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TS magics  作者: 藤原埼玉
15/41

イェス!ロ○ータなのです

「一週間だけ男に戻る方法…なのですか??」


ハーシュはリデアを伴い医務室に相談しに来ていた。


「…はい」


「…ふむーそうですねえ」


セルシアは椅子を後ろに傾けて思案顔をする。


「ちょ、ちょっと待ってハーシュ、なんでお兄さんが来るってだけでそこまで話が飛ぶのよ?」


そこで手紙を受け取ってからのハーシュの鬼気迫る危機感に押されていたリデアがようやく口を挟んだ。


「…なんでだって??ふ、うふふふふふふふふふ…」


ハーシュはリデアに振り返り引き攣った笑みを浮かべる。ハーシュの目は完全にすわっていた。


「な、なに…?」


「リデアは本当の兄さんを知らないからそんなことが言えるんだ…!!」


「そ、そうなの…?」


確かにリデアがハーシュと知り合った頃には、兄は既にアレフガルド学園の学生だったためハーシュに接する時の兄を未だに見たことはなかった。


「…ふむふむ、要はハーシュくんがその女の子の状態のままだとまずいということなのですね?」


なにやら棚を漁りだしたセルシアにハーシュは縋るような目でコクコクとうなづいた。


「そうですねえ…性別を反転させるというのは非常に難しいですが…例えば、これなんかはどうです?」


セルシアは薬品棚から手のひら大ほどの瓶を取り出した。瓶の内容は白い液体状の怪しい何かで満杯になっている。


「な、なんですか??この白濁のネバネバした液体は??ま、まさかこれを飲むんですか…??」


「…そうですね…ハーシュくんにベトベトの白濁液を喉いっぱい無理やり飲ませるのもオツですが…ドロドロでベトベトの白濁液を涙目で飲んでいるハーシュくん…白濁液に塗れたハーシュくん…」


「…どうして何度も言うんですか??」


「セルシア先生…こいつ何も意味わかってないんだからやめてあげて…」


「ごほん…なんでもないのです」


セルシアの邪な気配を察知したリデアに突っ込まれセルシアは咳払いをした。


「これはロリタマゴビュラの体液で作った薬なのです。ロリタマゴビュラは捕食対象に自らの粘液をかけて捕食するのですが、この粘液の効果がすごいのです」


「どうすごいんですか?」


「粘液をかけられた対象が一時的に幼体化するのです」


「ようたいか…ですか?」


「要はロリっ子になるのです!!(ドヤア)」


セルシアは清々しいまでのドヤ顔で瓶を高らかに掲げた。



セルシアと二人の温度差が沈黙を作り出した。


「それが一体どうしたっていうんですか!?僕は本当に悩んでるんですよ!!??」


ハーシュはセルシアに食ってかかった。


「わわ!!ちょ、ちょっと危ないのですよ!!??大事に扱ってもらわなきゃ困るのです…あっ…!?」


セルシアの片手から瓶がすっぽ抜け、ハーシュの頭にもろに内容物がかかった。


「ぎゃああああああああああああああ!?」


ハーシュの視界が真っ白に染まる。


「うえ…!?ベトベトする……し、しかもなんか変な匂いが…!!…もう!!何するんですかセルシア先生…??」


ハーシュはセルシアとリデアを見上げたところですぐに異変に気がついた。


視点が大分地面に近い。声が異様に高い。もちろん女子になってから地声は高くなったが、それにも増して高い。


さらには、衣服が急にゆるゆるとして心もとなくなったのでハーシュは慌てて自分の体を確認する。


「うわああああああああああああああ!?なんだこりゃあああああ!?」


ハーシュの体は見事につるつるぺったんなロリっ子のそれに変身していた。


「ほ、ほほう…こ、これはこれでなかなかどうして…」


リデアはロリハーシュの愛らしい容貌に釘付けになっているようだ。息を荒げているのは気のせいだとハーシュは思いたい。


「だ、大丈夫ですか!?ハーシュきゅん!!」


パシャーパシャー


そして、セルシアがハーシュを見る目は既に狩人のそれだった。いつの間に取り出してきたのか念写機を両手に構え何度もシャッターを押した。


「セルシア先生!?セリフと行動が一致していないですよ!!??っていうか撮らないでください!!や、やめて…!とっ、撮るなこの変態!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「申し訳ないです…私の不注意でハーシュくんをロリっ子にしてしまい…あまつさえストレージに白濁液でヌルヌルのロリハーシュきゅんの写真をうっかり保存してしまったのです…」


