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0章 クロスライン

こんばんは、お久しぶりです。

なんだかんだで新シリーズの投稿です。今回はその序章の投稿となります。

  プロローグ

 

  0章 クロスライン 



  『僕』


  ―死にたい。

 

  いつからか、そんなことを考えていた。来る日も来る日も、変わらない日常に飽きがさしていて。

  朝、窓から差し込む光。昼、雲があることによって引き立たせられた群青色の空。帰りの時間には日が暮れて、西に紅東に紺のグラデーション。指で結んでしまえば、何にでも見える満点の星空。

  物理的に色を失ったわけでも、僕が色盲なわけでもないし、ちゃんと色は分かる。だけどこれら全て、全部モノクロに見えた。

  そのせいなのかこの冷たい風も、まるでナイフのように鋭く、無機質に感じられた。きっとこの風すら僕の味方はしてくれないのだろう。

  目だけを虚ろに動かす。星空、街の明かり、遠くの山、学校の屋上。

  僕が今見ている景色だ。でもやっぱりモノクロでつまらない。

  背中にフェンスを感じながら、深く息を吐き出す。白い息はしばらくの間、僕の前に残っていた。

  寒い…冷たい…


  ―死にたい。


  強く風が吹きついた瞬間、僕は足を一歩前へ踏み出す。灰色がものすごいスピードで近ずいて行った。




  『私』


  ―生きたい。


  そう思うようになったのは、あの日から。

 

「あなたの余命は、もって三ヶ月程でしょう…」


  ポカンとする私に目の前の医者は、なんくるない顔でそう告げた。

  最初は実感が湧かなかった。昨日まで元気に笑ったり、短距離走で自己記録を更新したりしていたのに、『nyugan』という単語を聞いた瞬間、胸がどっと重くなるのを感じた。

  手をグッと握る。その都度「力入るから全然大丈夫。」って周りに笑って見せている。

  そうすれば、友達や親戚の人は「安心した。」と言ってくれるから。

  でも、夜が来る度に私は泣いた。お見舞いに来てくれた人が笑った分私は泣いた。

  『生き物はいずれは死ぬ、それが早いか遅いか、それだけ。』誰かがそんなことを言った。ならなんで私がその早いほうなのだろう。理不尽だ、だって世界にはおおよそ七十億人もいて、その中の日本にはおおよそ一億五千人もいるのに。

  なんで、なんで私だけなの…

  悔しさで、歯をググっと噛み締める。奥の方で擦れる音が口の中で響く。

  次第に私の中で黒い何かが広がった、それはまるで透明な水に墨を注いだようにじわじわと黒く侵食していく。


  …ばいいのに。


  …誰かも…ように…ばいいのに。


  どこかの誰かも、私と同じようになればいいのに。


  ハッと我に返って首を振った。

  そんなことを考えている私が恐ろしい。それもこれもきっとこの『乳がん』のせいだ。

  気を紛らすために、窓の外に目を向ける。星が点々と輝いていて、星座とかは分からないけど、それでも充分綺麗に見える。

  まだ死にたくない。

  目元に残った涙をグリグリと拭う。

  死んでたまるか。

  私はまだ…


  ―生きたい。

 


 

 

こんばんは、嘘月です。

新シリーズということで、これを機に投稿を再開しようかなと思います。

もし宜しければ、続きの方も読んでくださると嬉しいです。

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