺は反駁(はんばく)とともに空き教室を出ようとしたが、


「待ってください! じゃあせめてこれだけは覚えておいてください!」


 焦る声の主を睨むため、首だけを回す。

 肩をすくめ、より一層小さい深月が沈んだ声で、


「ヤバイ! と思ったら、必ず何かを掴んでください。絶対に掴めるモノがあるはずです。お願い……」


 一応それを最後まで聞き届け、俺は舌打ちしながら空き教室を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いきなりガンガン来る天使さんかわいいですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