「…ねえ、流石に怒ってもいいよねこれ…?」


ロリっ子ハーシュは死んだ目に若干諦めを漂わせながらリデアに言う。


「それにしても…本当に幼くなっちゃうのね」


リデアはハーシュの頭をなでなでする。


「ごく自然に頭を撫でるな!」


「た、高い高いしてもいい…??お小遣いなら払うから…添い寝はいくら??」


「リデア!?お願いだから気を確かに持って!!??」


リデアの目の色がさっきからおかしいことにハーシュは若干の恐怖を感じる。


「せっかくなので仕方ないのです、その体に合う洋服を探さなければなのです」


「そ、そんなのいいですよ。初等科の頃の制服とかありま」


「えっ!?そんなつまらなゲフンゲフン…そんなこと言わず私が偶然、あくまでも偶然サイズを持ち合わせていたコスチュームが色々と医務室にありますのでそちらの中から選びましょう。あくまで致し方なく、ですよ」


「なんでそんなもん医務室に偶然持ってるんですか!!??確信犯ですか!!??って、な、何をしようとしているんですか!!その手をワキワキさせるのやめてください!!り、リデア!!た、助けてー!!!」


「…まずはこのロリメイド服からどうですか、先生??」


「お、鉄板から行きますね。いいでしょう。リデアちゃんも中々好き者よのう、なのです。うへへへへへ」


「リデアまで!!??だ、誰かあああああああああああああ!!」


ハーシュはカインを連れてこなかったことを心から後悔した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ざわざわ…


「で、どう兄さんをごまかすかだよ…」


ハーシュは疲れ切った死んだ魚の目で校内をリデアとカインと共に歩いていた。


あの後の着せ替え地獄の末、結局ハーシュの服は猫耳パーカーで落ち着いた。


フリフリの洋服を着せられて校内を歩く羽目になるよりは大分マシな選択ではあった。さっきから周りの好奇の目が痛いが。


「そうだな」


リデアが何らあてにならないので、ハーシュは教室までカインを呼びに言った。ハーシュは昨日のことについて当のカインが特に気にしていなさそうなのでホッとした。


「いいんじゃない?その格好なら見つからないでしょ?」


「リデアは兄さんを甘く見過ぎだよ!!」


ハーシュは顔面蒼白の鬼気迫る表情でリデアに言った。


「そ、そうなの?」


「兄さんのことだ…きっとハーシュの香りがする!とでも言いながら数秒で見つかってしまう…」


「そ、そうなんだ…す、すごい兄さんね」


リデアは冷や汗を垂らして言った。


「それにしても、なぜ今の状況がバレるとまずいんだ?」


「なぜって…」


「女になったことでプロポーズでもされそうなことか?」


「か、カイン何言って」


リデアが見るとハーシュは耳を両手で押さえてガタガタと震えていた。


「そ、それは…あながち否定できない気がするからお願いだから言わないで…」


「否定しないの!?」


「それと…魔法のことか?」


「…それは…」


ハーシュの顔色がどこか寂しげに歪んだところで見慣れた顔がこちらに近づいてきていた。


「あ、エイム」


ハーシュがエイムに無邪気に手を振った。するとエイムがハーシュを眺める目は見る見る驚愕に見開かれた。


「ま、まさか…ハーシュ!!??」


「何一目でわかってんのよ、キモい」


リデアも大概な言い草である。


「う、うわあああああああああああああああ!?」


「ひ!?」


エイムは、ガッツポーズとも取れるような格好で突然雄叫びをあげた。完全な不審者である。


「わ、私のことを…エイムおにいちゃんと呼んで見ないか?ハアハア」


「絶対に断る!」


エイムも大概だった。


ざわざわ…


「ん??」


そうこうしている内にか、ハーシュが見渡すとハーシュを囲むように人だかりができていた。


「な、なにこれ??」


「一つお尋ねしたいのですが…」


「な、何ですか?」


「そこにおわす銀髪のロリの中のロリと言える神々しさを放つ御神体がハーシュくんということで間違いはないですか??」


ハーシュは目を白黒とさせた。


「リデア…この人なに言ってるの??」


若干得体の知れないものに対する恐怖感を滲ませながらハーシュはリデアに聞いた。


「…つまりはあんたがハーシュなのか、って聞いてるのよ」


「はい、不本意ながらそうですが…」


「ふおおおおお…」


「尊い…」


「神が…神が不浄なる我らを救わんがために穢れた地上に顕現されたのだ…」


集まった人だかりはみんな五体投地のポーズでハーシュに向かって跪いた。


「み、みんななにして…」


「ハーシュたんが身を呈してロリっ子になったことで私たちに癒しを下すったのだ…」


「ありがてえ…」


「なにをどう解釈したらそうなるの!?か、カイン助け…」


「何だと!?」


人だかりの中から突如剣呑な言い争いが始まった。


「お前こそ何だ!!神を愚弄する気か!!」


「俺たちは尊いものを尊いものとして崇めるのだ!!」


「馬鹿野郎!!尊いものが目の前にあったら…そこを目指すのが男ってもんだろ!!可愛い女の子がキャッキャウフフしてたらその中に乱入していくのが至高!!」


「何という危険思想だ愚か者め!!聖域は不可侵なのだ!!その理想郷を破るというのであれば…俺たちは容赦はしない!!」


何だかよく分からない仲違いが起こっていた。


「ハーシュたんをクンカクンカペロペロ勢力からお守りするんだ!!」


『サー!!』


ハーシュを守ろうとお兄ちゃんたちがハーシュの近くに集まった。


だが、ハーシュからしたら暴徒と化した汚兄ちゃんたちが飛びかかってきたようにしか見えなかった。


「ひえええええええええ!!??」


ハーシュは必死になって逃げ出した。


「ハーシュたん!?」


「先回りしろ!!先回りしてハーシュたんをお守りするんだ!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ぜえぜえ…


