後日譚
ちょっとした余談
前回の翌日の話。
コンコン
「おーい、カイン」
ドアをノックする音の後にリデアの呼び掛ける声がした。
「…なんだ………」
扉を開けたカインの機嫌は最悪なようでその目の下には大きな隈ができていた。
リデアは余りに予想通り過ぎて笑いを通り越して呆れた。
「あんた…寝れなかったんでしょ」
「………」
カインはぶすっと不貞腐れたように無言になった。リデアの手前隠しようもないことを感じながらも、意地を張らずにはいられなかったようだった。
「………ハーシュはさ」
カインの耳が分かりやすくぴくっと反応する。あまりに分かり易すぎてリデアは最早笑う気も起きない。
「………あんたに『お前は女っぽくなったから仲良くしてあーげない』って言われたって思ったんだってさ」
カインは一瞬動きを止めた。
そしてゆっくりと何度も頭を上下させた。
どうやら悩んでいるようだった。
そして、ようやく考えがまとまったのかリデアに伏し目がちに言った。
「……天然か…?……どうしようもなく……天然なのか…あいつは……?」
「なにをいまさら」
今更何をいわんやである。
カインは今度は手のひらを顔に当てた。
おそらく絶句しているようだ。音のない大きなため息が聞こえてくるようだ。
「……………ハーシュに………後で謝ると言っておいてくれ………俺は……少し寝る」
「……………そんなん自分で言いなさいよ」
二人ともなんだかものすごく投げやりな気分だった。




