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TS magics  作者: 藤原埼玉
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とりあえず一件落着なのです(久しぶりの出番なのです)

「うう…」


目を開けると真っ白い天井が目に入った。


「こ、ここは…??」


「気がついた?」


そこには銀髪の天使がいた。それ故に私は気がついた。


「そうか…私は死んだのか…」


「あ、結構頭打ってるね。セルシア先生呼んでくるからちょっと待ってて」


天使が椅子を立ち上がり行ってしまう。


「待ってくれ天使よ!!私を置いていかないでくれ!!」


「えい」


リデアは天井から吊ってあるエイムの足に鞘付きの薄雲を軽くぶつけた。


「ギヤあああああああああああ!!」


エイムはベッドから動きようのないまま悶絶して悲鳴をあげた。


「リデアは瀕死の人間にも容赦がないな」


「だって気持ち悪いんだもん…」


「エイムくん、気がついたのですか?」


セルシアはハーシュを伴いベッド脇にいそいそと白衣を肩にかけながらやってきた。


「それにしてもいくらハーシュくんが可愛いからって誘拐は流石にやりすぎなのです。紳士淑女は触れるか触れないかの瀬戸際を楽しむものなのですよ。YES美少女 NOタッチなのです」


セルシアはエイムをたしなめるように言った。


「前まで人の胸触りまくってたのはなんだったんですか!?」


「あれはハーシュくんの未成熟な性知識を利用したただの戯れです」


「とうとう本音を吐きましたね!?先生は本当に鬼畜ですね!?」


「それはそうと…エイム」


セルシアとハーシュの軽い諍いを中断させるように、リデアのピシッとした声色が場に緊張感を与える。


「なんか言うことはないの?ごめんとか悪かったとか」


エイムはうぐぅ、と喉を鳴らすとしばらくの沈黙の後消え入りそうな声で謝罪した。


「…つい…頭に血が上ってしまった…悪かった」


「…ふん、まあ許すわ。被害者の張本人は鼻から気にもかけてないみたいだし?」


みんなの視線が自然とハーシュに集まる。


「ふーん…?…………ってあれ?僕のこ」


「あんた以外に誰がいるっ!!」


リデアは今度はハーシュに食ってかかるように睨みつけた。


「あんたねえ!私たちが気がつかなかったらどうなってたと思うのよ!?最悪傷物よ!傷物!」


「き、傷物って…そんな大げさな…まあ胸は揉まれかけたけども…」


ビシと音を立ててみんなの動きが一瞬固まりハーシュはあ、しまった。と思った。


場が収まりかけたと言うのに想像以上に自分がまずいことを口にしたことを悟る。


「…ふうん…?」


くるうりと不穏な笑顔を顔に貼り付けたリデアがもう一度エイムに向き直る。


エイムは気の毒なくらい冷や汗をだらだらと流している。


「度し難いな…」


「流石に先生として可愛い生徒である前に可愛いハーシュきゅんを考えるとこれは看過するする訳にはいかないのです…」


「セルシア先生待ってくださいその手に持ってるものは何ですか」


ハーシュはうねうねとしている明らかにやばそうな真っ黒な内容物が入っている瓶にかけたセルシアの手をがし、と掴んだ。


「産卵期のヒュポキゴビュラなのです。人間の雄の睾丸が大好物であり、精巣へ卵を産み付けるのです。その排卵時に宿主は出産の百倍の苦しみと痛みを一度に感じると言います」


「さ、流石セルシア先生。うちのお姉ちゃん(リザイア)と同級なだけあってなかなかやるわね…」


リデアが珍しく冷や汗まじりに喉を鳴らした。


「お願いだからやめてください!!エイムが震えてますよ!!」


エイムは恐怖のあまり真っ青を通り越して紫色の顔をしてぷるぷると震えていた。


「じゃあハーシュは揉まれてもいいって言うの!?」


「え、そ、それは絶対に生理的に無理だけど…」


後ろでうぐう!とエイムのうめき声だ聞こえた気がしたがスルーした。


「でも、きっとエイムも魔が差したと言うか…胸を揉むなんてのも冗談だったんだよ、きっと」


ハーシュはいい笑顔で言った。



場にしばらく静寂が訪れた。


呆れたようにリデアたちはため息をついた。


「…この子の性知識のポンコツ具合から私は認識を改めたのです…ハーシュくんの尊い純潔は私たちで守らなければなのです…」


「…このど天然の危なっかしさは思った以上に度外れているわ…本当に…」


「…何を話してんのみんな?」


ハーシュは不思議そうな顔をしながらエイムに歩み寄った。


「まあ…間違いは誰にでもあるからさ…気にしないでよエイム」


ハーシュは笑顔でシーツの上に置かれたエイムの手にそっと手を重ねた。


その時エイムの中でハーシュは羽の生えた天使に容易に脳内変換されエイムは唖然とした。


エイムの幻の中でハーシュは眩い後光を纏い小天使を従えている。祝福のラッパと鐘が大音声で吹き鳴らされる。


天使は存在したのだ。今まさに。この地上に。そのことにエイムは驚きを隠せない。


「て…ん……し…?」


「え?」


「ハー…シュうゲッフウウウウウウ!」


エイムの口から血が吐き出された。女子に普段から優しくされ慣れていないエイムはハーシュの優しさに対して拒絶反応を起こしたのだ。


「吐血!?」


「…ハーシュが一番えぐい」


「同意なのです」


「同感だ」


「ゲッフウウウうううう!」


「うわああああ!?え、エイム!?な、なんで!?」


一応一件落着なのだった。

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