こんなはずではなかった。自分はただセルシア先生に兄さんの対処を相談しに言っただけだった。


それがなぜかこんな姿にされてしまい、何の嫌がらせか学友から追いかけ回されている。


「ハーシュたんんんんんん!!」


「怖がるハーシュたんも可愛いよおおおおおお!!」


「馬鹿野郎!!怖がらせるようなことを言うんじゃねえ!!大丈夫だよハーシュたああああんんんん!!」


「何で僕ばっかこんな目にあわなきゃいけないんだああああああああ!!」


逃げ惑う内にハーシュは屋上に追い詰められていた。当然ながら逃げ場はない。ハーシュは焦燥の中隠れる場所を必死で探した。


「ハーシュくん!!」


「セルシア先生!?」


隣の校舎の屋上にセルシアが見え、ハーシュは束の間安堵を覚えた。


「これを受け取ってください!!拡声器と暴徒を鎮静させる呪文なのです!!」


セルシアから皮袋が投げられた。そこに入っていたのは魔導式拡声器と何かが書かれたメモだった。


「こ、この呪文を唱えれば鎮まるんですか!?でも僕魔力が…」


「大丈夫です!!私たちを信じてください!!ハーシュくん早く!!」


振り返り、暴徒たちと向き合い、ハーシュは呪文を唱えるべく息をすうと吸い込んだ。











『おにいちゃんのこといっぱいいっぱいだいすきっ ハーシュのこといつまでもだいじにしてね』

















カッ



















その時、ハーシュを中心に光が放たれたのが確かに見えたというのは後日談だ。


「いぎゃああああああああああああああ!?」


「ゴボええええええええええええええええ!?」


「仰げば尊と死いいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


お兄ちゃんたちは退魔魔法をかけられたアンデッドの如く天に召されて逝った。



「…セルシア先生…何ですかこれ…?」


ハーシュは限りなく不本意な表情でセルシアに聞いた。


「グッジョブなのですハーシュくん、尊かったのです」


「セルシア先生…その手の録音機は何ですか…?」


「まあまあ、そんなことは…




ハーシュくん!!??う、後ろ!!」


ザッ、と後ろから足音がしてハーシュの背筋が凍った。


「オニ…チャン…エイム…汚似尉異チャンだおンンンンンン」


「…え、エイム??ど、どうしたの」


声をかけては見たものの、その表情から言葉が通じないことは明白だった。エイムは完全に人間性を失している。


「そ、そんな…え、エイムくんが…ハーシュくんの退魔の光を浴びてカルマを一際深くしてしまったのです!!」


「さ、殺虫剤かけられて逆に薬物に強くなった害虫じゃないんだから!?」


「ハーシュたんンンンンンンン!!!??」


「い、いやだああああああああああああああ!!!」


ハーシュはその場から逃げようと駆け出したが先ほどまでの長時間の全力ダッシュが祟り、程なく力つき転倒した。


「ハーシュタン…ペロペロペロンペロ??ドコカラペロロン??ペロペロロン??」


「い、いや…だ、誰かあああああああ!!」


どさっ


「無事か??ハーシュ…」


恐る恐る見上げると、そこにはグローブをはめたカインが立っていた。なぜか衣服がぼろっとしている。


「た、助かった…??」


「助けに来るのが遅くなりすまない。暴徒に飲み込まれてなぜかリンチを受けていた…『日頃のハーシュちゃんと仲良くしてる恨みだ』などとわけのわからないことを言っていたが…面倒なので全員殴ってきた」


「そ、そうなんだ…ありがとうカイン」


ハーシュはカインの差し伸べた手を掴もうとしたその時だった。


「あ、ハーシュくん…ちなみに…ロリタマゴビュラの体液の効果時間は…」


何が起こったのか、ハーシュは再三考えた。


視点が急に高くなり、カインが驚愕の表情を浮かべている。


体を見下ろすと、衣服が所々破けており胸のところはパーカーがジッパーごとが裂けておりおっぱいが丸見えだった。


体の大きさが元に戻ったのだ。


「…約3時間なのです」


「さ、先に言ええええええええええええええええええ」


ハーシュの平手がカインをぶっ飛ばした。


「なぜだ!?」


アレフガルド学園は今日も平和である。


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