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正義なのか悪なのか

超絶見切り発車


 ある世界のあるところに一つの小さな村があった。その村の名はプロログ村。ここには小さな子供からお年寄りまで元気に暮らしてる平和な村だった。…そう、平和な村…だったんだ……


 それはある日のことだった。いつもどおり村人がせっせと農作業をしたり、動物を狩るため近くの森に行ったりし、生活していると、突然、村の入り口から何十人という人間が現れた。


 その人間達のリーダーなのか、一番前にいる人間が大声をあげると、後ろにいた人間達は元気よく声をあげ、いっせいに村人たちを拘束していく。


 そして全員拘束すると、村人達を一ヶ所に集め、先程のリーダーらしき人間がこう言った。


 1つ、死にたくなければ、毎週俺達に食料もしくは金を渡すこと。


 1つ、死にたくなければ、毎月女を1人以上渡すこと。


 1つ、死にたくなければ、この事を誰にも言うな。


 と。


 その人間達は、今話題のロロローグ盗賊団だったのだ。


 村人達は、死にたくないがためにこくこくと頷きその盗賊団の言葉を受け入れる。


 盗賊団のリーダーは、その言葉に満足したのか1人の村人の縄を切り、拘束をといた。そして、来週またくる。食料か金、そして女を用意しておけ。ああ、とびきりの美人を、だぞ? と、言い、村から出ていったのだった。


 盗賊団がいなくなると、拘束を解かれた1人の村人が急いで、落ちていたナイフでみんなの縄を切る。そして、今後どうするのかを話し合ったのだった。






 あれから2ヶ月がたった。結局プロログ村の村人はロロローグ盗賊団の言いなりになっている。


 必ず週一にロロローグ盗賊団の仲間が数人来て、食料か金を持っていく。そして月一に若い女が犠牲になる。


 もう2人も犠牲になった。一体いつまでこの暮らしをしなくてはならないんだ。村人皆思った。どうにかしないと。……だが、現実は非常だ。私達村人では、盗賊相手に叶うわけがない。結局私達は覚えながら暮らしていくことしかできないのだ。






 さらに1ヵ月がたった。ロロローグ盗賊団がきてから計3ヶ月だ。いつもどおりの盗賊に覚える日々。だがしかし、今日は違った。


 この村に旅人がやってきたのだ。


 その旅人は名前を教えてはくれなかったが、今日一日ここに泊まりたいといった。村人はその旅人の格好を見て…断った。。ここには盗賊団がいるからだ。巻き込んでしまってはいけない。ましてや……武器などの物を一切持っていないのだから。


 唯一持っているのは、なにやら鎖で巻かれた古びた一冊の本。


 だが、旅人はなぜ無理なのか。と村人に聞いた。村人は答えない。いや、答えられない。なぜなら、盗賊団のやつらに言われているからだ。誰にも言うなと。言うと殺すと。


 ゆえに答えられない。答えられないからこそ、旅人は帰ってはくれない。


 村人はなんとか帰ってもらおうと言葉を紡ぐ。だが、旅人は帰らない。理由を教えてくれ。金ならある。飯はいらない。と、旅人は言う。


 …無理だ。無理なのだ。


 村人は思う。どうすれば帰ってもらえるか考える。…だが、時間をかけすぎたのか、入り口から盗賊がやってきた。


 旅人は盗賊に気づいた。村人は終わった、と思った。私達は何の関係もない旅人を巻き込んでしまったのだ、と。


 盗賊は言った。ここは俺達の村だ。そして、この村に入ったならお前は俺達の所有物だ。とりあえず、金か食料を置いていってもらおうか。と。


 旅人は言った。お前たちのつけているそれに見覚えがある。お前たちはロロローグ盗賊団だな。なるほど。ここに泊めてくれなかったのもお前たちがいたからか。と。


 あぁそうだ。と、何を思ったのか盗賊は笑う。


 …そして、旅人も笑う。何がおかしいのか大きな声で笑いまくる。


 はははははっ! あーはっはっはっはっはっはっ!!!


 と。


 盗賊団は、あまりの大声に少したじろいだ。だが、すぐに復活し旅人に言う。


 何がおかしい。ふざけてんじゃねー。と。


 旅人はその言葉にも笑う。笑って、笑って、笑いまくる。


 盗賊は怒った。そして、武器を持ち旅人に切りかかる。


 …そして、盗賊は思ってしまった。この旅人に対して一番言ってはいけない言葉を。


 盗賊は切りかかる直前にこう言った。


 …意味わかんねーやつだ。死ね。…………と。


 その言葉を聞いた旅人は…………また笑う。


 さっきまでとは違う。まるで、計画どおりとでも思っている含み笑いだ。


 そして、その瞬間盗賊の武器が何かに吸い込まれるように消える。


 盗賊はその場に止まり焦りだす。何が起こった。なぜ俺達の武器が。


 旅人は盗賊達の目の前に来てこういった。


 ………お前達はさっき…………意味わかんねーと言ったな?


 旅人の赤い目が盗賊を見据える。盗賊は思う。こいつは…ヤバい…! と。


 …だが、思ったときには遅かった。


 旅人は、手に持っていた古びた本を広げた。


 そして…………


 お前達はこの本の中で過ごしてもらう……この……






 意味わかんねー書の中でな!!!!!


 盗賊の体が徐々に吸い込まれていく。まるで強力な磁石のように、逆らえない。


 数秒の後、盗賊は本の中に吸い込まれていった。そして、本が閉じ、鎖が巻かれる。


 村人は唖然とした。一体何が起こったんだ。


 旅人は言った。盗賊が理由ならば、泊めることができないのはわかった。俺はおとなしく旅立とう。と。


 村人は焦る。何が起こったかは"意味がわからない"がもしかしたら、盗賊を倒してくれるのかもしれないのだ。


 村人が旅人を呼び止めようとした。……だが、その前に旅人は振り返った。


 そして…………


 お前は今………意味がわからない…………と、言ったな?


 旅人は続ける。意味わかんねーと意味がわからないは同じ言葉だ。つまりお前は、意味わかんねーと言ったと同じ。


 つまりお前も……過ごしてもらおうか。


 この中で。……この………意味わかんねー書の…中で、な。


 旅人が本を広げる。


 そして、村人は消える。


 旅人は再度振り返り、入り口に向かい、この村から出ていった。






 そして、変わらず村はロロローグ盗賊団に支配されたままだった。

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